元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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素顔

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 仮面はスッポリと被っているタイプではなく、後ろがバンドになっていたので、顎の部分を跳ね上げれば簡単に外す事ができた。

 呆気に取られていたクロードの顔が私の前に曝け出された。

 その瞳は、薄暗い闇の中で光って見えて、美しいと思った。
 そして、確かに傷は酷いものだったがそれも左側だけで、右部分はちゃんと綺麗なまま残っていた。

 クロードは慌てて左手で顔を隠したが、私の目にはもうクロードの顔の傷が焼き付いていた。

「……なんて女だ」

 クロードは怒りを帯びた声で、傷のある方を枕で隠した。

「大怪我と聞いていましたが、鼻も口もちゃんと無事ではありませんか。ちっとも醜くなど無いわ」

「!」

 私の言葉に、クロードは固まったまま。

 クロードの顔の左半分は、眉毛辺りから、頬骨の下辺りまでがケロイド状に損傷していた。
 左目も潰れているので、やはり失明したのだろう。

「……武器庫に攻め入った時に薬品瓶を投げられた。冑を被っていたが瓶が当たって割れ、目の隙間から薬品が流れ込んできたのでその部分の皮膚が爛れた」

 薬品とは、きっと硫酸の類だろう。

「お前はどうして気味が悪いと思わない?私の顔はもう人の顔では無い」

 まだ顔を隠したままクロードは尋ねてきた。

「私は、もっと……」

 もっと酷い物を見て来たとは言えん。
 うーん、どうして誤魔化す?

「もっと気味が悪いと思ってました。でも鼻も口も、そして右側は全て整っているではありませんか」

 ううッ。
 無理か?
 苦し紛れ。

「クロード様の瞳はとても綺麗」

 クロードは、まだ左は枕で隠したままだが私を見てくれた。

「鼻の形も、引き締まった唇も」

 私はクロードの顔に顔を近付けた。
 跨ったまま枕をずらすと、そのままクロードの唇に唇を重ねた。

 私の方が積極的に、貪る様にクロードの唇に吸い付いた。
 クロードの、哀しみや寂しさに揺れる瞳にいざなわれた。

 あー。
 雰囲気に流されやすい女だ、私は。

「フィリシア」

 唇がズレると、クロードが私の名を呼んだ。

「こんな事はいけない。私は、お前を穢したくはない」

 穢す?

 ああ、そうか。
 フィリシアはまだ16だし、エリーズが身代わりにしたのを分かっている。

「……止められなくなる」

 ふっふっふっ。
 それが本音だな。

 クロードはそっと私を体から離した。
 私も、あまりフィリシアらしくない事はしない方がいいと、クロードに跨るのを辞めた。

「突然申し訳ありませんでした。クロード様が、その傷のことでとてもお辛い思いをして来たのだと思うと、逆にその傷がとても愛おしく感じてしまって」

 戦いの傷は、私にしてみたら勲章みたいなものだ。
 私とて、任務中に何度も体に傷を付けてきた。

「お前は優しい。同情でも、寄り添ってくれて嬉しかった」

 同情ではないのだが。
 ただ、私がキスしたかっただけなんだが。

 でもクロードは本当に、傷がなければ、かなりイケメンの部類に入るのに勿体無い。
 現代の医療が受けられれば、皮膚移植を繰り返せばほぼ元に戻るのだが、この時代じゃ無理だしね。

「嬉しいと思ってくれたのなら、クロード様も私に慈悲を下さいませんか?」

 もう顔も見たし、この屋敷にいる必要は無い。

「慈悲とは?」

「私を自由にしてください。このお屋敷を出て、1人になりたいのです」

 私が懇願すると、クロードは悲しそうに顔を歪めた。

「やっぱりお前もそうなのか。私から逃げ出したいのか」

 おいおいおい。
 なんでそう取る?

 あ、でも勘違いさせる様な事を言ったか。

「違います!クロード様から逃げたいのでなく、エリーズ様から逃げたいのです!」

 仕方ない。
 エリーズから虐げられて来た事を話さなくては無理か。

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