元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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森の洋館

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「フィリシア!」

 クロードが笑顔で私の元に近付いてきた。
 私も微笑んでみた。

「どうしてここに?」

 私が厩にいた事にクロードは驚く。

「馬を見て気分転換を」

「そうか、私もだ。気分転換に馬に乗ろうかと思って来てみたんだ。フィリシアに会えたから来て良かった」

 クロードは上機嫌にニコニコしている。

「同じ屋敷にいても、なかなか顔を合わす事が無くて、正直寂しかったよ」

 クロードが私の両手を、大きな手のひらで包むように握った。

「私はもうクロード様のお世話は出来ないので、お会いできなくても仕方ないです」

「……冷たいなぁ」

 シュンとした目でクロードは私を見る。

「冷たいとは?」

「私はお前に会えて嬉しいのに、凄く温度差を感じる」

 クロードに会えた喜びに、私がはしゃがない事に不満なのかな?

「私だって、嬉しいですよッ!」

「本当に?」

 疑ってジトーッと私を見つめる。
 その目力の圧がすごい。

「ほ、本当です!でも、もしこんな所をエリーズ様に見られたら」

 面倒くさい事になる。

「ふー。それもそうだな」

 クロードもエリーズの面倒臭さは良く分かっている。
 無茶苦茶な事を言って、人の話を全く聞かないし、恥はないのかとばかりに騒ぎ立てる姿を思い出して、クロードも頭が痛くなっている様子だ。

 クロードは私の手を離して繋ぎ直すと、私たちを見ていたフィリップにシーッと人差し指を唇に当てて合図を送り、庭の奥へと私を連れて行く。

「どこに行くのですか?」

 クロードは手を繋いだまま何も答えず、楽しそうな笑みだけを私に向けた。

 しばらく走ると森の奥に、小さな洋館が見えて来た。

「ここは?」

 クロードはまだ黙ったまま、鍵の掛かっていない洋館のドアを開けた。
 中は少しだけ埃っぽい。
 もう、何年も使われていないのが分かった。

「ここは、私の家庭教師だった、王室医学者の息子が寝泊まりをしていたんだ」

 こんな所で?と私はびっくりした。

「なぜお屋敷じゃ無くてここに?」

「彼は変わり者でね。研究をするのに、人の気配があると集中出来ないと言っていた」

 確かに、こんな森の中のような場所で1人になりたいとは、只者ではないな。

「私は幼い頃病弱でね」

 あ、それ、さっきフィリップが話していた。

「私はこの家の跡継ぎだった事もあり、父は国王陛下に相談して、王室の医学者の息子のリオン先生をこの家に派遣してくれた。彼も医学者の卵だったし、私の症例に興味を持ったようだった」

「どんな病気だったんですか?」

「直ぐに熱を出したり、皮膚に湿疹が出たりしてね」

 アレルギーみたいなものか?

「リオン先生はどの様な治療を?」

「私の食生活の見直しや、皮膚の湿疹に効果がある薬草から薬を作ってくれた。薬草の風呂は臭くてたまらなかったが」

 昔の話を、クロードは楽しそうに話してくれる。

「侍従に指導して、運動も取り入れてくれて、私も8歳ぐらいには健康な子供になってね。全てリオン先生のおかげさ」

「そうだったんですね」

「私と父が戦場で大怪我をした時も、1番早く駆け付けてくれたのがリオン先生だった。先生がいなければ、父も助からなかったかもしれない」

 クロードとクロードの父の命の恩人でもあるのか。

「ここは、先生が居なくなっても手を付けるのが嫌で、そのまま保存している。私の思い出の場所でもあるから。それに、ここなら、私以外誰も立ち入らない」

 クロードは優しい目で私を見て、そっと私を抱きしめた。

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