僕は超絶可愛いオメガだから

ぴの

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2章 夏〜秋

戦い 城之内SIDE(改訂)

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 ◆書き漏れがあったので、7.27 16:15改訂しました。

*****

 春人が東ノ院のパーティに行くと聞いて、居てもたっても居られず、急いで実家に帰り、郵便物を確認する。
 束になっている俺宛の郵便物から、東ノ院家からの招待状を抜き取った。

 アルファばかりが集まるあのパーティは、柄の良いヤツばかりではない。その中に、春人を呼ぶ東ノ院に腹が立った。思わず招待状を破り捨てたくなるのを抑えて時間を確認し、パーティ用のスーツを取り出した。

 翌日、開始時間に間に合うよう家を出たが、途中、会社から電話があり、急遽対応する羽目になる。 処理をして急いで向かうが途中、気になって、春人に電話をした。

 パーティに参加している割には、周りの音が聞こえず静かだ。どうやら洗面所に一人でいるようでホッとしたのも一瞬で、ねっとりした男の声が聞こえたと思ったら、ゴトッと携帯電話が落ちる音がする。

「春人!春人!ハルッ!!」
いくら叫んでも春人からの返事がない。耳をすませば、春人が襲われていることが分かる。

「光宗!!お願いだ!急いでくれ!!」
 俺は神に願うように叫んだ。

 俺は東ノ院家に着くと、招待状を受付に叩きつけて、洗面所に急ぐ。
 何度か来たことのある東ノ院家は、あの頃と構造は変わってない。とすれば洗面所はあっちだ。
 目立つ俺が東ノ院家の中を無遠慮に招待客を掻き分けて歩くため、何事かと少し騒ぎになっているようだが、そんなことはどうでも良かった。

 春人はきっと、プライベートの方の洗面所にいるはずだ。
 立ち入り禁止の扉を開けて進み、洗面所の扉を開ける。
 そこには跪かされ、男のナニを突きつけられて震えている春人がいた。
 気づいたら男を殴っていた。
 殴られた跡と首にアザもある。怒りに我を忘れそうになるのを必死に抑えて怯えた春人をとにかく救出することに意識を向けた。

 春人を自社のプライベートルームに避難させる。青ざめた春人のお父さんにお茶を出し、医者に診せましょうと提案した。

「は、春人は、その男にされたのか?」
春人のお父さんが震える声で問う。
「いえ、未遂でしたので、大丈夫です。」
「そうか。」
 春人がシャワーを浴びている間、本当は俺が全てを洗い流してあげたくて仕方なかった。
 しかし、父親からすれば、春人に触れる男はどれも同じだろう。ここはじっと春人が出てくるのを待つしかなかった。

 
 シャワーから出てきた春人をどれだけ抱きしめたかったか。泣き腫らした目、傷ついた頬と首。そのどれにもキスをして癒してあげたかった。
 だから、俺は、堂々と春人を恋人と言えるように、動き出すことにした。 

 事件の翌日、東ノ院家に正式に連絡して、春人を害した小野ってヤツの個人情報を手に入れた。
 こいつは、ただの大学生で、ベータの家系にたまたまアルファが生まれたことで、かなり甘やかされて育ったらしい。東ノ院のパーティにいたのは、東ノ院の従兄弟の大学の友達らしい。
 ヤツを警察に突き出すこともできるが、それでは、被害者の春人が当日のことをあれこれ聴取されて負担だろう。東ノ院も同じことを考えたらしく、あの日は警察に連絡しなかったらしい。
 社会的制裁を食らわすということで意見が一致した。城之内家と東ノ院家にかかれば、ヤツを一生望みの職に就けなくさせる事など造作もない。ついでに所属大学にヤツのしでかしたことをリークしておいた。

一通り『処理』が終わったあと、春人に電話して声を聞く。
「具合はどうだ?」
「うん、ぐっすり眠ったから、大丈夫だよ。それにナオくんの声聞けたから元気になった。」
可愛い声で可愛いことを言う。
でもあんなことがあって平気な訳がない。震えながら拒絶していた春人が脳裏に浮かぶ。

「あんまり無理するんじゃないぞ。」
「うん。」
「あと、30日の日、俺の車で一緒に学園に戻ろう。」
「え?」
「その時、できればご両親に挨拶させてもらえればと思う。」
「だ、大丈夫なの?」

大丈夫なように今から動く。
「問題ないよ。」
「…分かった。うちの両親に言っておく。けど、平日だから父さん仕事だと思う。」
「そうだよな。とりあえず、ご令息を学園まで送り届ける許しを得ないとな。」
「ごれーそくだって。いいとこのお坊ちゃんみたい。」
と言って春人はクスクス笑った。
春人の明る笑い声は心地が良い。この笑い声がずっと続くように、電話を切ったあと、すぐに父親に連絡を取った。

父親のオフィスにスーツを着て、面会時間に訪ねた。
「なんだ、改まって。」
父は、ネクタイを緩めながら俺の向かいのソファに座り、秘書が入れたコーヒーを飲んだ。
「今日は何分時間がある?」
俺の持ち時間を確認する。
「10分だ。」
「相変わらず忙しいんだな。だったら、単刀直入に言うよ。」
俺は一度深呼吸して告げる。
「学園で好きな人ができた。相手はオメガで、将来『番』にしたいと真剣に考えている。」
「そうか。」
俺は、表情を変えない父親に拍子抜けする。

「父さんとお祖父様は、城之内の分家のオメガから相手を選ばないとあらゆる困難が起きる、と言ってたよな。反対しないのか?」
「反対はしない。むしろ、お前は一生オメガと関わらないと思っていたから喜ばしい。けど、前に言ったことは、真実だ。」
「どういう…。」

「城之内の分家は本家の人間と縁続きになることで、城之内としての権威と財産を維持することができる。逆に何代も本家と縁ができなければ、それは失われていく。だから分家はお前に自分の所のオメガを送り込もうと躍起になる。今はまだ、お前が誰とも親しくないと思われて分家の人間も大人しくしてるが、お前の『番』候補が分家以外の人間と分かれば、あらゆる妨害をしてくるだろう。それにお前とお前の相手が耐えられるかどうかだ。」
「分家の人間が相手の家族まで巻き込む可能性もあるってことか…。」
やはり、大々的に交際を宣言しない方がいいと言う判断は間違っていなかった。

「この間の東ノ院さんのパーティで色々あったようだな。」
やはり、父親の耳には入っていたらしい。
「きっと、分家の人間も知ることになるだろう。もう相手のことは隠して置けないと思っておいた方がいい。」
父のその言葉に、春人と春人の家族を守るために全力で戦う決意をした。
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