元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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苦悩

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 カレーパティーが無事終わり、すっかり満足したリオンを見送ると、私は紅茶を持って、クロードとジョージが待つ書斎に向かった。

「フィリシアも座りなさい」

 私はクロードとジョージの前に紅茶を置くと、クロードに促され2人掛けのソファーの端に座った。

「実は、どうしてもエリーズを受け入れられないんだ」

 クロードの悩みは単刀直入だった。
 そりゃそうだよね。
 あのエリーズを好きになる事は無理だろう。

「この婚約の前にジョージにも話したが、私はエリーズとこの婚約に際して契約をしたんだ。結婚は名ばかりで、世継ぎはエリーズの侍女との間に出来た子を、私とエリーズの子供として育てると」

 だから私がその相手に選ばれ、ここまで来たと言う事だよね。

「ああ。最初聞いた時は驚いた。子供が不幸になると反対もした」

 ジョージは、自分も生い立ちが不幸だったから、クロードとエリーズの間の契約に反対したのは想像できる。

「それでも、クロードが怪我のせいで前の妻と離婚した事も分かっているから、強くは反対できなかった」

「でも、やっぱり私は間違っていた。この家を守るためには、跡取りが必要だと思い込んでいた」

 辺境伯と言う地位のために、跡継ぎの為にも政略結婚は致し方無いしね。

「それだけじゃ無いだろ!本気で自分の子供を欲しがっていたじゃないか!」

 ジョージが熱くなる。

「ああ。私は子供が欲しかった。父や母の様に、子供を育てたかった」

 幸せな家族の中で暮らしていたクロードにしてみれば、自分の血を分けた子供のいる生活に憧れがあったんだろうな。

「恋愛結婚は難しいのは分かっている。私の両親だって政略結婚だ。それでもお互いを愛して慈しんでいる」

 前の妻との結婚も、クロードの描いていた未来の一部だったんだろうな。
 政略結婚だとしても、いつしか情が湧き、愛し合えるんではないかと。

「それがエリーズとはどうしても出来ない。どうしても私は彼女を受け入れられないんだ」

 そりゃ、あの性悪女と愛し合える相手は、同じ人種だけだろうな。

「エリーズが心を入れ替えて、私に信用される様になると言っても、どうしても私はそれすら信用できない」

 私が言った事を信じているクロードにしてみれば、それは当然の気持ちだ。
 でも私も嘘は言っていない。
 現実にフィリシアはエリーズに殺されたんだから。

「身代わりを立ててまで、クロードを遠ざけていたエリーズが、心を入れ替えて妻になると言い出したのか?」

 ジョージは驚いて尋ねる。

「ああ。私がフィリシアの仮面を着けるようになってから、態度が全く変わってね」

「ああ、何となく分かった。クロードの顔を見て、気持ちが変わったんだな」

 あからさまに変わったエリーズを想像してジョージは呆れる。

「私は、エリーズがフィリシアにして来たことが許せない。まだ16のフィリシアを、自分自身が嫌がる相手の身代わりにさせようとした」

 私がエリーズや男爵夫人に虐げられた話や、湖で起きた事は、クロード自身が目で見たことではないのでジョージには言わないが、身代わりに夜伽をさせようとしただけでも、クロードがエリーズを嫌悪する気持ちがジョージにも十分伝わるはず。

「確かに。その一件だけでも、エリーズがフィリシアをずっと虐げて来たんじゃないかと想像できたよ。身代わりにするなんて、あまりにも酷くて驚いた」

 やっぱりジョージも、エリーズに対して不信感があるようだな。

「もちろん私は、フィリシアに酷い事はしていないぞ!」

 クロードは真っ赤になって否定する。

 キスは何度かしたけどね。

「ムキにならなくても良いよ」

 ジョージはそう言うけど、クロードの私に対する態度を見ていれば、半信半疑なんだろうなぁ。

「私はこの先エリーズと結婚しても、エリーズとの間に子供は作らないと断言した。それくらいじゃ、エリーズも私と婚約解消しようとは思わないだろうけど」

 だよねー。

 元々エリーズは、辺境伯家の財産狙いだろうし。

「それで考えたんだ。私の妹のソフィーヌの子供達の中から、1人を養子にしようかと」

 妹は確か、ジョージと同い年だったっけ?

「しかし、ダルメア公爵がそれを許すか」

 ん?
 誰?

「ダルメア公爵とは?」

 人物が増えて来て、私はクロードに尋ねた。

「ダルメア公爵はソフィーヌの夫だよ。現国王の弟でもある」

 それって。
 それなら、ジョージとも異母兄弟?

 私の視線を感じたのか、ジョージも私を見た。

「ダルメア公爵は、僕のすぐ上の兄だ」

 やっぱり。

「ソフィーヌには3人の息子が居てね。まだ幼すぎて、養子だなんて話も出来ないけどさ」

「跡継ぎがいない名家が、養子を貰うのも普通の事けど、他の公爵家から反発はないかな」

 ジョージが危惧するような、政治的な問題もあるのかな?

 確かに辺境伯家は、この王国で絶大な力を持っている。
 そのソフィーヌが現国王の弟と結婚したのも、王家との繋がりを深める目的だろう。

 王家の血を受け継ぐ者が辺境伯家の養子になったら、他の公爵家は益々太刀打ち出来なくなるとか?

「えーと、話が難しいのですけど。そもそもこのお話し合いに、私が居て良いんですか?」

 ただ話を聞いてるだけで、私には何も出来ないのだけど。

「フィリシアに聞いて欲しかったんだ!私がエリーズと本当の意味での夫婦にはならないと言う事を!」

 なるほど。
 私をここに呼んだ真意は、エリーズとの事を誤解されたくなかったのね。

 クロードが私に必死に訴えかける姿を見て、ジョージはヤレヤレと苦笑いをしている。

「お邪魔虫だったのは僕だったってことか」

「あ、その、そう言う意味じゃ!ただ、フィリシアとは、2人きりにならないと約束したし」

 クロードが、デカい体に似合わないほどシュンとなっている。
 私はその姿を見て、つい可愛いと笑ってしまった。

「はいはい。クロードの気持ちは分かったよ。でも今直ぐに何かが出来るわけでない。だからクロードは、これからも夕飯はこちらで食べれば良い。そうすれば、フィリシアとも会えるだろう」

 ジョージが気を遣ってくれるので、クロードは申し訳ない顔になる。

「私も、クロード様がこちらに来てくれるのは嬉しいです」

 私の顔を見て、クロードは照れ笑いをする。
 本当に素直な男ね。

 そう。
 そんな素直で実直で、素晴らしいクロードを不幸には出来ない。

 いずれエリーズと正式に結婚をするだろうが、エリーズの思い通りには絶対にさせない。

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