妖精のノート

TAKA

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六つ目の願い

シャワー

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「おい、こいつとシャワーを浴びろ」

 男がにやにやしながら言った。

「へ・・・」

 男が何を言ってるのか分からなかった。

「シャワーだ、シャワー、シャワー、シ、ヤ、ワー、分かるだろ」

 男が苛立ちドスを振り上げた。

 慌ててバスタブに入りシャワーを出した。死体の方は見ないようにした。体中の傷口にお湯が沁みたが、体についた血と小便は洗い流せた。本当ならさっぱりとしたはずだが、全然そんな気持ちにはなれなかった。

「おい、こいつにもシャワーをかけろ」

 男が死体の方を指差しながら言った。何故かは分からないが、言う通りにしないとキレられそうなので死体にシャワーをかけた。

「もっとしっかりかけろよ、服を着せれないだろ」

 男が何を言ってるのか全く分からず、ぽかんと男の顔をまじまじと見てしまった。

「こいつに服を着せるんだよ、服を。でないと外に運べないだろ」

 どうやら死体が臭いだしたので外に運び出すつもりだとは分かった。だが、服を着せるためというのが分からなかった。

「なんで・・・」

 思わず呟いた。

「死後硬直だよ、死後硬直」

 シャワーの音で聞こえていないはずだが、口の動きと表情で何を言ったかは伝わったようで、男が大声で言った。

「こいつに服を着せるにはシャワーで温めて固まった間接が動くようにするんだ。死後硬直ってのは死んでから数日だけで、本当ならそのあと死体は柔らかくなるけど、こいつの場合は腐るのを遅らせるため大きな氷の塊を周りに置いたんだ。分かるか。だから今、絶賛死後硬直中ってわけ」

 男は煩わしそうに説明していたが、どこか得意気でもあった。

「あ、ついでにボディーソープで洗ってやれ。臭い消しにもなるし」

 男にそう言われたが、死体を洗うのは嫌だったのでボディーソープとシャンプーを振り掛けシャワーで流した。

「ま、いっか」

 そう言いながら男はバスタオルを投げて寄越した。

 自分の体を拭いたあと男の方を見たが、ドスで死体を指しながら顎をしゃくった。仕方がないので、バスタオルを死体にかけ目をつぶりながらタオルを押さえ体を拭いた。

「ほらよ、服だ。お前の着ていた服とそいつが着ていた服だ」

 そう言って服を洗面台の横のスペースに置いた。

 死体の男が着ていた服は特に汚れたり破れたりはしておらずサイズもちょうど良さそうだった。血と小便が付いた服を着るのは嫌だったので、その服を着ることにした。

 死体に服を着せるのは難しくもたもたしていた。出来るだけ死体に触れずに済ませたかったのと小指が使えなかったのが影響していた。

「おっせえなあ、いつまでかかってるんだ」

 見かねて男が横から手伝ってくれた。

「今からこいつを運ぶからおんぶしろ」

 男が言った。断ることが出来るわけがなく素直に従うことにした。

 死体を背負った時、死体の左手の小指が縫い付けられ、それが取れかかっていることに気がついた。何となく違和感を感じたが、どこがおかしいのかは分からなかった。

 そのまま死体を背負いマンションの地下にある駐車場まで運んだ。幸い誰にも会わなかった。そこには高級車がずらりと並んでいた。男達の車は高級なSUVだった。車のトランクに死体を乗せ上から毛布を掛け、その上にキャンプ道具を置いた。外からではそこに死体があるようには見えなかった。

「部屋に戻るぞ」

 このまま死体を運ぶと思っていたので意外だった。理由を訪ねようかと思ったが、またキレられても困るので何も聞かずに黙って男の後に従った。

 マンションは50階まであるタワーマンションだった。男達の部屋は25階だった。

「夜にうろつくのはやばいんだよ。職質されたらアウトだからな。運ぶのは明日の朝だ」

 聞いてもいないのに男が言った。案外話好きのようだった。

「あの、みんなの名前はなんていうっ・・・」

 願いを書くときに男達の名前が分かった方がいいと思い何気ないふりを装い聞いた。思い返すと男達は決して会話の中で名前やあだ名さえも出さなかった。

「名前を聞いてどうする。教えるわけないだろ、えっ」

 男が胸ぐらを掴み言った。

「小指だけじゃなく、腕全部あいつと交換してやろうか」

 最初は何を言っているのか分からなかった。死体の小指がフラッシュバックした。違和感の正体が分かった。爪だった。死体の左手の小指だけ爪の形が違っていた。そしてその爪の形は見慣れたものだった。

「あ、あいつの小指、今、お前に付いてるから」

 男が言った時、エレベーターが25階に着き扉が開いた。
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