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1章 1年春〜夏
僕は注目されています
しおりを挟む入学式当日。学園のルールに則って寮の外に出るためにネックガードを装着し、部屋を出た。
寮の玄関広間では、みんなが体温と脈拍を測ってヒートが近くないことを証明していた。
まだ、発情が一度も来ていない僕は当然クリアして寮の外に出る。
すでに在校生は、新入生を迎えるため、講堂に集合しているらしい。
新入生は、在校生が迎える中、名前の順に講堂に入るらしいから、『わくら』の僕は一番最後に並んだ。
まずは、αから入場する。新入生αは200人もいるから、講堂に入るまで結構待たされそうだ。
「ねえねえ、和倉君ってどんな人がタイプ?」
列の前の山岸が振り返って、暇つぶしに話しかけてきた。
彼は僕ぐらい小柄で華奢だが、日本人らしい顔立ちをしている。
「うーん、優しい人かな?」
「えーそれってみんなそう言うよー。じゃなくてさー見た目とか、そういうの。」
「そういう山岸君は?」
「それは、当然αでさわやか系イケメン。背が高くてスラリとしてるのがいい。ちなみに僕はゲイだからαでも女はなしかなあ。」
なるほど。そういえば僕のタイプって何だろ?
そんなこと考えたことなかった。将来養ってもらうなら、女より男相手の方が気兼ねないってくらいで、番うなら男のαって決めてたけど。
「そっか。そういう人にこの学園で出会えるといいね。」
「うん!出会う気満々!!だから、和倉君、僕の好きなタイプいたら、顔伏せてね。」
「どういうこと?」
「だって、和倉君のこと見たら絶対好きになっちゃうよー。僕のタイプの人が和倉君に惚れたら勝ち目ないもんね。」
「そんなことないって。」
「そんなことある!!」
ない!ある!って押し問答を繰り返していたら、講堂に順番に入るよう声がかかった。
600人もいるαの中に入るなんて僕もみんなも大丈夫なのだろうか。急にドキドキしてきた。
α側は、Ωを刺激しないように無駄にフェロモンなどを出さないよう高校入学前から訓練してるらしいし、換気も十分で、近づきすぎないように講堂もかなり広い作りらしい。
次々と同級生達が講堂に入っていく。そして最後に僕が入ると、途端に講堂が揺れるほど騒がしくなった。
不思議に思いながら前を見ると、巨大スクリーンが設置されていて、そこに僕と僕の名前が映し出されれていた。
僕の見た目は、エリートα様達にも受け入れられたようだ。
在校生達は、講堂の中央後ろから前に向かって歩く生の僕を見ようと必死になって首を伸ばしているのが気配で分かった。
僕は気になってちらっと右を向いて先輩方を見た。
わあ、みんな背が高くってかっこいいなあ。
僕が横を向いたので、先輩方の何人かが手を振ってくる。
僕は、それに応えるように軽く微笑んだ。
「まじ可愛い!」
「最高!」
「嫁にする!」
「見てるだけでラット起こしそう!」
「お前、下品だぞ!けど、気持ちわかる。」
僕が微笑んだ方角が更に騒がしくなったので、慌てて前だけを向いた。
危ない危ない。お目当てのαが誰なのか分からないのだから、八方美人は禁物だ。
なるべく大人しく振る舞って、目当てがいたら、積極的に…。それが僕の戦略だ。
僕は学園のアイドルになる気はない。たった一人の優秀なαさえ捕まえられればいい。
しかし、僕の戦略はこの巨大スクリーンのせいでズタズタになることをすぐに、知るのだった。
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