57 / 85
第十一話
2
しおりを挟む
次の日、茉理が保健室に入ると、向葵はもう到着していた。
「あれ?もう1人はまだ?」
茉理が尋ねると、向葵は茉理を見た。
「まだですね。どうします?待ちますか?」
茉理は時計を見る。
遅くなって絢斗を待たせるのも気が引けた。
「先生はいないんだ」
茉理が養護教諭がいないことに気がついた。
「もう職員会議の時間みたいですよ。掃除が終わったら、適当に帰って良いって言ってました」
「じゃあ、さっさと終わらせちゃおう」
茉理がそう言うと、向葵も掃除機を出してきて素早く掃除を始める。
茉理は机や棚、窓の雑巾掛けを始めた。
ふたりは黙々と作業をこなしていく。
「ベッドのシーツ交換とかもするのかな」
ロッカーを覗いて、ビニールに入っているシーツを出しながら茉理は言う。
「汚れてないから良いんじゃないんですか?先生がやってくれそうだけど」
向葵がそう言うので、茉理も納得してシーツの交換はやめた。
「掃除ってこんなもんで良いんだよな。初めてだからわかんねーわ」
「そうですね。良いんじゃないですか?」
ふたりは保健室を見渡して、掃除当番表にそれぞれ名前を書いた。
「今日来なかったやつ、次回に参加するように申し送りしておくわ」
記録ノートに茉理はそれを書き込む。
「じゃあ、お疲れさんな」
茉理が向葵に向かって言うと、向葵は茉理の前に立った。
「ゴミ、付いてますよ」
向葵が茉理の髪に付いている綿埃を指で摘んだ。
「あ、本当だ。ありがとう」
茉理が笑顔でお礼を言うと、向葵も爽やかな笑顔で笑う。
「いえ。茉理先輩って可愛いですね」
突然何を言い出すのかと、茉理は聞き間違えかと焦る。
「え?あのッ」
気まずくなり茉理は後ろに下がった。
「委員会で初めて会った時から思ってました。可愛いなって」
向葵が近づいてくるので、茉理はなんとなくヤバいと思った。
「今日、茉理先輩とふたりきりになりたくて、もう1人には今日は中止になったって伝えたんです。保健の先生も、この時間に職員会議があるの分かってたし」
この状況はヤバいと茉理でも理解ができた。
いつも委員会でも隣に座るなとは思っていたが、こんな下心があったのかと茉理は焦る。
「待って、久住君は何がしたい訳?揶揄うのはやめてくれよ」
どうにかして逃げなければと、茉理は後ろに下がりながらドアへ向かう。
「揶揄う?茉理先輩ともっと仲良くなりたいなって思ってるだけですよ?」
向葵の言葉にどう反論して良いか分からない。
「いつも柳井先輩とずっと一緒だから、近付くことができなかったので、この日を待っていたんです。茉理先輩。俺と」
「わー!ストップ!それ以上言わないで!」
茉理は大声で向葵の言葉を遮る。
自分でも顔が熱くて、恥ずかしくて、向葵が怖かった。
「………………やっぱり、ダメですか?」
シュンとなる向葵。
「やっぱり俺が後輩だからですか?」
更にシュンとなる向葵。
「あ、そう言うことじゃなくてッ!おかしいだろ?男同士で、そんなさ、そのッ!」
「どうしてですか?仲良くしたいのに、男同士とかって関係ありますか?」
そう言われては茉理としては、ぐうの音も出ない。
実際自分は絢斗と付き合っているのだ。
「ずっとこの数ヶ月、茉理先輩だけを見てきたのに」
悲しそうに向葵は言う。茉理もつい罪悪感を感じる。
「………………ごめん。俺、その………………」
絢斗が恋人だと言ってしまおうか悩む。
でも、余計に嫉妬されるのも困ると茉理は考える。
「………………やっぱり、年下とは無理なんですね。柳井先輩もいますもんね」
ガッカリしながら向葵は言う。茉理はなんて言って良いか頭の中がグルグルする。
「残念です。茉理先輩ともっと親しい友達になりたかったけど、年下の友達なんて、やっぱり無理ですよね」
ん?
友達?
「先輩後輩とかじゃなく、もっと親しい間になりたかったけど。一緒に遊びに行ってみたいなって」
悲しそうに照れ笑いをする向葵。
茉理は勝手に愛の告白だと思っていたので、恥ずかしくなって真っ赤になる。
「あ!ごめん!そう言う意味ね!あ!うん!分かった!大丈夫!」
焦りながら茉理は向葵の両腕を握る。
「うん!友達になろう!先輩後輩とか、そういうのは、どうでも良いよ!仲良くなろうね!」
茉理が必死になって言うと、向葵はクスリと笑う。
「良かった。嬉しいです。よろしくお願いします。俺のことも、向葵って下の名前で呼んでくださいね」
にっこり笑う向葵。茉理も笑顔で頷く。
茉理はとんでもない勘違いをするところだったとホッとする。
向葵はそんな茉理を見つめてふふふと笑った。
「あれ?もう1人はまだ?」
茉理が尋ねると、向葵は茉理を見た。
「まだですね。どうします?待ちますか?」
茉理は時計を見る。
遅くなって絢斗を待たせるのも気が引けた。
「先生はいないんだ」
茉理が養護教諭がいないことに気がついた。
「もう職員会議の時間みたいですよ。掃除が終わったら、適当に帰って良いって言ってました」
「じゃあ、さっさと終わらせちゃおう」
茉理がそう言うと、向葵も掃除機を出してきて素早く掃除を始める。
茉理は机や棚、窓の雑巾掛けを始めた。
ふたりは黙々と作業をこなしていく。
「ベッドのシーツ交換とかもするのかな」
ロッカーを覗いて、ビニールに入っているシーツを出しながら茉理は言う。
「汚れてないから良いんじゃないんですか?先生がやってくれそうだけど」
向葵がそう言うので、茉理も納得してシーツの交換はやめた。
「掃除ってこんなもんで良いんだよな。初めてだからわかんねーわ」
「そうですね。良いんじゃないですか?」
ふたりは保健室を見渡して、掃除当番表にそれぞれ名前を書いた。
「今日来なかったやつ、次回に参加するように申し送りしておくわ」
記録ノートに茉理はそれを書き込む。
「じゃあ、お疲れさんな」
茉理が向葵に向かって言うと、向葵は茉理の前に立った。
「ゴミ、付いてますよ」
向葵が茉理の髪に付いている綿埃を指で摘んだ。
「あ、本当だ。ありがとう」
茉理が笑顔でお礼を言うと、向葵も爽やかな笑顔で笑う。
「いえ。茉理先輩って可愛いですね」
突然何を言い出すのかと、茉理は聞き間違えかと焦る。
「え?あのッ」
気まずくなり茉理は後ろに下がった。
「委員会で初めて会った時から思ってました。可愛いなって」
向葵が近づいてくるので、茉理はなんとなくヤバいと思った。
「今日、茉理先輩とふたりきりになりたくて、もう1人には今日は中止になったって伝えたんです。保健の先生も、この時間に職員会議があるの分かってたし」
この状況はヤバいと茉理でも理解ができた。
いつも委員会でも隣に座るなとは思っていたが、こんな下心があったのかと茉理は焦る。
「待って、久住君は何がしたい訳?揶揄うのはやめてくれよ」
どうにかして逃げなければと、茉理は後ろに下がりながらドアへ向かう。
「揶揄う?茉理先輩ともっと仲良くなりたいなって思ってるだけですよ?」
向葵の言葉にどう反論して良いか分からない。
「いつも柳井先輩とずっと一緒だから、近付くことができなかったので、この日を待っていたんです。茉理先輩。俺と」
「わー!ストップ!それ以上言わないで!」
茉理は大声で向葵の言葉を遮る。
自分でも顔が熱くて、恥ずかしくて、向葵が怖かった。
「………………やっぱり、ダメですか?」
シュンとなる向葵。
「やっぱり俺が後輩だからですか?」
更にシュンとなる向葵。
「あ、そう言うことじゃなくてッ!おかしいだろ?男同士で、そんなさ、そのッ!」
「どうしてですか?仲良くしたいのに、男同士とかって関係ありますか?」
そう言われては茉理としては、ぐうの音も出ない。
実際自分は絢斗と付き合っているのだ。
「ずっとこの数ヶ月、茉理先輩だけを見てきたのに」
悲しそうに向葵は言う。茉理もつい罪悪感を感じる。
「………………ごめん。俺、その………………」
絢斗が恋人だと言ってしまおうか悩む。
でも、余計に嫉妬されるのも困ると茉理は考える。
「………………やっぱり、年下とは無理なんですね。柳井先輩もいますもんね」
ガッカリしながら向葵は言う。茉理はなんて言って良いか頭の中がグルグルする。
「残念です。茉理先輩ともっと親しい友達になりたかったけど、年下の友達なんて、やっぱり無理ですよね」
ん?
友達?
「先輩後輩とかじゃなく、もっと親しい間になりたかったけど。一緒に遊びに行ってみたいなって」
悲しそうに照れ笑いをする向葵。
茉理は勝手に愛の告白だと思っていたので、恥ずかしくなって真っ赤になる。
「あ!ごめん!そう言う意味ね!あ!うん!分かった!大丈夫!」
焦りながら茉理は向葵の両腕を握る。
「うん!友達になろう!先輩後輩とか、そういうのは、どうでも良いよ!仲良くなろうね!」
茉理が必死になって言うと、向葵はクスリと笑う。
「良かった。嬉しいです。よろしくお願いします。俺のことも、向葵って下の名前で呼んでくださいね」
にっこり笑う向葵。茉理も笑顔で頷く。
茉理はとんでもない勘違いをするところだったとホッとする。
向葵はそんな茉理を見つめてふふふと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《根暗の根本君》である地味男である<根本 源(ねもと げん)>には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染<空野 翔(そらの かける)>がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる