元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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「ここで、こうしてフィリシアと会う事は出来ないだろうか?」

「それは……」

 私はもう夜伽の相手をする必要もないし、クロードはエリーズの婚約者でもある。
 この関係がバレては、また面倒な事になるのは目に見えている。

「フィリシアと会えないのは辛い。同じ屋敷に居ても顔を合わす事もできない」

「ダメです」

 私がキッパリと拒否するが、クロードは私を離さない。

「私たちはもう、2人で会う必要がなくなりました」

 いくらクロードの願いでも、それは許されない。

「分かっている。でも、ただお前と2人でこうして話がしたいだけだ。こうして抱きしめる事が嫌ならそれも辞める」

 そういう事じゃない。
 いくら広大な敷地とは言え、こんな風に会っている事がバレないわけがない。

「エリーズ様との婚約を承諾したのはクロード様です。私とこの様な、人目を避けて会うなんて事は、バレればクロード様の立場が悪くなります」

 私はクロードから離れた。
 クロードも、もう私に手を伸ばす事はしなかった。

「すまない。フィリシアを困らせる事になるんだな」

 私は首を振った。

「私はいずれこのお屋敷を出て行きます。そうすれば、時が経てばクロード様も私を忘れていきます」

 クロードは悲しそうな目で、笑顔のまま首を振った。

「フィリシアにはとても感謝している」

「え?」

「私のためを思ってこの仮面を作ってくれた事も。でも、後悔もしている」

「何をですか?」

「私がこの仮面を着けなければ、いつまでもフィリシアと居ることが出来たのにと」

 私は再び顔を横に振って微笑んだ。

「いいえ、後悔なんてしないでください。その仮面を着けたことで、屋敷の使用人たちは大変喜んでくれました。そのうち、領民の目に触れれば、大勢の領民たちがお喜びになるでしょう」

 私のクロードに対する役目はもう終わった。
 替えの仮面をいくつか作って、この屋敷を出て行こう。
 その後の仮面の管理はマリエッタに託そう。

 クロードの私への気持ちを知ったら、もう側には居られない。

「!」

 私は、何かを感じて、窓に目を向けて外を見た。

「誰だ!そこに居るのは!」

 何者か分からず、私はつい強い口調で叫んでしまった。

「フィリシア?」

 何も気付いていないクロードは、私を見て驚いている。
 私は危険があってはと、クロードの前に立ちはだかった。

 耳を研ぎ澄ませて、近づいて来るその足の運びに私はホッとした。

「そこで何をされてるんですかッ?」

 私が大声を張り上げると、驚いた顔のジョージが私とクロードの前に現れた。

 私達の前に姿を現したジョージは、照れくさそうに髪をガシガシと掻いた。

「屋敷の中から、フィリシアが厩に向かう姿が見えたから、僕も厩に向かったんだ。そうしたらクロードもやって来て、2人でここに向かっている様で気になって」

「なぜ私を追って来たんですか?」

「気になったから。ずっと怒ってたし」

 そりゃそうだろう。
 お前の言動を考えてみろ。

 無言の私に気まずくなったのか、ジョージは部屋の中を見渡す。

「懐かしいな。リオン先生には、僕も勉強を教えてもらったんだ」

 ジョージも、この場所がどういう場所か知ってる訳か。
 幼馴染だから当たり前か。

「どうしたんだよ、後をつけて来るなんて」

 クロードがジョージに対して不快感をあらわにした。

「クロードこそ!クロードにはエリーズがいるだろう?それなのに、フィリシアとここで何をしていたんだよ」

「別に俺たちは!」

 ほら、言わんこっちゃない。

 って、本当に焦ると俺って言うのね。
 初めて聞いた気がする。

「私はただ、この場所の説明を受けていただけです。大切な思い出の場所なのに、手入れが行き届いてないから、私に掃除をする様にと」

 嘘も方便だ。
 でもこれで納得するかは謎だけどな。
 ジョージは、私たちがここまで手を取り合い、やって来た姿も見てるだろうし。

「フィリシアがそう言うなら信じるよ」

 はい?
 なんじゃ突然。

 ジョージも手のひら返して来やがった。

「君を、今まで誤解していた自分が本当に恥ずかしい。君がクロードを誑かすなんて思った自分が恥ずかしい。本当にごめん」

 ジョージは深々と私に頭を下げて謝罪した。

「ジョージ、私たちは本当に、誰かに恥じる仲ではない。確かに、私はエリーズよりフィリシアを大切に思っているが」

「ああ。それは僕も分かっている。フィリシアの方が、クロードに対して思い遣りがある事も」

 ジョージは俯いたまま、なかなか顔を上げない。

「本当にすまない。幼い頃から母の悪い噂を聞いていた事で、どうしても、母とフィリシアを重ねてしまった」

 どう言う意味だ?
 なぜ母親と私を重ねる?

「ジョージ、だからそれは、ただの嫉妬や陰謀だと言ってきただろ?」

 そう言ったクロードがハッとして私を見た。
 私が聞いたらマズい話なのかな?

「もったいつけられるのは性に合わないので、私はこれで失礼します」

 面倒くさくなって私は退散する事にした。

「待ってくれ!全て話すから、僕の謝罪を受け入れてくれ!」

 ジョージは私の前に回り込むと、再び深々と頭を下げた。
 なぜこんなに必死になる。

 クロードは腕を組んで唇に指を当てて黙っているが、その雰囲気は、とても機嫌が悪そうに感じた。
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