妖精のノート

TAKA

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五つ目の願い

五つ目

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「おい、高橋。今日も遅刻か。いい加減にしろよ。お前、仕事も中途半端で、給料泥棒なんだよ」

 いつものように椅子に深く腰を掛け両肘を付き口元で手を絡ませながら安田が嫌味ったらしく言った。

「はあ、すいません」

 一度始まると何か別の用事が出来るまでずっと嫌味が続くので、俯きながら別のことを考え、時間が過ぎるのを待つしかなかった。

「私の家の鍵を返して、この最低男」

 いきなり後ろから怒鳴られた。

「わっ、み・・・、みはるさん」

 振り替えるとみはるさんが裸で唇から血をたらしながら立っていた。その目は大きく見開かれ血走りまるで別人のようだった。

「さあ、警察に行こう」

 いきなり左手を捕まれた。いつの間にか頭に包帯を巻いたパジャマ姿の安田が横に立っていた。

「嫌だ、助けてくれ。俺じゃないんだ。ノートのせいなんだ。ノ、ノートの・・・」

 逃れようと力を込めたが、見た目からは想像出来ないような強い力で引っ張られた。

 何とか手を振りほどき逃げ出した。とにかく外に出ようと必死に走った。すぐ後ろに2人が迫っていた。非常階段まで逃げたところで左手を掴まれた。振りほどこうと暴れながら扉を閉めたが、左手の小指を鉄の扉に挟んでしまった。慌てて扉を開けようと力を入れたが反対側から強い力で引っ張られ、ゆっくりと小指を潰しながら扉が閉じられた。

 ごりっ、ぶつっ

 骨が砕け指が切れた音がし激痛が走った。扉の向こうから2人の嬉しそうな笑い声が聞こえてきた。

「うわっ、うわっ、うわあーあーあー」

 大声を上げ目を覚ました。周りを見回したが部屋には誰もいなかった。裸だったが全身が汗だくになっていた。

 ふと左手を見ると小指が包帯でぐるぐる巻きにされ血が滲んでいた。

「う、・・・うっ、ぐすっ」

 突然、もう普通の生活に戻ることが出来ないと全身で理解した。こんなことになるとは思わず軽い気持ちでノートを使ってしまい、後悔で涙が止まらなかった。 

 暫くすると男達が帰って来た。近くにあるスーパー銭湯に行ってきたようだった。風呂上がりの暖かい空気とボディーソープの香りが漂って来た。

 目の前に置かれたセブンイレブンの袋には水とおにぎりが入っていた。まるで自分が檻の中で飼われている小動物のような気がした。

「さて、5つ目の願いを書いてもらおうか」

 3番目の男がそう言いながらノートとペンを目の前に置いた。

「おい、俺の言う通りに書くんだ。少しでも変なことを書いたら刺すぞ」

 男達から逃げたいと書けばいいとは思ったが、3人の男達がそれぞれ刃物を手に持ち周りを囲んでいたので言うことを聞くしかなかった。

「昨日取った財布の中にあった3枚の紙に書いていた数字が知りたい」

 3番目の男がゆっくりと一言ずつはっきりと言った。

 そう言えば財布の中に何枚か数字が書かれた紙があった。昨日、男が大損したと言っていたことと関係していることは分かったが、その数字が何なのかはまるで分からなかった。

「早く書け」

 目の前に刃物を突き付け3番目の男が言った。

ーーー昨日取った財布の中にあった3枚の紙に書いていた数字が知りたいーーー

 震える手で願いを書いた。すぐに願いが叶うよう心の中で祈りながらペンを置いた。

 暫く待ったが何も起こらなかった。

「はん、やっぱり何も起こらないじゃないか」

 右側にいた男が騒いだが、3番目の男は特に気にする風もなくソファーに座り静かに目を閉じた。

「おい、もう殺そうぜ。やっぱりノートに書いたことが現実に起こるなんてあるわけないぜ。なあ、おい」

 右側の男が強い口調で言った。

「うるせーぞ。もう少し待てよ。この待ってる時間が楽しいんじゃねえか。数字が本当に分かるのか。分かるならどういう風に分かるのか。分からない時はどうやってそいつを殺そうか。今まで殺した奴らよりもグッとくる殺し方って何があるのか・・・。色々考えると興奮してくるぜ」

 3番目の男が目を閉じたまま本当に楽しそうに言った。

「ちっ、しゃあねえな。ああなったらこっちの言うことを聞きゃしねえ。じゃあ昼までな。昼までに数字が分からなければ、こいつは殺すぞ」

 男が呆れたように言った。3番目の男は満足そうに深く頷いた。
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