16 / 21
六つ目の願い
バスルーム
しおりを挟む
「あの、しゅいましぇん」
男がゲームのコントローラーを置いたのを見て声を掛けた。
男達が買って来ていたおにぎりを食べ、水を飲み空腹と喉の渇きは満たされていた。次は足の鎖を解き服を着たかった。
3番目の男から強く言われているのですぐに殺されることはないだろうとは思ったが、どこで男の気が変わるか分からないので声を掛けるのは賭けだった。
「なんだ」
思ったより落ち着いた声だった。
「あ、あの、トイレに・・・」
男の様子を伺いながら遠慮がちに言った。
「あん、・・・ああ、・・・ああ、トイレ・・・、あ、ああ、ああ、いいぞ、いいぞ、そっか、トイレか、あはははは、そっか、そっか」
最初は煩わしそうな顔をしたが、すぐに機嫌が良くなり男が笑い出した。
「いや、ユニットバスだし何だったらシャワーも浴びたらどうだ。体についた血としょんべんも流しな。さ、早く早く」
男は嬉しそうに言った。
「あ、あの、くしゃりの・・・」
男の態度は気になったが、足の鎖が取れそうだとほっとした。
「え、くしゃり・・・、ああ、鎖か。ほら、これ鍵だ」
男が鎖の鍵を投げて寄越した。
急いで鎖を外した。腿をダーツで刺されていたので立ち上がるのに苦労をしたが、びっこを引いて歩くことは出来た。男の気が変わる前に急いでバスルームに向かった。
「あ、あの」
バスルームに向かう途中で足を止め男に向き直り声を掛けた。
「ああ、今度は何だ」
男はイラついたようだった。
「あの、しょの・・・、タオルと着替えを・・・」
男の態度に怯んだが、服を手に入れるため出来るだけ自然に言った。
「ちっ、面倒くせえな・・・」
男はぶつぶつ言いながらベッドルームへ行きバスタオルを持って来た。
「ほら、服は準備しておいてやる。但しパンツは貸さねえからな」
文句を言いつつもタオルをわざわざ持って来てくれたこともあり、男に対する警戒心が少し和らいだ。
「なんかしゃむいし、くしゃい」
バスルームはリビングに比べ随分と冷えていた。寒さを我慢し小便をしていると何かが腐ったような臭いがしていることに気がついた。昔、冷蔵庫で玉子を腐らせたことがあったが、それに近いと思った。
バスルームは広く、リゾートホテルの部屋にあるようなトイレとバスタブの間に洗面台がある造りだった。バスタブはカーテンが閉じられていた。
どうやら臭いはバスタブの方からしてくるようだった。嫌な予感がした。そのままバスルームから出ようとドアを開けた。
「ひっ」
目の前に男がドスを手に立っていた。
「何出て来てんのさ。シャワーを浴びろって言ったよな」
ドスをひろひらさせながら低い声で男が凄んだ。バスルームの中に戻るしかなかった。
「はやくシャワーしろよ。ここで見てるから」
男が開けたままのドアからこちらを見て言った。
暫く躊躇していたが、男が徐々に苛ついて来ているのが分かり、仕方なくバスタブのカーテンを開けることにした。
ゆっくりとバスタブに近づきカーテンを掴んだ。
「早くしろ」
男が怒鳴るのと同時に勢い良くカーテンを開けた。
「・・・わっ、わっ、あああああ、わああああ・・・」
そこには思った通り死体があった。裸の男がバスタブの中で丸くなり横たわっていた。体は蝋のような色をしておりシャワーを浴びたように濡れていた。
一瞬、そこで死んでいるのが自分で、今ここで幽霊として自分の死体を見ているような錯覚に陥った。喚くことしか出来なかった。
「きゃははははははは、あーっはっははは、はひ、はひ、いーひっひひひひ、はっはははは・・・」
大声で笑う男の声が聞こえた。
「お、お、おま、お前のか、顔・・・、ぶっ、ぶははははは・・・」
男はドアの向こうで腹を抱え笑っていた。
「あー、お前、最高。思った以上に笑えたぜ。あー笑った、笑った。・・・あ、今の動画撮れば良かったな。あいつらにも見せられたのに」
ひとしきり笑ったあと、男がそばに来て言った。
男の声は聞こえていたが、何も考えられずただ死体を見つめていた。
「だいぶ臭くなって来たな。氷が溶けてから時間が経ってるからな・・・。そろそろやばいかな・・・」
そう言いながら男がこちらを見つめていた。その顔は満面の笑顔だった。嫌な予感しかしなかった。
男がゲームのコントローラーを置いたのを見て声を掛けた。
男達が買って来ていたおにぎりを食べ、水を飲み空腹と喉の渇きは満たされていた。次は足の鎖を解き服を着たかった。
3番目の男から強く言われているのですぐに殺されることはないだろうとは思ったが、どこで男の気が変わるか分からないので声を掛けるのは賭けだった。
「なんだ」
思ったより落ち着いた声だった。
「あ、あの、トイレに・・・」
男の様子を伺いながら遠慮がちに言った。
「あん、・・・ああ、・・・ああ、トイレ・・・、あ、ああ、ああ、いいぞ、いいぞ、そっか、トイレか、あはははは、そっか、そっか」
最初は煩わしそうな顔をしたが、すぐに機嫌が良くなり男が笑い出した。
「いや、ユニットバスだし何だったらシャワーも浴びたらどうだ。体についた血としょんべんも流しな。さ、早く早く」
男は嬉しそうに言った。
「あ、あの、くしゃりの・・・」
男の態度は気になったが、足の鎖が取れそうだとほっとした。
「え、くしゃり・・・、ああ、鎖か。ほら、これ鍵だ」
男が鎖の鍵を投げて寄越した。
急いで鎖を外した。腿をダーツで刺されていたので立ち上がるのに苦労をしたが、びっこを引いて歩くことは出来た。男の気が変わる前に急いでバスルームに向かった。
「あ、あの」
バスルームに向かう途中で足を止め男に向き直り声を掛けた。
「ああ、今度は何だ」
男はイラついたようだった。
「あの、しょの・・・、タオルと着替えを・・・」
男の態度に怯んだが、服を手に入れるため出来るだけ自然に言った。
「ちっ、面倒くせえな・・・」
男はぶつぶつ言いながらベッドルームへ行きバスタオルを持って来た。
「ほら、服は準備しておいてやる。但しパンツは貸さねえからな」
文句を言いつつもタオルをわざわざ持って来てくれたこともあり、男に対する警戒心が少し和らいだ。
「なんかしゃむいし、くしゃい」
バスルームはリビングに比べ随分と冷えていた。寒さを我慢し小便をしていると何かが腐ったような臭いがしていることに気がついた。昔、冷蔵庫で玉子を腐らせたことがあったが、それに近いと思った。
バスルームは広く、リゾートホテルの部屋にあるようなトイレとバスタブの間に洗面台がある造りだった。バスタブはカーテンが閉じられていた。
どうやら臭いはバスタブの方からしてくるようだった。嫌な予感がした。そのままバスルームから出ようとドアを開けた。
「ひっ」
目の前に男がドスを手に立っていた。
「何出て来てんのさ。シャワーを浴びろって言ったよな」
ドスをひろひらさせながら低い声で男が凄んだ。バスルームの中に戻るしかなかった。
「はやくシャワーしろよ。ここで見てるから」
男が開けたままのドアからこちらを見て言った。
暫く躊躇していたが、男が徐々に苛ついて来ているのが分かり、仕方なくバスタブのカーテンを開けることにした。
ゆっくりとバスタブに近づきカーテンを掴んだ。
「早くしろ」
男が怒鳴るのと同時に勢い良くカーテンを開けた。
「・・・わっ、わっ、あああああ、わああああ・・・」
そこには思った通り死体があった。裸の男がバスタブの中で丸くなり横たわっていた。体は蝋のような色をしておりシャワーを浴びたように濡れていた。
一瞬、そこで死んでいるのが自分で、今ここで幽霊として自分の死体を見ているような錯覚に陥った。喚くことしか出来なかった。
「きゃははははははは、あーっはっははは、はひ、はひ、いーひっひひひひ、はっはははは・・・」
大声で笑う男の声が聞こえた。
「お、お、おま、お前のか、顔・・・、ぶっ、ぶははははは・・・」
男はドアの向こうで腹を抱え笑っていた。
「あー、お前、最高。思った以上に笑えたぜ。あー笑った、笑った。・・・あ、今の動画撮れば良かったな。あいつらにも見せられたのに」
ひとしきり笑ったあと、男がそばに来て言った。
男の声は聞こえていたが、何も考えられずただ死体を見つめていた。
「だいぶ臭くなって来たな。氷が溶けてから時間が経ってるからな・・・。そろそろやばいかな・・・」
そう言いながら男がこちらを見つめていた。その顔は満面の笑顔だった。嫌な予感しかしなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる