優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

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その罪を許せるか許せないか

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夕飯を食べ終えて、美紅は千秋に食後のお茶を淹れた。
しばらく沈黙してお互いにお茶を啜る。
美紅は一切千秋を見ないが、千秋は話しかけるタイミングを窺っていた。

「久しぶりに、美紅の顔が見れて本当にホッとした。ここを出て行った時より、顔色も良くなって良かった」

千秋は美紅が出て行った時を思い出しながら口を開いた。

「シェアハウスのみんなはとても良い人たちよ。余計な詮索をしないで私を受け入れてくれてる。亘理君にも感謝してる」

俯き加減で微笑みながら美紅は言う。
その表情に千秋は胸がズキズキする。
自業自得なのは分かっているが、美紅と再び元の生活に戻りたくて仕方ない。

「本当に、謝るだけじゃダメなのは分かってる。でもごめん。本当にすまないと思ってる。これからは美紅に信用される人間になる。何があっても美紅だけを愛し続ける。俺に必要なのは美紅だけだ。美紅をまた守っていきたい」

千秋がどれほど後悔しているかは美紅もよく分かっている。
どうせならこんな姿は見たくなかった。

「今日直ぐに結論を出す為に帰ってきたわけじゃないから。千秋さんとまた本当にわだかまりなく生活ができるのか、元の生活に戻れるのか考えたいの。まだ許せないから」

美紅が言いたいことも十分に分かる。
それでもこうして、たとえ週末だけでも帰ってきてくれるなら、その時間を大切に過ごしたいと思った。

「俺、この生活から二人の関係を修復したいって考えてる。時間がかかっても、美紅が笑顔になれるようにしたいって思ってる。もう絶対美紅を悲しませない。だから、俺のことを少しでもまだ好きなら、俺のそばにいてください」

千秋は深々と頭を下げた。
美紅はその姿を見て、苦しくて悲しかった。
憧れと尊敬で見ていた愛する人の、こんな姿は二度と見たくないと思った。

「あの人とのことはもう考えたくないから謝らないで。千秋さんが言う通り、私達がこの先修復できるのか、それだけを考えよ」

「……ありがとう。本当に、ありがとう」

胸がいっぱいになって、千秋はそれしか言葉が出ない。
もちろんずっと謝罪していく人生になるだろうが、美紅の前では謝罪ではなく、感謝の気持ちを持とうと思った。

「先にお風呂どうぞ。私、キッチンを片付けるから」

美紅は立ち上がると、湯呑みを持ってキッチンへ移動した。
千秋も立ち上がるとバスルームへ向かった。
千秋の姿が見えなくなると美紅は深いため息をつく。
怒りと悲しみの感情が噴き出してくる。
それでも今ここに戻ってきたのは、まだ千秋を愛しているから。
千秋の涙を見た時、本気で後悔している姿に、もう許しても良いのかと思ってしまった。
でも、まだ美紅の心には美奈子が引っかかる。
美奈子の存在を消せない以上、千秋を受け入れることは無理だと分かった。
その夜、別々の寝室で寝る美紅の元へダメ元で千秋がやって来た。

「美紅、もう、寝てる?」

美紅は寝たふりをして千秋を受け入れなかった。
まだ千秋を好きだと愛情は残っているが、どうしても千秋に触れられたいと美紅は思わなかった。
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