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初夜2
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白い扉をそっと、開けると椅子から風雅が立ち上がって笑いかけてくれた。
「陛下、私を選んでくださって光栄です。」
紗々羅の傍に行って、恐る恐る華奢な手を取り、自分の隣に座らせる。
「こちらの葡萄酒をお飲みになりませんか。」
紗々羅は無言で頷いた。
一口飲むと甘い芳醇な香りがした。
「あ、この葡萄酒美味しいですね。」
風雅は、明るい声で話す。
「この葡萄酒は、母上専用の葡萄園で作られていて、母も葡萄酒作りに携わっておられる。口に合ったのなら、嬉しい。」
「上皇様自らの…それをいただけるなんて、ありがたいです。それに本当に美味しい。」
その後、ゆっくりと葡萄酒を味わった後、
「風雅、ひとつ聞きたい。」
紗々羅は意を決して尋ねる。
「はい、どんなことでもお答えします。」
「お前はなぜ、23歳まで室候補でいたのだ?」
室候補として育てられてもタイミングが悪ければ、女王の閲覧会に参加することもできない。室以外の道を選ぶには、21歳ぐらいから候補を下り始めるのだ。紗々羅が風雅の個人情報を見て思ったのは、かなり優秀だということ。これなら一定程度の努力をすれば、行政官吏官にもなれる。
「それは、ひとえにもう一度女王陛下にお会いしたかったからです。」
「もう1度?」
以前に会ったことがあったのだろうか。
「はい。4年前の夏、陛下は避暑地であるウーラリの湖にある別荘に行かれたのを覚えておりませんか。」
「…ああ、父上とすぐ上の兄上と遊びに行こうとしてた。」
「そうです。でも運悪く、陛下の馬車が故障してしまって、修理が終わるまで近くの安曇家の別邸にいらっしゃたのです。」
「そこで、風雅とわたくしは会ったのか?」
「いいえ、室候補がほかの室候補に先駆けてお会いすることは禁じられているので、直接はお会いしていません。」
でも…と風雅はいたずらっこのような目をして言う。
「どうしても一目見たく、中庭で休憩している陛下を覗き見たのです。」
その後真剣な顔になって続きを言う。
「黄金の髪に最初は目を奪われました。その時の陛下は、馬車が壊れたことを面白がっていて、屈託なくお笑いになっていました。また、うちの猫が寄ってきても、ドレスが汚れることを気にすることなく可愛がっておられた。その姿を拝見し、私は陛下のことを想うようになったのです。ですから、人生で一度だけで良いから陛下と真正面でお会いしたかったのです。」
思いがけない告白に紗々羅は、胸が高鳴る。
「なのに、初めて陛下に触れる男がこの私だなんて、今宵は夢かと思っているぐらいです。陛下…」
「夜の時は、紗々羅と呼んでほしい。」
風雅は、思いがけない言葉に驚喜する。
「紗々羅様どうか私が触れることをお許しください。必ず、大切にいたします。」
紗々羅が静かにうなずくのを見て風雅は、そっと口づけた。
それは、風雅の想像以上に甘く柔らかかった。
「陛下、私を選んでくださって光栄です。」
紗々羅の傍に行って、恐る恐る華奢な手を取り、自分の隣に座らせる。
「こちらの葡萄酒をお飲みになりませんか。」
紗々羅は無言で頷いた。
一口飲むと甘い芳醇な香りがした。
「あ、この葡萄酒美味しいですね。」
風雅は、明るい声で話す。
「この葡萄酒は、母上専用の葡萄園で作られていて、母も葡萄酒作りに携わっておられる。口に合ったのなら、嬉しい。」
「上皇様自らの…それをいただけるなんて、ありがたいです。それに本当に美味しい。」
その後、ゆっくりと葡萄酒を味わった後、
「風雅、ひとつ聞きたい。」
紗々羅は意を決して尋ねる。
「はい、どんなことでもお答えします。」
「お前はなぜ、23歳まで室候補でいたのだ?」
室候補として育てられてもタイミングが悪ければ、女王の閲覧会に参加することもできない。室以外の道を選ぶには、21歳ぐらいから候補を下り始めるのだ。紗々羅が風雅の個人情報を見て思ったのは、かなり優秀だということ。これなら一定程度の努力をすれば、行政官吏官にもなれる。
「それは、ひとえにもう一度女王陛下にお会いしたかったからです。」
「もう1度?」
以前に会ったことがあったのだろうか。
「はい。4年前の夏、陛下は避暑地であるウーラリの湖にある別荘に行かれたのを覚えておりませんか。」
「…ああ、父上とすぐ上の兄上と遊びに行こうとしてた。」
「そうです。でも運悪く、陛下の馬車が故障してしまって、修理が終わるまで近くの安曇家の別邸にいらっしゃたのです。」
「そこで、風雅とわたくしは会ったのか?」
「いいえ、室候補がほかの室候補に先駆けてお会いすることは禁じられているので、直接はお会いしていません。」
でも…と風雅はいたずらっこのような目をして言う。
「どうしても一目見たく、中庭で休憩している陛下を覗き見たのです。」
その後真剣な顔になって続きを言う。
「黄金の髪に最初は目を奪われました。その時の陛下は、馬車が壊れたことを面白がっていて、屈託なくお笑いになっていました。また、うちの猫が寄ってきても、ドレスが汚れることを気にすることなく可愛がっておられた。その姿を拝見し、私は陛下のことを想うようになったのです。ですから、人生で一度だけで良いから陛下と真正面でお会いしたかったのです。」
思いがけない告白に紗々羅は、胸が高鳴る。
「なのに、初めて陛下に触れる男がこの私だなんて、今宵は夢かと思っているぐらいです。陛下…」
「夜の時は、紗々羅と呼んでほしい。」
風雅は、思いがけない言葉に驚喜する。
「紗々羅様どうか私が触れることをお許しください。必ず、大切にいたします。」
紗々羅が静かにうなずくのを見て風雅は、そっと口づけた。
それは、風雅の想像以上に甘く柔らかかった。
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