元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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愛とは

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 その後、私はエリーズの入浴の手伝いを済ませて、私も侍女達が使う風呂に入った後にクロードの寝室に向かった。

 この地は温泉が湧き出ているので、風呂に入るのも楽で助かる。

 この世界の人間も、毎日風呂に入る習慣がある様だ。
 家の主人や家族に対して、召使が入浴の手伝いをするとフィリシアの記憶に残っていた。

 フィリシアは、エリーズとミュルゲール男爵夫人の入浴の世話をする侍女達の1人にいたが、どちらにしても、いつもちょっとした事に難癖を付けられて、お湯を掛けられたりしていた様だな。

「クロード様、失礼致します」

 ドアをノックしたが返事がないで、私はクロードの部屋のドアを開けてみた。

 寝室にはまだクロードの姿がなく、私はクロード専用の浴室へと向かってみた。

「クロード様。お背中をお流ししましょうか?」

 クロードがまだ風呂に入っていたので声を掛けてみた。

「あ、ああ」

 流石に風呂の中では仮面を外していたか。

 クロードは召使達に顔を見せたくないので、風呂は必ず1人で入っているとシュナイダーから聞いたので、背中だけでも流してやるかと思った。
 バスタブに浸かっているクロードは、私を見てまた右頬と耳を真っ赤にした。

「フィリシアはもう風呂には入ったのか?」

「はい。他の侍女の方と一緒に」

「そうか」

 私はクロードの逞しい背中に触れると、クロードはビクッと肩を震わせた。
 柔らかい布で、私はクロードの背中を優しく撫でた。

「ひ、人に背中を流してもらうのは、久しぶりだ」

 クロードは照れ臭いのか、少しだけ焦っている様に見える。

 ふふふ。
 焦るクロードも可愛いじゃないか。

「そうだったんですね。これからは、私がお世話を致しますね」

 私がわざと耳元で囁いてやると、クロードはまた、ビクッと肩を震わせた。

 ヤバい。
 嗜虐心を擽られる。

「どうしたんですか?震えてばかりで寒いですか?」

 分かっていて、わざと私はクロードに尋ねる。

「あ、イヤ、温かい。ただフィリシアの触れ方が」

「不快でした?」

 クロードは振り返る事なく首を振った。

「傷がたくさん」

 私は背中の傷を人差し指でなぞった。
 すると、ゾワっとクロードの肌が粟立つ。

「フィリシア!擽ったい!」

 流石に我慢出来なくなったのか、真っ赤な顔のクロードが振り返って私の手首を握った。

「ごめんなさい。クロード様があまりに可愛らしい反応を示すので」

 私が素直に謝ると、クロードは私の後ろ首に手を回して、そのまま私のおでこと自分のおでこをくっつけた。
 クロードの右目のエメラルドグリーンの瞳が、私を射るように見ている。

「大人を揶揄うのは辞めなさい」

「……ごめんなさい」

 私の方が本当は年上なんだけどね。

「フィリシアは私の事を……」

 言いかけて、クロードは次の言葉を飲み込んだ。
 きっと、好きなのかと聞きたかったんだろう。
 でも聞いたところで、クロードはフィリシアを妻には出来ない。
 あくまでもフィリシアはエリーズの身代わりなのだから。
 だから最後までは言わなかったのだろう。

 それに私も、クロードを好きとか愛しているとかはまだ分からない。
 もちろんクロードを嫌いではない。
 夜伽相手になれと言われれば、クロードに抱かれる事も何とも思わない。

 でも私には、忘れられない男がいる。
 最初で最後に愛した男。

 クロードが首に回した手を離した。

「私は、まだ出会ったばかりのフィリシアが可愛くて仕方ない。お前のする事に、喜んだり、ドキドキして怒ったり、情緒が不安定になる」

 こう言うところは本当に素直なんだよね。

「クロード様。私はエリーズ様の身代わりですが、クロード様を他の侍女達同様お慕いしてます」

「でも、他の侍女とはキスなどした事ないし、されて嬉しいともきっと思わない。なのに、お前には」

 クロードが私の頬に触れながら、親指で唇をなぞった。
 私はされるままに、唇を大人しくなぞられたまま。

「お前を穢さないと約束したのに」

 再びクロードの顔が私に近付く。

「ええ。クロード様は、私を穢してなどいません」

 クロードは優しく微笑むと、私と唇を重ねた。

 私とクロードは激しいキスを交わした。
 クロードとのキスは気持ち良い。
 熱い熱を身体中に注ぎ込まれる。

「フィリシア」

 唇が外れると、吐息のようにクロードが名を呼ぶ。
 私はそれを遮るように、クロードの唇を再び塞いだ。

 クロードも、私の激しいキスに応えるように、舌をお互いに絡ませ合った。

「フィリシア、もう……」

 クロードが興奮しているのがよく分かる。
 欲望に忠実なウォーレンとしてなら、とっくの昔に裸になって、クロードに跨っていただろう。

 ああ、クロードを感じたい。
 私の中の渦巻く欲求を満たしたい。

 でも、私はフィリシアだ。
 フィリシアは、そんな事が出来る娘ではない。

「フィリシアとのキスは官能的すぎる」

 クロードが何とか冷静になろうと頑張っている姿を見て、私がバスルームを出て、早くクロードを1人にしてあげた方が良いと判断した。

「でもキスだけなら、私は穢されませんよね?」

 私も興奮を抑えるために、わざと牽制する様な意地悪を言ってやった。

「……このぉ小悪魔め」

 悔しがるクロードをバスルームに置いて、私はひと足先にクロードの寝室に戻った。

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