元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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わがまま

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 シュナイダーがクロードの部屋の前から立ち去ると、私はクロードの部屋のドアをノックした。

「フィリシアです」

「待っていたよ」

 クロードがドアを開けたと同時に、私の腕を優しく掴み部屋へ入れると素早くドアを閉めた。

 私の困惑をよそに、クロードは無言で私を抱き締めた。

「クロード様?」

 一体、どういう事?

「すまない。我慢の限界を超えてしまった」

 え?
 どういう意味?

「あ、あの、どうしたんですか?」

「フィリシアがそばにいるのに、遠く感じてしまって」

 力強い腕が私を離さない。
 クロードの爽やかな香りに包まれて、私もただ大人しくクロードの腕の中で動けなかった。

「この屋敷に戻ってくれても、私はもうお前と一緒に眠ることが出来ないと思うと、それが辛くて苛立ちがおさまらなかった」

 私とジョージがこちらに戻ってだいぶ時間は過ぎていたけど、確かに2人きりになれたのは、昼間の山小屋でのひとときだけだものね。

 あ、逆にあれが引き金になってしまったのかしら?

「フィリシア。私を嫌いでないなら、私と一緒にいてくれないか?」

「でも、それでは、他の使用人達に示しがつかないのでは?」

 もう、十分示しがつかないだろうけど。

「私の質問に答えて。他の事は考えなくて良いから」

「嫌いな訳ありません。私だって……」

 私だって?

 それを言ってどうなる?

「私はフィリシアが好きだ」

 知ってる。

 知ってるけど、私はどう答えれば良いの?

「フィリシアが愛おしくて、私だけのフィリシアにしたい」

 でも、それは立場的に許されるものなの?
 私はクロードに相応しい女なの?
 私は、フィリシアじゃない。

 私は……。

「……困らせてしまってすまない」

 クロードがそっと私から離れた。

「違うんです!私とクロード様とでは、身分も違いすぎるし、私は、私はッ!」

 フィリシアじゃない。

 でも、そんな事を言ったところで信じてもらえない。
 違う世界から来たなんて言ったって、この世界が私にとっては異世界だと言ったところで信じてもらえない。

「……多くは望まない。ただ、そばにいて欲しい。フィリシアを感じたい。また、前の様に一緒に寝てくれないか?」

「でもッ……」

 クロードは再び私を抱き締めた。

「家の者達は、皆んな私の気持ちを知っている。だから、フィリシアが周りに気を使う必要もない」

「えー!本当ですかッ!」

 それって、本当に本当?
 確かに前に、マリエッタにはクロードとの事を応援?されている様な事は言われたけども。

「こんな事、嘘をついてどうする。だからシュナイダーも普通にフィリシアを迎えに行っただろ?使用人達に悪い噂を立てられるのを心配するなら、フィリシアを迎えには行かない」

 確かにそうだけど。
 そうだけども、でも!

「私のわがままを聞いてくれ。私の事を嫌いじゃないのだろう?」

 聞き方がズルい。

「確かに、嫌いじゃないですッ!それはさっきも言いましたッ!」

 なんだか恥ずかしくなって来た。
 何を私は必死になってる?
 何をムキになってる?

 クロードの腕の力がさっきの様に強くなった。

「キス以上のことはしない」

「はい?」

 え?
 何宣言?

「フィリシアが大人になるまで、それ以上は我慢する。だから、私を好きになってくれ」

 その言い方もずるくない?
 私だって……。

 あーッ!
 これってどういう感情?

 私って、クロードに対して、どういう感情なの?

 これが恋愛なの?

「フィリシアが本心で私を好きだと言ってくれたら、その時は、フィリシアの全てを私にくれないか?」

 もうッ!
 なんて答えるのが正解なのよッ!

「真っ赤になってるフィリシアも可愛いな」

 こいつぅ。
 何嬉しそうに言ってんのよッ!

 もう、本当に知らないッ!

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