元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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モヤモヤ

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 私が窓の外の月を見ていると、落ち着いたクロードが、いつもの余裕のある感じで寝室に戻って来た。

「言うのを忘れていたのだが」

 あ!
 私もエリーズの件を言うのを忘れていた。

「私も、クロード様に伝えないといけない事が」

 クロードがベッドに腰掛けて私を手招く。
 私もクロードの横に座った。

「もしかしてエリーズの事かい?」

 私は頷いた。
 やっぱりクロードの耳にも、シュナイダーから入ったのか。
 侍女を増やすのに、流石にエリーズもシュナイダーにお伺いは立てない訳にはいかない。

「私がもうクロード様の侍女として働くので、エリーズ様のお世話はしたくないと申し上げたら、ミュルゲール家から侍女を呼ぶという話になって」

「それで良い。私が言いたかったのもその件だった。エリーズはフィリシアに何をするか分からない。フィリシアとエリーズに距離が出来るなら、実家から何人侍女を呼びつけようと私は構わない」

 フォンダート家の財力ならば、確かに何人侍女を呼ぼうと痛くも痒くもないだろう。

「侍女達がやって来るまで、この家の者をエリーズに付かせるので、フィリシアはもうエリーズの世話はしなくて良い」

 私は首を振った。

「エリーズ様はわがままな方です。クロード様の侍女達が、イヤな思いをするのは私がイヤです。もうしばらくは、私がエリーズ様のお世話をしますので」

 エリーズの方が、私をそばに近づけなくなった分、別にアイツの相手も面倒では無くなった。
 ただ、何を考えてるか分からないから、用心はしておかないとな。

「そうか。フィリシアがそれで良いなら、私も余計な口は挟まないようにしよう」

 クロードは優しい目で微笑み、私の髪を撫でる。

「こうしていると天使のような顔をしている癖に、私にイタズラを仕掛けてくる時は小悪魔になる。フィリシアは掴みどころが無さすぎる」

 少しだけクロードの瞳が曇る。
 何かが気になっている様な顔だ。

「すまない。正直、あんなキスをされて、私は少しだけお前を疑ってしまっている」

 あー。
 フィリシアが男の経験があるのか気になっているのか。
 調子に乗ってやり過ぎたか。

 でも、もう何度もクロードとキスしているが、フィリシアのそういった記憶は全く流れてこない。
 きっとフィリシアにしてみれば、クロードがファーストキスの相手なんだろうなぁ。

 なんか、ごめんよ、フィリシア。

「もし、私がもう男の人を知っていたら、エリーズ様のために私をお抱きになりますか?」

 クロードはフルフルと首を振った。

「もしフィリシアが、もう男を知っていたとしても、やはり私は子を成すためだけにフィリシアと、それだけのための行為をしたいと思わない」

 クロードの切ない気持ちが伝わって来る。

 元殺し屋としては、人身掌握に長けている分、表情や仕草で、相手の気持ちも全て手に取るように分かってしまう。

 特にクロードは分かりやすすぎる。

「私自身の名誉の為にクロード様に誓います。私はまだ男性を知りません。誤解させる様なキスをして、申し訳ありませんでした」

「……私は心が狭い」

 うん。
 フィリシアのファーストキスの相手が知りたいんだよね?

 でもね、ファーストキスの相手はクロードなんだよ。

「……でも、フィリシアとのキスは辞めたくない」

「ぷッ!」

 堪らず私はつい吹き出してしまった。

「笑うなッ!モヤモヤするのに、フィリシアとキスしたいんだ!」

 開き直りやがった。

 まーったく、マジ可愛すぎだよ。
 まるで大きな駄々っ子だ。

「はい。私ももっと、クロード様とキスしたいです」

 私が微笑むと、クロードは照れくさそうにそっぽを向く。

「……ちょっと、出て来る」

 クロードはそう言って、ベッドから立ち上がると部屋の外に出て行ってしまった。

 ふふふふ。
 若いねー。
 性欲大爆発かよ。


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