元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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ヴィラン・エリーズ1

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 湖から戻って、明らかにフィリシアはおかしくなったわ。

 もしかして、本当はあの時に事切れていたのに、生き返る為に悪魔にでも魂を売ったのかしら?

 ふふふ。
 まさかね。

 悪魔だの、魔女だの、結局は邪魔者を排除するための、ただの都合の良い言葉だものね。

 でも、あのフィリシアは本当にあのフィリシア?

 ううん、思い返せば、元々フィリシアはそいうい所があったわ。
 私やお母様から、躾のための折檻を受けても、顔の表情はムカつくほど変えなかった。

 その今までのアイツなりの鬱憤が、死を感じて本性が現れただけよね。

 別に気にすることはないわ。
 アイツがどんなに逆らおうと、私に勝てるわけが無い。
 男爵令嬢の私と、ただの召使の女。
 鼻から勝負にもならないわ。

 それに恐ろしい仮面を被った、あの薄気味悪い辺境伯に弄ばれていると思うと。
 本当にざまぁとしか言いようがないわね。

 私に本当に相応しい相手は、美しくて財と権力のある男だけ。
 そう、ジョージ様の様な容姿の。

 ジョージ様は辺境伯の幼馴染だと聞いたけど、本当は何者なのかしら?

 フィリシアが去った後、少しだけお話をしたけど、東のゲスト用の館にお一人で住んでると言っていたわ。
 それってただの侍従ではないって事よね。
 それなりの貴族なのかしら。

 もしうまくいけば、辺境伯とは婚約解消して、ジョージ様と婚約してあげても良いわね。



 ジョージ様が何者か知る為に、私は辺境伯の留守の間に、リビングに執事のシュナイダーを呼んだ。

「ジョージ様の事を知りたいの。どう言った身分の方なのかしら?」

 私が尋ねると、シュナイダーはにっこり笑う。

「そう言ったことは、旦那様に直接伺ってはいかがでしょうか?ご夫婦になられるのですから、会話も必要でしょうし」

 何?この男。
 私に直接辺境伯に尋ねろと?

 そんな事始めからするぐらいなら、わざわざお前を呼び出して、私の貴重な時間を割いたりはしないわよ。

「説教は不要よ」

「説教では」

「口答えも不要よ」

 私を誰だと思っているの?
 将来の女主人なのよ?

 今から私にかしずなくて、いつかしずくと言うの?

「良いからおっしゃいなさい!」

「……では、旦那様にお伺いを立ててから、エリーズ様にジョージ様の事をお話しいたしますね」

 はあ?
 何を勿体ぶっているの?

「エリーズ様」

「何よ!」

 ああ、腹立たしい。

「この屋敷は旦那様が絶対だという事をお忘れなきよう。失礼致します」

 シュナイダーはそう言って、部屋を出て行った。

 何よ!
 たかが執事のくせに偉そうに!

 ふん。

 こうなったら、ジョージ様の正体を調べさせないと。
 って言っても、フィリシアを痛ぶろうと、侍女はフィリシアしか連れてこなかったんだわ。

 まあ、良いわ。
 辺境伯の幼馴染で、別宅に1人で住まわせているという事は、それなりの身分だろうし。

 いざという時の為に、ジョージ様はキープしておきましょう。





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