田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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11ずるい・初飲み

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風呂から上がり、諭はモジモジしながらスウェット姿で田辺の前に現れた。
宅急便で届いたコンドームが気になってしまう。

「上がりました?何か飲みます?」

諭の横を通り過ぎて冷蔵庫を開ける。

「ビール飲みたい」

「ビールっすか。買ってきてないや。買って来ましょうか?」

田辺がジッと諭を見る。

「じゃあ、俺が下のコンビニで買って来るよッ!」

見るからに焦っている諭。
この先を考えるとビールでも飲まないと落ち着かない。

「諭先輩をもう今夜はこの部屋から出したくないです。帰ったら困るから」

田辺の静かな口調に、諭の心臓はドキドキしすぎてもちそうになくなる。

「…………じゃあ、買ってきて、ください」

素直に頼む諭。
真っ赤になって、ずっとモジモジしている姿に田辺はクスリと笑う。

「いってきます。あまり緊張しないでください」

諭のまだ少し湿っている髪にキスして田辺は部屋を出て行った。
キスされた場所を諭は手で押さえる。

「そ、そう言う、そう言う事すっから、緊張すんだろッ!」

恥ずかしくて堪らなくて、もう姿が見えないのに田辺に大声で叫ぶ。
田辺は玄関を出て、クスクス笑いながらエレベーターに向かった。
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