すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第十一話

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いつものように絢斗と帰る茉理。
その前に現れたのは、茉理と同じ保健委員だった。

「あれ?久住君?」

茉理が声をかけると、久住くずみ向葵あおいは茉理を見た。
1年生だが茉理よりも背が高く、クールなイメージのイケメン。

「あ、茉理先輩」

茉理先輩と下の名前呼びに、絢斗はピクンと反応する。

「茉理、誰?」

絢斗が茉理に尋ねる。

「同じ保健委員の久住君だよ。1年生」

茉理が向葵を紹介する、向葵はにっこり笑って絢斗に会釈をする。

「茉理先輩も今帰るところなんですね。あ、明日、保健室の掃除当番ありますからね」

向葵が言うと茉理は微笑む。

「うん、覚えてるよ。また、明日ね」

茉理がそう言って手を振ると、向葵は再び頭を下げた。
しばらく歩いていたが、絢斗は気になって仕方ない。

「なんかさ、下の名前呼びってどうなん?」

ムッとしながら絢斗は言う。

「ん?変かなぁ。久住君とは話しやすいから、委員会でもよく話すから、向こうも親しみを込めて名前で呼ぶんだと思うけど?」

別に深くは考えてきない茉理。絢斗は面白くない。

「へぇ。なんか仲良さそうだなぁ。あいつもお前にニコニコしてたしな」

嫌味を込めて絢斗は言う。

「うん、とっても良い子だよ」

茉理は何も気にせず笑顔で話す。

「へぇ。良い子ねぇ。まぁ、所詮後輩だし、委員会で会うだけだろうしぃ。って、明日保健室の当番とか言ってたな」

滅茶苦茶気にする絢斗に全く気がつかない茉理。

「うん。明日俺の番なんだ。久住君と一緒なんだよ」

保健室の掃除当番と聞いて、絢斗は茉理の腕を掴む。

「さっきの1年と2人っきりか?」

鬼気迫る絢斗に茉理はキョトンとする。

「3人1組だから、2人きりではないけど?」

何をそんなに絢斗が焦ってるのか意味が分からない茉理。

「保健の先生もいると思うし」

人数を聞いて絢斗はひとまず安心した。

「まぁ、それなら頑張れ。って掃除は放課後だろ?どれぐらいやるんだ?」

「んー。30分ぐらい?俺も初めてだからわかんない」

それくらいなら待ってるかと思う絢斗。
万が一、茉理と向葵が一緒に帰るかもと想像したら恐ろしくなった。

「時間潰してるから、終わったら一緒に帰るぞ」

絢斗はそう言って茉理の髪を撫でる。茉理は真っ赤になる。

「う………………うん」

まだ恋人だと言う自覚があまり無いので恥ずかしくなる茉理。

「今日はどっちの部屋で勉強する?期末も近いしさ」

そうだったと茉理は現実に戻される。

「そうだ!期末!部屋はどっちでも良いけどちゃんと教えてー!物理苦手ぇ」

泣きそうな顔の茉理が可愛くて仕方ない絢斗。

「はいはい。徹底的にシゴいてやる」

「お手柔らかにお願いしまーす!」

絢斗がスパルタなのはよく分かっているので、少し怖い茉理なのだった。
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