長い夜、蒼い月

五嶋樒榴

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深い眠りからの目醒め

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由紀子が洋輔と会った次の日の夜、一夜はジェイクの部屋にいた。
優姫はわざと席を外した。一夜がどうしてもジェイクとだけ話をしたそうだったからだ。

「そうか、由紀子も離婚を決意したか」

ジェイクは複雑だった。
一夜の離婚の原因は、妻を寝取られたのが原因だったのに、今度は一夜が寝とった形になったからだ。

「ただ、その離婚が今複雑になってる。由紀子の旦那も浮気をしていて、その現場を由紀子が見てしまった。女を家に連れ込んでいたらしい」

一夜の告白に、ジェイクはびっくりして目を見開く。

「ちょっと、待てよ。なにそれ、意味がわからん!」

混乱するジェイク。

「僕も急に話の矛先が変わってどうすれば良いのか分からない。由紀子は、旦那に離婚だけ求めて他はなにも望んでいない。僕とのことがバレてはいないが、自分だって僕との関係があるから、なるべく早く決着つけたいからと」

複雑だが、お互い不倫しているなら、離婚も否めないとジェイクも理解した。

「この先どうなるんだ?」

ジェイクは一夜が心配だった。また会えなくなって、栞に走るのではと懸念した。

「離婚が決まるまで待つと由紀子と誓った。万が一調停になって長引いても待つつもりだ。例え会えなくても僕の気持ちはもう由紀子だけだ」

一夜の言葉に引っかかって気になることをジェイクは聞いた。

「前に言っていた紫の君は?」

ジェイクの言葉に一夜は始めなにを言っているのか気づかなかった。

「あー、栞のことかい?」

やっと気づいて一夜は笑う。ジェイクはその後どうなったのか知らないので気になった。

「もう別れてるよ。彼女はちゃんとした恋をしている。その恋がどうなってるかはもう分からない。連絡先を全て絶ったから」

それを聞いてジェイクは安心した。

「でも、今度の日曜日までどうなるか分からないだろう?大丈夫か、寂しがりやのアンソニー」

ジェイクの言葉に一夜は吹いた。

「もう大丈夫。寂しくないよ。会えなくても声は毎日聞いてる」

清々しい顔で一夜は言う。

「それよりお前こそどうするの?いつまでこんな生活続けるの?お前達はいつでも結婚しようと思えばできるでしょ?」

一夜に言われジェイクは照れる。

「ユーキの母親と兄貴は賛成してくれると思うが、父親を攻略しないと。外務省の外交官で今、ナイジェリアにいるんだけど、かなり厳しい人らしい」

優姫の父親がとんでもない相手だったようで、ジェイクは攻略の仕方を今綿密に詰めていると言った。

「頑張れ」

一夜は笑った。
        
「さて、ジェイクを独占してると奥さんに怒られるから僕は帰るよ。話聞いてくれてありがとう」

茶化しながら一夜は言った。ジェイクは照れ笑いをする。
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