田辺君はずるいから

7ずるい・好きになってる

2

「やだなぁ。別に叩いたりしませんよ。ご飯粒付いてたんです。子供っぽい」

クスッと笑ってそのご飯粒を田辺は口に入れた。
ビクッとしたのは恐怖心じゃなかった。
田辺に触れられただけで、キュンとなってドキドキした。


俺……………。
田辺の彼女に嫉妬してるんだ。
俺、田辺のこと、好きになってる。


田辺は残りの親子丼を最後まで綺麗に食べ終えた。
諭は田辺をついジーと見つめてしまっていた。

「諭先輩？」

田辺の声に諭はハッとする。

「へ？あ、何？」

我に帰って田辺をちゃんと見る。

「ごちそうさまって言ったんです。全く、諭先輩は、何考えてるか分からない人だな」

呆れながら笑う田辺。

「俺こそ、お前が何考えてるか分からねーよッ！」

プンプンしながら諭が言うと、田辺は口に握り拳を当てて笑う。

「そうやって直ぐムキになる。諭先輩、本当に可愛いっすね」

年下の田辺に可愛いと言われて、悔しいはずなのに嬉しくて顔がにやけそうになった。