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フィリシア
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それは私が、数えられないほどの人間を殺めた殺人鬼として、死刑執行された時だった。
でも、別に快楽的に殺人をしたわけではない。
それなのに、殺人鬼とは言い過ぎではないか?
まあ、今更何を言っても無駄だけどな。
そうして死んだと思っていたのに、気がついた時に私は、フィリシアの体に入り込み水の中にいた。
『助けて』
あの声はきっとフィリシアだったんだろう。
私が今喋る時の声と同じだから。
『助け……』
朦朧とする意識の中で、ひとつの光が消えるところを私は見た。
きっとあの光は、フィリシアの魂だったんだろう。
でも私は生きている。
死にたくないと、私は水面を目指して泳ぎ始めた。
私は様々な訓練を受けていたので、普通の女より体力がある。
重いドレスを着ていたが、そんなもの、私にしてみたらまだ軽い。
私はもっと、過酷な経験をしてきたのだから。
水の中から私は顔を出した。
その時見た女の、驚いた顔は実に滑稽だった。
なぜ生きている?と言わんばかりだった。
「わ、私のバッグは見つかったのッ?」
バッグ?
なんの事だ?
女の声を聞いた次の瞬間、フィリシアの記憶がドクドクと私の体に注がれ始めた。
フィリシアが見てきた、体験してきた記憶が。
目の前にいる女が、フィリシアを殺したエリーズだと分かった。
「何をしているッ!」
叫びながら、男がこちらに走り寄って来ている。
「お父様!」
エリーズが、お父様と呼んだ男が湖の中に入ってきて、私に向かって手を差し出している。
「フィリシア!早く掴まりなさい!」
記憶の中に流れてきたその男はエリーズの父で、赤ん坊のフィリシアを助けたミュルゲール男爵だと直ぐに理解した。
慌てて私を救い出そうとしている、ミュルゲール男爵に差し出された手を握って、私は水の中から無事に救い出された。
「良かった。無事で」
ミュルゲール男爵はホッとしているが、本物のフィリシアはこの湖で死んだ。
そして私はフィリシアとして、このまるでおとぎ話に出て来る、中世ヨーロッパの様な世界で生き返った。
「どうして湖なんかに」
私が溺れていた事に、ミュルゲール男爵は一体何があったんだと、とても動揺していた。
ミュルゲール男爵は多忙な人物で、ほとんど屋敷にはいなかった。
だからフィリシアが、エリーズやその母親に虐げられている事を全く知らない。
フィリシアも、ミュルゲール男爵に心配かけまいと黙っていた。
「フィリシアが足を滑らせたのよ。そのはずみで私のバッグを落としてしまって、勝手にフィリシアがバッグを探しに湖に飛び込んだのよ!」
エリーズは見事なまでに嘘をつく。
本当はエリーズがバッグを湖に放り投げて、取ってくるように命じたのだ。
コイツ、中々の悪女だ。
「それならどうして直ぐに助けを求めなかったんだ!ここは突然深くなるんだ。エリーズもフィリシアも知っていただろう?」
「ごめんなさい!旦那様!」
仕方ない。
フィリシアの代わりをしておくか。
「フィリシア、あまり無茶をしないでくれ。お前に何かあったら、私は自分を責めても責めきれない」
私は、優しいミュルゲール男爵の背後にいるエリーズの顔を見た。
まるで何かに取り憑かれた、悪魔みたいな醜い顔で私を睨みつけている。
嫉妬を露わにして実に滑稽だ。
ああ、そう言うことか。
ミュルゲール男爵がフィリシアに優しくするのがつまらんのか。
その嫉妬で虐めていたわけだ。
わかりやすッ。
「本当に、助けてくださってありがとうございます。今度からは気をつけます」
って、本物は死んじまったけどな。
「さあ、早く屋敷に戻って着替えなさい。風邪を引いたら大変だ」
「はい」
なんだか変だな。
ミュルゲール男爵は、甲斐甲斐しく何故こんなにフィリシアに優しい?
でも、不思議と伝わって来る感情には、フィリシアに対して下心がある様には感じない。
本当に慈悲深いだけか?
まあ、フィリシアの記憶にも、ミュルゲール男爵に対しては悪感情は無いから、しばらくは様子見だな。
「チッ!」
おいおい、お嬢様が舌打ちか?
ミュルゲール男爵は気付いてなかったが、私は耳も良いのでよく聞こえた。
でも、別に快楽的に殺人をしたわけではない。
それなのに、殺人鬼とは言い過ぎではないか?
まあ、今更何を言っても無駄だけどな。
そうして死んだと思っていたのに、気がついた時に私は、フィリシアの体に入り込み水の中にいた。
『助けて』
あの声はきっとフィリシアだったんだろう。
私が今喋る時の声と同じだから。
『助け……』
朦朧とする意識の中で、ひとつの光が消えるところを私は見た。
きっとあの光は、フィリシアの魂だったんだろう。
でも私は生きている。
死にたくないと、私は水面を目指して泳ぎ始めた。
私は様々な訓練を受けていたので、普通の女より体力がある。
重いドレスを着ていたが、そんなもの、私にしてみたらまだ軽い。
私はもっと、過酷な経験をしてきたのだから。
水の中から私は顔を出した。
その時見た女の、驚いた顔は実に滑稽だった。
なぜ生きている?と言わんばかりだった。
「わ、私のバッグは見つかったのッ?」
バッグ?
なんの事だ?
女の声を聞いた次の瞬間、フィリシアの記憶がドクドクと私の体に注がれ始めた。
フィリシアが見てきた、体験してきた記憶が。
目の前にいる女が、フィリシアを殺したエリーズだと分かった。
「何をしているッ!」
叫びながら、男がこちらに走り寄って来ている。
「お父様!」
エリーズが、お父様と呼んだ男が湖の中に入ってきて、私に向かって手を差し出している。
「フィリシア!早く掴まりなさい!」
記憶の中に流れてきたその男はエリーズの父で、赤ん坊のフィリシアを助けたミュルゲール男爵だと直ぐに理解した。
慌てて私を救い出そうとしている、ミュルゲール男爵に差し出された手を握って、私は水の中から無事に救い出された。
「良かった。無事で」
ミュルゲール男爵はホッとしているが、本物のフィリシアはこの湖で死んだ。
そして私はフィリシアとして、このまるでおとぎ話に出て来る、中世ヨーロッパの様な世界で生き返った。
「どうして湖なんかに」
私が溺れていた事に、ミュルゲール男爵は一体何があったんだと、とても動揺していた。
ミュルゲール男爵は多忙な人物で、ほとんど屋敷にはいなかった。
だからフィリシアが、エリーズやその母親に虐げられている事を全く知らない。
フィリシアも、ミュルゲール男爵に心配かけまいと黙っていた。
「フィリシアが足を滑らせたのよ。そのはずみで私のバッグを落としてしまって、勝手にフィリシアがバッグを探しに湖に飛び込んだのよ!」
エリーズは見事なまでに嘘をつく。
本当はエリーズがバッグを湖に放り投げて、取ってくるように命じたのだ。
コイツ、中々の悪女だ。
「それならどうして直ぐに助けを求めなかったんだ!ここは突然深くなるんだ。エリーズもフィリシアも知っていただろう?」
「ごめんなさい!旦那様!」
仕方ない。
フィリシアの代わりをしておくか。
「フィリシア、あまり無茶をしないでくれ。お前に何かあったら、私は自分を責めても責めきれない」
私は、優しいミュルゲール男爵の背後にいるエリーズの顔を見た。
まるで何かに取り憑かれた、悪魔みたいな醜い顔で私を睨みつけている。
嫉妬を露わにして実に滑稽だ。
ああ、そう言うことか。
ミュルゲール男爵がフィリシアに優しくするのがつまらんのか。
その嫉妬で虐めていたわけだ。
わかりやすッ。
「本当に、助けてくださってありがとうございます。今度からは気をつけます」
って、本物は死んじまったけどな。
「さあ、早く屋敷に戻って着替えなさい。風邪を引いたら大変だ」
「はい」
なんだか変だな。
ミュルゲール男爵は、甲斐甲斐しく何故こんなにフィリシアに優しい?
でも、不思議と伝わって来る感情には、フィリシアに対して下心がある様には感じない。
本当に慈悲深いだけか?
まあ、フィリシアの記憶にも、ミュルゲール男爵に対しては悪感情は無いから、しばらくは様子見だな。
「チッ!」
おいおい、お嬢様が舌打ちか?
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