妖精のノート

TAKA

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五つ目の願い

数字

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「おい、あと10分だな」

 その声で時計を見た。11時50分になっていた。

「これでやっとお前を殺せるぜ」

 昨日からしつこく殺そうと言っていた男が嬉しそうに言った。

 男は昼まで待つと決まってからは何度も近くまで来ては、耳を削ぐとか指を1本ずつ落とすとか囁いていた。男が近づくたびに我慢が出来ずに刺されるのじゃないかと怖かった。

「よっしゃ」

 急に3番目の男がソファーから立ち上がり興奮した様子で近づいてきた。

「分かったぞ。すげーな。めちゃめちゃすげーな、これ」

 そう言いながらノートを掴み大声で笑い出した。

 いきなりのことで皆唖然としていた。

「おい、分かったって数字がか」

「本当か」

 男達が口々に聞いた。

「ああ、これを見てみろ。さっきメールで俺のに似た財布の写真がネットに上がってるって知らせが来てな。調べたら、ほら、俺の財布と数字の紙がばっちり写ってるぜ」

 男達は肩を寄せ合いネットを確認し目の前で起こった出来事に興奮しているようだった。

「きししし、五つ目」

 頭の中でいつもの声が響いた。

「どうやら刑事が情報屋に聞くために撮った写真が漏れたみたいだな。馬鹿だな、これで取引が出来るぜ。この番号が取引する場所へ入るための鍵とは思わなかったんだろうな。間抜けな刑事のおかげだぜ」

 3番目の男が得意気に言った。こちらに聞こえてもお構いなしのようだった。

 小太りで目が細く妙に語尾が伸びる刑事の顔を思い出した。

 男達はそのままこのあとの段取りについて相談を始めた。

 これで助かったとほっとした。改めてノートの力の凄さを感じた。

「・・・えっ、やばっ・・・」

 突然、叶えられる願いはあと2つしかないことに気がつき愕然とした。あとの2つで男達から逃げ出し指名手配も何とかしなければならないが、そんなに都合よく行くとは思えなかった。とは言え、男達の言いなりになり残り2つの願いを叶えれば、そのあとに殺されるのは目に見えていた。

「最初はグー、じゃんけんポンッ」

 いきなり3番目の男とは別の2人がじゃんけんを始めた。

「うわー、俺が留守番か」

 何度かのあいこのあと、俺を殺したがっている男が大きい声で言った。

「おい、お前」

 3番目の男が近づいて来てナイフを突き付けながら言った。

「俺達はこれから出掛けるが、こいつを見張りに残していく。明日俺達が戻る前に6つ目の願いをさっさと書いておくんだ。こいつに紙を渡しておくからその通りに書くんだ。いいな。こいつにはお前が少しでも変な動きをしたらすぐ殺すように言っておく。少しでも長生きしたいなら言う通りにするんだ」

 男が1人だけと聞いて希望が湧いたが、残る男が問題だった。殺したあとなら何とでも言い訳が出来るので、すぐにでも殺されるんじゃないかと不安になった。

 暫くして出掛ける準備が出来たようで2人が出て行った。3番目の男がノートと願いを書いた紙を渡すのが見えた。渡しながら勝手には殺すなと強く念押しする声が聞こえた。残った男はつまらなさそうにこちらを見たが、近づくことなくソファーでビールを飲みゲームをやりだした。

 男の様子を伺ったがゲームに夢中になっているようだった。少なくともすぐには殺されることはなさそうだと安心した。

 生き残れる希望が出て来たとたん空腹と喉の渇きが襲ってきた。また足の鎖で擦れた肌も痛み出した。裸でいるため寒さも感じた。まるで今まで止まっていた時間が動き出したように、色々な感覚が戻って来た。感覚が戻って来ると鈍っていた頭も回り出したような気がした。
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