妖精のノート

TAKA

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六つ目の願い

六つ目

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「ちょっと遊ぼうぜ」

 部屋に戻り男が言った。服は着たままで良かったが、元のように足をテーブルに繋がれた。

「今からお前に向かってノートとペンを投げる。それが取れたらノートにお前の好きなことを書いていいってのはどうだ」

 男がいたずらを思いついた子供のような顔で言った。

「へ、本当に・・・、や、やりましゅ」

 半信半疑だったが、願ってもない話だった。

「じゃあ行くぞ」

 男は楽しそうに言うとノートを手に取りこっちに向かって床を滑らせた。ノートはちょうど手が届くかどうかというところで止まった。次にペンを転がした。ペンはころころと転がりノートに当たって止まった。

 床に寝転び腕を伸ばしたが中指の先が触れただけで取ることは出来なかった。何度もチャレンジしたがノートが動き触ることも出来なくなった。それでも必死に手を伸ばした。

 男はその様子を動画で撮っていた。後で仲間に見せるためのようだった。

 暫くして飽きたのか、男は寝むたそうにしていた。男はわざとノートを2センチほど遠くへ動かしペンは部屋の隅へ転がした。

「ま、せいぜい頑張りな。肩でも外せば取れるかもよ」

 男は欠伸をしながらベッドルームへ入って行った。

 男がいなくなり何か手がないかと考えた。そのうちノートを引っ掛けて取れないかと思いつき、何かないかと服の上から手で触り探した。

「・・・、あ、・・・でも・・・、これ・・・」

 包帯を巻かれた小指が目に入り閃いたことがあった。我ながらとんでもない思いつきだとは思ったが、ノートを取るためにはそれしかないと覚悟を決めた。

 床に座り男の様子を伺ったが、ベッドルームからは何の物音もしなかった。本当に寝ているようだった。

 ゆっくりと包帯をほどき小指を出した。小指は第一間接の辺りで不器用に縫い付けられ、指先は紫色に変色し明らかに血は通っていなかった。やはり爪の形は違っていた。

 ふと小指の持ち主だった死体の男が、男達から財布を奪いぶつかって来た男だと気がついた。顔は覚えていなかったが確かに今着ている服と同じ服を着ていた。

 男の死体が残りの願いを叶えたあとの自分と重なった。

 死にたくなかった。絶対に助かってやると強く心に誓った。

「うっ・・・」

 右手で左手の小指の先を掴み引きちぎった。縫い付けた糸がちぎれ、切断面からは血が流れ骨が見えていた。痛みで声が出そうになるのを必死でこらえた。

 声を出さずに泣きながら、包帯を細く裂き小指の根元に巻いて止血した。取った指先には残った包帯を結びつけノートに向かって放り投げた。包帯を手繰り寄せたが、ノートの上を滑り上手く引っ掛かってはくれなかった。死んだ男に助けてくれと願いながら何度も投げた。

 何度投げても上手く行かずイライラが募ったが、突然、手応えがあった。小指がノートに引っ掛かり少し動いた。鼓動がうるさいぐらい高鳴った。少しずつ慎重に手元に引き寄せた。

「やったー」

 ノートを手に取り、思わず大きな声が出そうになり慌てて口を押さえた。耳を澄ましたが男が動く気配はなかった。

 改めてノートを見た。ノートの表紙は全体が濃い緑の草の模様で覆われ、真ん中の文字も濃くなっていた。

 ノートを開いた。5つ目の注意書が現れていた。

「⑤命に関わる願いは書けない」

 六つ目の願いで男達が死ぬように書こうかとも考えていたが命に関わることなので止め、逃げたいと書くことにした。

 ペンはなかったが、小指の血があった。

ーーー男達から逃げたいーーー

 人差し指に血をつけ、ノートに書いた。男達の名前が分からないので大丈夫か不安だったが、男達のことを強く念じて書いた。

 あとは早く現実になってくれるのを待つだけだった。一緒に逃げようと心の中で死んだ男に語り掛けながら、指先を元に戻し包帯で固定した。包帯で固定された左手の小指を握り静かに目を閉じ何かが起きるのを待つことにした。
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