トライアングル

五嶋樒榴

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しほな・テキーラサンライズ

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他のバーテンダーの、こちらはモデルのように格好いい男の子が私の前にコースターを置いた。まだ彼の名前を知らない。私は彼にマティーニを頼んで名前を聞いた。

「旬です。よろしくお願いいたします」

旬くんが素直でめっちゃ可愛いと思った。

「本日は、お名刺持ってきて頂けましたか?」

マスターは前回の話を覚えていて、私にそう話しかけてきた。

「ええ。今日は仕事帰りなので」

私はバックから名刺入れを出して、名刺をマスターに渡した。

「そう言えば、私、マスターのお名前聞いてなかったわ。教えてくださらないの?」

私が言うと、マスターはフッと優しい笑みをした。

「すみません。私はどなたにも本名を教えてないんです。この店も“隠れ家”で登録してます」

確かにこの店をサイトで調べたが、情報は一切出てこなかった。
本当に謎だらけのマスターだわ。

「Silentium」

マスターがまるで魔法を唱えるように言った。

「ラテン語で“静寂”です。仮に私に名前があるなら、それですかね」

艶っぽいマスターの言葉に、私はフッと笑った。

「マスターは静寂かもしれないけど、周りの人間は静寂ではいられない。マスターの魅力に翻弄され、かき乱されそうですもの」

マスターが作ってくれた、目の前に置かれたマティーニに私は口を付けながら言った。
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