アア

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第三章

3ー3

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 そうして僕らは茜さんの提案で互いのことについて紹介しあうことになった。
「お互いの紹介って言っても、まずは何について紹介すればいいの?」
 茜さん提案に疑問ぶつけたのは須藤さんだ。
 因みにさっきから須藤さんからすごい数の僕に対する悪意が聞こえてくる。
 例えば
――なんで茜はこんなオドオドしたやつと仲良くなってんだよ。とか。
――最近昼休み誰といるのかと思ったらこんなやつかよ。とか。
 とにかく、僕への悪意がすごい。
 怖いけれどこういうのにも向き合っていかなくちゃいけないんだな……とそんなことを考えていると茜さんが再度口を開いた。
「う~ん、そうだね……こういう初対面の時は自分の入ってる部活とかについて話したりするけど……」
「私達みんな帰宅部だからな……」
「そうなんだよね~、空太君も帰宅部だし……」
「じゃあ、中学の時の部活の話とか良いんじゃないかな?」
 悩んでいる茜さんに提案してきたのは、名前の紹介の後からずっと黙ってジュースを飲んでいた宮下さんだ。
 当然というかなんというか、彼女からも悪意は聞こえる。
――なんで茜は私じゃなくてこの人と一緒にいるんだろう。とかなんとか。
 まあ、僕以外にも悪意を向けてはいるが基本的には僕に対して悪意を向けている。
 何故二人して僕に集中的に悪意を向けてくるのだろうか。
 理由はわからないがここでひるんではいけない。
 僕は悪意に向き合いつつ会話に意識を戻す。
「いいじゃんそれ。ナイス凛」
 親指を突き立てながら須藤さんが言う。
「じゃあ、その方向で紹介し合おう。空太君もそんな感じでいい?」
「あ、はい」
 茜さんが聞いてきたので僕は端的な返事を返した。
 ジャンケンで紹介する順番を決める。順番は須藤さん、宮下さん、茜さん、僕という順番になった。 
 須藤さんが話始める。
「私は中学では陸上で長距離走ってた。部全体として県大会での入賞とか全国大会出場とかは目指ずにのびのびと走ってたからそんなに早くはないんだけど約三年やって高いだけあってスタミナだけは他の女子よりもあるって感じ。で、高校では部活に所属してなくてもいいってことだったしとにかく遊びたかったから部活には入らなかったって感じかな……こんなもんでいいのか?」
「うん、そんな感じでいいと思う」
 茜さんが同意の言葉を示し、宮下さんもウンウンと首を縦に振っている。
「まあ、こんなもんでいいならいいけど……次は凛だったな」
 須藤さんが言うと、宮下さんが「うん」と答えて話始めた。
「私は、中学の時は美術部で絵を描いてた。美術部って言っても油絵だったり版画だったりじゃなくて鉛筆とか絵の具とかで人物画とか風景画とかばっかり描いてたんだけどね。あかりの陸上部と同じ感じでゆるい雰囲気で部活してたから賞とかには応募しなかったし、高校では適当に自分のペースで絵を描けばいいかってなって部には入らなかったって感じかな……まあでも、茜やあかりよりは絵がうまいから美術部に入ってて良かったかもって思ったりもしてるって感じかな」
「美術部だったってのは聞いてたけど、絵のうまさで私たちにマウントをとってるってのは知らなかったな」
 宮下さんの話が終わると、須藤さんが間髪入れずに突っ込みを入れる。それに宮下さんは
「だって言ってないし」
と、あっけらかんとした調子で言った。
そんな宮下さんの頭に須藤さんがチョップを入れる。
茜さんはその光景を微笑みながら眺めていた。
「ちょっと、笑わないでよ茜!」
「ごめんごめん。なんか二人とも可愛いなって」
「「別に可愛くないし」」
 確かに、声を重ねて反論する二人は少し可愛いらしい。
その後もうひと悶着あった後茜さんが話をする番となった。
「私は文芸部に入ってたんだ。子供のころから本を読むのが好きだったから中学校でも本を静かに本を読めればいいかなって考えてた時に文芸部を部活紹介ポスターを見つけて」
「茜が文芸部か、なんか今の茜からはイメージできない」
「確かに、なんか文芸部って地味なイメージだし。どっちかと言えば派手な茜には合わないイメージ」
 須藤さんと宮下さんが口々に思ったことを述べているが、僕は納得がいっていた。
 彼女は文芸部に所属していたからこそ普通の中高生が手を出さないような本を読んでいたのだ。
 茜さんが話を続ける。
「文芸部はあかりや凛が思ってるほど地味な部じゃないよ。本を読む人が少なくなってて部員が少なくなってるからなんとなく地味に見えるだけ。私も中学のころからキャラが変わったとか高校デビューしたとかじゃないし」
「フーン、そんなもんなんかね?」
「そんなもんだよ」
 須藤さんの疑問に茜さんが簡単に答える。
「それで、話の続きなんだけどね。本を読めればいいかな~って入った文芸部なんだけど、本を読んでいるだけの人も確かに居たんだけど、小説を書いてる人が多くてびっくりしたんだ」
「中学生で小説書いてるってすごいね」
「うん、私もすごい人がいるなってほんとにびっくりしちゃって……」
「それで、茜は小説を書いたりしてたの?」
 須藤さんが食い気味に茜さんに聞く。
 僕も、茜さんが小説を書いていたのかは興味があった。仮に書いていたとしてどんな小説を書いていたのかについても。
「うん、書いてたよ」
 茜さんはそれが当たり前であるかのように答える。
「どんな小説書いてたの?」
「いろいろ書いたよ。恋愛ものとか青春ものとかSFとかね」
「ほんとにいろいろだね」
「全然知らなかった」
 僕も全然知らなかった。
「今も小説書いたりしてるの?」
「うん。たまに息抜きに書いてるってだけだけど」
「もしよかったら今度見せてよ」
「う~ん……恥ずかしいからダメ!」
「……茜が恥ずかしいって言ってるから強要しないけどいつか見せてね」
「うん」
 宮下さんの言葉にホッとしたのか茜さんがそう短く返す。
「じゃあ、最後は空太君の番だね」
「あ、はい」
 茜さんに指名されつつ端的に返事をする。
 そんな僕の様子を須藤さんと宮下さんがじっと見てくる。
 興味半分、悪意半分といった感じで。
「え~っと、僕、実は中学では何の部活にも入ってなかったんです」
「え?」
 茜さんが素っ頓狂な声を上げる。
 須藤さんたちは声こそ発しなかったが驚いた様子で僕の方を見ていた。
 茜さんたちに構わず続ける。
「僕は、中学に通ってる間は中学二年からの半年間以外はずっと一人で過ごしてきたんです。一人でいる方が楽だったから。誰かと話すのが怖かったから……」
 ずっと、怖かった。
 誰かと話してその誰かの悪意を聞いてしまうのが。
 誰かの悪意を聞くことでその人との関係性が崩れてしまうのが。
「でも、変わらなきゃいけないって思ったんです。茜さんは僕と仲良くしてくれてるけどそれだけじゃ駄目だって。自分からきっかけを作って誰かとしっかり向き合わなくちゃいけないって……だから、僕から茜さんに茜さんの友達に会わせてほしいってお願いしたんです……」
 みんな、僕の言葉を黙って聞いてくれている。
 そんな様子に安堵しつつ僕は続けて言う。
「だから、その、初対面で厚かましいとは思うんですが……その、僕と友達になってください!」
 僕の宣言に驚いたのか、全員が口をポカンと開けている
 しばらくの間の後、須藤さんが
「……イヤイヤ、そんな宣言されちゃったらもう友達になるしかないでしょ」
 と頭を掻きながら言った。
「うん、ここまで言われて友達にならないなんてなんか失礼だし、それに空太君だっけ?が茜と同じような優しい人だってこともわかったし」
 宮下さんが続けて言う。
 二人から悪意は聞こえない。本心から友達になると言ってくれている。
「まあ、話のテーマからはちょっと外れちゃったけどみんな空太君の友達になるってことで……それじゃあ空太君、これからもよろしくね!」
「はい!」
 茜さんの宣言の後、僕達はいろいろなことを話した。
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