すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第十一話

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サンダーズに到着して、それぞれは商品を買うと席に着いた。

「サンダーズのホットドッグって初めて見た!美味しそうだね」

向葵が注文したのは、ピクルスとオニオンがたっぷり乗ったホットドッグだった。それとオニオンリングとコーラのLサイズ。

「ソーセージがプリプリで美味しいですよ。一口食べます?」

笑顔で向葵がホットドッグを茉理に差し出す。

「へぇ。美味そうだな。俺にも一口くれよ」

そう言って絢斗が横取りして、向葵が口を付けたところをパクッと一口食べる。

「うん、うまっ」

モグモグしながら向葵の顔をニヤリとして見る絢斗。
向葵も流石に絢斗がした事は予想外で、内心舌打ちした。

「茉理も貰えば?」

一口がデカい絢斗に茉理は恐縮する。

「あ、良いよッ!向葵君の分、減っちゃうし」

「どうぞ、気にしないで食べてください」

向葵は笑顔で茉理に言う。

「あ、じゃあ、俺のも、食べてみる?」

気を遣って茉理が、食べかけのハンバーガーを向葵に差し出すと、絢斗は凄い形相で向葵を睨む。

「…………………あー、大丈夫ですよ」

遠慮する向葵。

シーンとなる3人。

「…………………俺、ちょっとトイレ」

雰囲気に堪らず茉理が席を立った。
向葵は笑顔で茉理を送り出す。

「…………………思った以上に嫉妬深いですね。メンドクセー」

向葵は吐き捨てる。

「ちょっかい仕掛けて来るやつは徹底的に排除するタチなんでね」

頬杖をついて睨みながら絢斗は言う。

「そこはきっちりお前に分からせておかないとね。それが恋人とダチの違いだろ?」

絢斗が言うと向葵はふふふと笑う。

「そうやってムキになるって事は、俺はライバル認定されたんだ。ラッキィ」

向葵の言葉にイチイチ苛々する絢斗。

「なーにがダチで良いって?本性剥き出しのくせしてよ。お前が茉理をどう思おうと、茉理は俺のモンだ」

「…………………あまり嫉妬深いのもどうかと?まぁ、俺は俺のしたいように茉理先輩と仲良くさせてもらいますから。俺は友達、ですから」

バチバチと睨み合う絢斗と向葵。
その光景を遠くから眺める茉理。


なんだろう。絢斗の奴。
向葵君のホットドッグ食べたり、俺が向葵君にハンバーガーあげるのムキになって阻止したり。
でも、今はすっごい見つめ合ってるし。
……………。
あ!
もしかして、絢斗!
嫉妬してたの?
俺が向葵君と仲が良いから!
もしかして、向葵君が気になってるの?
そんな……………。
絢斗を向葵君に取られちゃうの?!


ふたりを見つめながら、勝手に勘違いして焦る茉理だった。
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