私を信じてはくれなかった婚約者の事なんて忘れたい。

瑠渡

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 私の隣にはロイスがいる。

 色々会った私達だが、ロイスが真面目な顔で求婚してくれて、私は受け入れた。


ミュウル国へ来る前に伯父様の家で過ごさせてもらい、結婚式の着替えもメイドにお願いしようと頼んであったのだが、ロイスの求婚を受け入れたら、次の日にはロイスの家に移動させられた。

久しぶりにあった、ロイスの両親

まさか私と元に戻るとは思っていなかったらしく、私が受け入れたことに正直驚いたと言われた。

いや、おば様には泣かれた。

幼馴染みを信じるあまり、婚約者の言葉も聞かず、特にマリィ様にはロイスの両親は困っていた。
婚約が駄目になり海外へ行ってしまった私と、私を追って海外へ向かってしまった両親。
これで縁が本当に切れてしまったと、思ったそうだ。
婚約者がいなくなったロイスに、婚姻の釣書が来てると伝えても、見もしないで断ってくれとしか言わない。
仕事人間になり、王宮からほとんど帰って来ないロイスの評判だけは上がるが、令嬢との噂は一向に聞こえてこない。もうロイスの結婚は諦めようとおじ様とおば様は話していたそうだ。


「セシリアちゃんロイスを受け入れてくれてありがとう
我が家は反対することなど何もないからハーサン国にロイスを連れて行って。ご両親には愚息子ですがと、早便でお手紙書いて送ったわ」

「ロイスは嫡男なのに良いのですか?」

「いいの!いいの!もうロイスはセシリアちゃんにもらってもらわないと一生独身だったろうし、うちには二男の可愛いマイクがいるから心配しないで」と、ケロっと言われた。


若干、ロイスの顔がひきつってる。






今日はラウル殿下とクロエ嬢の結婚式。
今日は朝からとても良い天気だ。



参列のドレスはシンプルな淡い水色を持ってきていた。
それを見たおば様が、「セシリアちゃん、ロイスの色を飾りましょう。」と言って贔屓屋を呼んだ。


ロイスは銀髪で綺麗な濃い紫の瞳だ。
おば様が銀の髪飾りと、濃い紫色のネックレスとイヤリングを用意してくれた。
ロイスは私が菫色の瞳なのでカフスボタンと、ハンカチーフも菫色のをしている。


着替えが終わって2人で顔を会わせれば………暫く固まってしまった。


「セシィ、綺麗だ」

「やだ、ロイスの方が素敵よ」

「「……………」」


「あなた達、行かないの?ふふっ」


「「………行ってきます」」


「セシィ、心配だから側を離れないで」

「えぇ、わかったわ。でも、大丈夫よ。
ロイスだって、ラウル殿下の結婚式なんだから長官としての仕事もあるんじゃないの?」

「そうだな。部下に呼ばれても直ぐ戻るようにするよ」


教会へ入り席に着こうとした時

「ロイス長官」と呼ぶ声がし、2人で振り返った。

そこには紫色のドレスを着た可愛らしい令嬢が立っていた。
「すみません、少し宜しいですか?」

「あぁ、セシィちょっと行ってくるよ」 

「えぇ」

ロイスが私に話しかけたので、チラッとその令嬢が私を見て頭を下げた。

少ししてロイスが戻ってきて「離れてごめん、ちよっと打ち合わせと違う事が起きて彼女に指示してきたんだ」

「そう。さっきの方は文官なの?」

「あぁ、俺の下についている文官」

「貴方の色のドレスを着ていたけれど」

「貴方の色というか、紫だったね」

「貴方を想ってじゃないわよね?」

「まさか!彼女は今年入ったばかりで、僕にとっては随分年下だし、僕にいつも注意されてばかりで、たぶん怖がってる。ありえないよ」

「なら良かったわ。私、修羅場とか嫌だからね」

「セシィ、少し妬いてるの?なんか嬉しい」

「やめて」ふふっ





ラウル殿下とクロエ嬢の結婚式は素晴らしかった

まだ若い2人が頬を赤らめながら誓いのキスをするところは、見ていて
も初々しい。

2人で歩いて来た時に、私とロイスに気がついた2人は、満面の笑顔だった。





披露宴が始まる前に控え室で髪型服装を直している時、ドア越しに「ロイス長官、いらっしゃいますか?」とまたさっきの令嬢の声がした。

ロイスは「またか……」と、眉間にに皺を寄せながら「ちよっと見てくるよ」と言った。

だがそれからしばらく立っても戻って来ない。
会場への案内が来たし、仕方ない、
ロイスを探しに部屋を出た。

ロイスは直ぐに見つかったが……あの令嬢を抱きながら歩いていた。
彼女は、ロイスの胸に顔をうずめていた。


「えっ?どうして?」



どうにか会場へ行ってロイスの来るのを待っていたが、現れない。殿下と妃殿下が会場へ入って割れんばかりの拍手が上がり、祝宴が始まっても、祝宴が終わってもロイスは戻って来なかった。



宴が終わり、会場の中でロイスを待っていたが、片付けの邪魔になってしまうので仕方なく先に帰ることにした。

馬車へ乗ったとたん涙が溢れ、ロイスの家に着いても止まらなかった。



事情聞いたおば様はロイスを怒り、
私には疲れただろうからと、ホットワインを用意し、私が眠れるようになるまで側にいてくれた。




夜中遅くに玄関ホールが騒がしくなり、バタバタと足音が私の部屋の前に止まったが、おば様の声が聞こえ、その後は静かになった。



私は布団を頭から被り、何も聞こえない、何も聞きたくないと思っていた。
そう思いながら……疲れから寝たようだ。




















 
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