66 / 149
イケナイ乙女たち
66
しおりを挟む
一夜は、土曜日から箱根に来ていた。
土曜日の朝、目覚めるとメールに気が付いた。
【ハーイ!アンソニー。私も日本に来てるのよ。箱根なんて何十年ぶりかしらね。暇ならお前もおいで】
イギリスにいるはずの祖母が箱根に来ていた。
なんでも、サバティカル休暇を取って、日本の経済を研究する目的で日本に来たと言う。
「まったく、おばあさんはいつも突然だ。日本にはどれくらい滞在するつもりですか?」
旅館は離れの一番良い部屋で、障子の向こうに露天風呂まで付いていた。
「ビザの要らないの期間までね。昨日成田に着いてすぐ箱根に来たんだよ。月曜から西へ向かって沖縄まで行って、日本海側から北海道へ。その後太平洋側から東京へ。12月にまた会えるよ」
にっこり祖母は笑う。
「秘書のマークは?」
「もちろん一緒よ。看護師も同行させてるから安心して。お前が日本に行って、私も生まれ故郷が恋しくなったわ。実家にも寄るつもり。お墓参りしたいからね」
綺麗な箸づかいで料理を食べながら祖母は言った。
「80年あっという間だったわ」
遠い目で祖母は言う。
「お前は仕事どうなの?日本はどうだい?」
ニヤリとして祖母は尋ねてきた。
「仕事はもう環境にも慣れました。住みやすくて良いところです」
にっこり笑って一夜は答える。
「こっちでひ孫は出来そうかい?」
祖母は楽しんでいる。一夜は苦笑い。
「いずれアメリカに帰りますから、日本では無理ですね」
由紀子との子供をつい想像してしまった。無理だと打ち消す。
「日本の女は良いわよ」
真顔で言う祖母に一夜は笑った。
「おじいさんを見てるから分かります」
一応、祖母の顔を立てた。
「アンソニー。一度失敗したからって逃げたらだめよ。欲しいと思ったら、全力で奪い取りなさい」
祖母の言葉にギクリとした。
まるで今の状況を知っているかの助言だった。
「さあ、お前ももっと呑んで食べなさい。どうせ毎日ろくなもの食べてないでしょ」
豪快な祖母に一夜は久し振りに癒された。
土曜日の朝、目覚めるとメールに気が付いた。
【ハーイ!アンソニー。私も日本に来てるのよ。箱根なんて何十年ぶりかしらね。暇ならお前もおいで】
イギリスにいるはずの祖母が箱根に来ていた。
なんでも、サバティカル休暇を取って、日本の経済を研究する目的で日本に来たと言う。
「まったく、おばあさんはいつも突然だ。日本にはどれくらい滞在するつもりですか?」
旅館は離れの一番良い部屋で、障子の向こうに露天風呂まで付いていた。
「ビザの要らないの期間までね。昨日成田に着いてすぐ箱根に来たんだよ。月曜から西へ向かって沖縄まで行って、日本海側から北海道へ。その後太平洋側から東京へ。12月にまた会えるよ」
にっこり祖母は笑う。
「秘書のマークは?」
「もちろん一緒よ。看護師も同行させてるから安心して。お前が日本に行って、私も生まれ故郷が恋しくなったわ。実家にも寄るつもり。お墓参りしたいからね」
綺麗な箸づかいで料理を食べながら祖母は言った。
「80年あっという間だったわ」
遠い目で祖母は言う。
「お前は仕事どうなの?日本はどうだい?」
ニヤリとして祖母は尋ねてきた。
「仕事はもう環境にも慣れました。住みやすくて良いところです」
にっこり笑って一夜は答える。
「こっちでひ孫は出来そうかい?」
祖母は楽しんでいる。一夜は苦笑い。
「いずれアメリカに帰りますから、日本では無理ですね」
由紀子との子供をつい想像してしまった。無理だと打ち消す。
「日本の女は良いわよ」
真顔で言う祖母に一夜は笑った。
「おじいさんを見てるから分かります」
一応、祖母の顔を立てた。
「アンソニー。一度失敗したからって逃げたらだめよ。欲しいと思ったら、全力で奪い取りなさい」
祖母の言葉にギクリとした。
まるで今の状況を知っているかの助言だった。
「さあ、お前ももっと呑んで食べなさい。どうせ毎日ろくなもの食べてないでしょ」
豪快な祖母に一夜は久し振りに癒された。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
32
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる