35 / 78
ハンドクリーム
しおりを挟む
1人で寝るのは久しぶりだな。
たった数日クロードと寝ていただけなのに、1人なのが変な感じだ。
私は天井を見つめていたが、疲れたと目を閉じた。
布や裁縫道具を持ち込んでいた、仮面を作るための小部屋を、そのまま私の部屋にしてもらえた。
これからどうしようか。
いずれクロードとエリーズは正式に夫婦になるだろう。
エリーズの言う様に、もう私は用無しなのだから、やっぱりこの世界で1人で生きていく力を付けなければいけない。
体力と攻撃力には自信があるが、私に乏しいのはこの世界の情報だ。
もっと知識を蓄えなければ。
「あー。この先かぁ」
このままじゃ無理だ。
考えなくてはいけないなぁ。
とりあえず、クロードには礼に仮面をいくつか作って、私は馬に1人で乗れる様に身動きのしやすい服を作ろう。
色々考えないといけないのに、クロードの顔がチラついて、思考がうまくまとめられないのが厄介だ。
「フィリシア、おはよう」
「おはよう、マリエッタ」
今日からは、クロードの世話をしなくなったので、私はこの家の侍女として働かなくてはならない。
私に割り当てられた仕事は、屋敷の掃除と洗濯だ。
別に掃除も洗濯も嫌いじゃないから良いけどさ。
ただこの時代は、掃除機や洗濯機なんて代物は無いから、箒と雑巾と洗濯板がマストアイテムと言うのが難だな。
「痛ッ!」
水仕事のせいで、侍女達の手はアカギレになっている。
私やマリエッタの様な若い侍女はまだ回復力が高いが、お肌の曲がり角の侍女達は苦労している。
この世界にハンドクリームなんてないし……。
その時、私の中にフィリシアの記憶が流れ込んで来た。
フィリシアが蜜蝋とオリーブオイルと蜂蜜を鍋で煮て、固まった物を手に塗っていた。
これは、もしかしてハンドクリーム?
「そうだ」
フィリシアの記憶を信じてみよう。
この屋敷に赤ん坊はいないし、手に蜂蜜を塗っても危険はないだろう。
「フィリシア?どこに行くの?」
私は、天然素材で作れるハンドケア用品を求めて、キッチンへと急いだ。
「オリーブオイルと蜂蜜で、今度は何かお菓子でも作るのかい?」
私が料理長に、オリーブオイルと蜂蜜を譲って欲しいとお願いすると、料理長は今度はお菓子作りでもするのかと期待した目で私を見ている。
「いえ、お菓子作りではなく、手荒れの薬を作りたくて」
「手荒れ?薬?」
料理長は私の言ってる意味が理解できなくて、ポカンとした顔になる。
私はキッチンにある、未使用の蜜蝋で出来た蝋燭を鉄製の器に入れて、フィリシアの記憶通りに湯煎を始めた。
「一体、何が出来るんだ?」
蝋燭を溶かす私を見て、料理長はびっくりしている。
私はそこに、オリーブオイルと蜂蜜を少しずつ注ぎながら、木のスプーンで混ぜてみた。
こんな感じかしら。
「あの、これを入れられる蓋を閉められる容器はないですか?」
全員にひとつずつは配れないが、皆んなで共用すれば良い。
「こんなのでどうだい?」
陶器で出来た蓋付きの容器を料理長が渡してくれた。
これなら丁度いい。
私は即席のハンドクリームを容器に移し替えた。
「ありがとうございました!失礼します」
終始ポカンとした料理長に礼を言って、私は持ち場に戻った。
「これは?」
同じエリアで働く侍女達に、私は作ってきたハンドクリームもどきを見せた。
「肌荒れに効くお薬です。私もずっと使っていました」
実際に使っていたのはフィリシアだけどね。
「フィリシアさんが使っているのなら安心だわ。私にも頂戴!」
「私にも!」
わぁッと、侍女達がフィリシアに群がった。
「あ、今はダメです!ベトベトになるので、寝る前に付けるんです」
まだ蜜蝋が固まっていないので、夜まで待つ様に止め、風呂から上がったら少量を手に取り、温めながら手に馴染ませる様に伝えた。
これで手荒れが治ればめっけものだ。
「フィリシアって凄いのね!仮面といい、料理といい、手荒れの薬といい、何でも作れちゃうのね!」
マリエッタが、前のめりで私を尊敬の眼差しで見る。
「何でもは無理よ」
私は謙遜した。
だって、これはフィリシアの記憶だもの。
フィリシアは本を読むのも好きだったから、こういう知識がきっと沢山あるんだろうな。
たった数日クロードと寝ていただけなのに、1人なのが変な感じだ。
私は天井を見つめていたが、疲れたと目を閉じた。
布や裁縫道具を持ち込んでいた、仮面を作るための小部屋を、そのまま私の部屋にしてもらえた。
これからどうしようか。
いずれクロードとエリーズは正式に夫婦になるだろう。
エリーズの言う様に、もう私は用無しなのだから、やっぱりこの世界で1人で生きていく力を付けなければいけない。
体力と攻撃力には自信があるが、私に乏しいのはこの世界の情報だ。
もっと知識を蓄えなければ。
「あー。この先かぁ」
このままじゃ無理だ。
考えなくてはいけないなぁ。
とりあえず、クロードには礼に仮面をいくつか作って、私は馬に1人で乗れる様に身動きのしやすい服を作ろう。
色々考えないといけないのに、クロードの顔がチラついて、思考がうまくまとめられないのが厄介だ。
「フィリシア、おはよう」
「おはよう、マリエッタ」
今日からは、クロードの世話をしなくなったので、私はこの家の侍女として働かなくてはならない。
私に割り当てられた仕事は、屋敷の掃除と洗濯だ。
別に掃除も洗濯も嫌いじゃないから良いけどさ。
ただこの時代は、掃除機や洗濯機なんて代物は無いから、箒と雑巾と洗濯板がマストアイテムと言うのが難だな。
「痛ッ!」
水仕事のせいで、侍女達の手はアカギレになっている。
私やマリエッタの様な若い侍女はまだ回復力が高いが、お肌の曲がり角の侍女達は苦労している。
この世界にハンドクリームなんてないし……。
その時、私の中にフィリシアの記憶が流れ込んで来た。
フィリシアが蜜蝋とオリーブオイルと蜂蜜を鍋で煮て、固まった物を手に塗っていた。
これは、もしかしてハンドクリーム?
「そうだ」
フィリシアの記憶を信じてみよう。
この屋敷に赤ん坊はいないし、手に蜂蜜を塗っても危険はないだろう。
「フィリシア?どこに行くの?」
私は、天然素材で作れるハンドケア用品を求めて、キッチンへと急いだ。
「オリーブオイルと蜂蜜で、今度は何かお菓子でも作るのかい?」
私が料理長に、オリーブオイルと蜂蜜を譲って欲しいとお願いすると、料理長は今度はお菓子作りでもするのかと期待した目で私を見ている。
「いえ、お菓子作りではなく、手荒れの薬を作りたくて」
「手荒れ?薬?」
料理長は私の言ってる意味が理解できなくて、ポカンとした顔になる。
私はキッチンにある、未使用の蜜蝋で出来た蝋燭を鉄製の器に入れて、フィリシアの記憶通りに湯煎を始めた。
「一体、何が出来るんだ?」
蝋燭を溶かす私を見て、料理長はびっくりしている。
私はそこに、オリーブオイルと蜂蜜を少しずつ注ぎながら、木のスプーンで混ぜてみた。
こんな感じかしら。
「あの、これを入れられる蓋を閉められる容器はないですか?」
全員にひとつずつは配れないが、皆んなで共用すれば良い。
「こんなのでどうだい?」
陶器で出来た蓋付きの容器を料理長が渡してくれた。
これなら丁度いい。
私は即席のハンドクリームを容器に移し替えた。
「ありがとうございました!失礼します」
終始ポカンとした料理長に礼を言って、私は持ち場に戻った。
「これは?」
同じエリアで働く侍女達に、私は作ってきたハンドクリームもどきを見せた。
「肌荒れに効くお薬です。私もずっと使っていました」
実際に使っていたのはフィリシアだけどね。
「フィリシアさんが使っているのなら安心だわ。私にも頂戴!」
「私にも!」
わぁッと、侍女達がフィリシアに群がった。
「あ、今はダメです!ベトベトになるので、寝る前に付けるんです」
まだ蜜蝋が固まっていないので、夜まで待つ様に止め、風呂から上がったら少量を手に取り、温めながら手に馴染ませる様に伝えた。
これで手荒れが治ればめっけものだ。
「フィリシアって凄いのね!仮面といい、料理といい、手荒れの薬といい、何でも作れちゃうのね!」
マリエッタが、前のめりで私を尊敬の眼差しで見る。
「何でもは無理よ」
私は謙遜した。
だって、これはフィリシアの記憶だもの。
フィリシアは本を読むのも好きだったから、こういう知識がきっと沢山あるんだろうな。
0
あなたにおすすめの小説
心を病んだ魔術師さまに執着されてしまった
あーもんど
恋愛
“稀代の天才”と持て囃される魔術師さまの窮地を救ったことで、気に入られてしまった主人公グレイス。
本人は大して気にしていないものの、魔術師さまの言動は常軌を逸していて……?
例えば、子供のようにベッタリ後を付いてきたり……
異性との距離感やボディタッチについて、制限してきたり……
名前で呼んでほしい、と懇願してきたり……
とにかく、グレイスを独り占めしたくて堪らない様子。
さすがのグレイスも、仕事や生活に支障をきたすような要求は断ろうとするが……
「僕のこと、嫌い……?」
「そいつらの方がいいの……?」
「僕は君が居ないと、もう生きていけないのに……」
と、泣き縋られて結局承諾してしまう。
まだ魔術師さまを窮地に追いやったあの事件から日も浅く、かなり情緒不安定だったため。
「────私が魔術師さまをお支えしなければ」
と、グレイスはかなり気負っていた。
────これはメンタルよわよわなエリート魔術師さまを、主人公がひたすらヨシヨシするお話である。
*小説家になろう様にて、先行公開中*
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
攻略なんてしませんから!
梛桜
恋愛
乙女ゲームの二人のヒロインのうちの一人として異世界の侯爵令嬢として転生したけれど、攻略難度設定が難しい方のヒロインだった!しかも、攻略相手には特に興味もない主人公。目的はゲームの中でのモフモフです!
【閑話】は此方→http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/808099598/
閑話は最初本編の一番下に置き、その後閑話集へと移動しますので、ご注意ください。
此方はベリーズカフェ様でも掲載しております。
*攻略なんてしませんから!別ルート始めました。
【別ルート】は『攻略より楽しみたい!』の題名に変更いたしました
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました
三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。
優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。
優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。
そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。
絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。
そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿で両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる