インシデント~楜沢健の非日常〜

五嶋樒榴

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●100万分の1●

3-2

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仕事を終え、真古登は菜々緒と暮らすアパートに帰り着き玄関を開けた。
玄関の履き出しまで、ペットボトルが入った袋が押し寄せており、部屋の中も散らかり放題でゴミが散乱していた。

「くそッ!」

足元にあるゴミの入った袋を蹴り、真古登は何とか部屋に辿り着いた。
買って来た弁当の入った袋を、空き缶やペットボトルだらけのテーブルの上に置くと、ネクタイを緩めてため息をつく。

「あのアマ、どこに逃げやがった」

真古登は怒りを滲ませた目を見開き、菜々緒の顔を思い浮かべて呟く。
菜々緒が出会い系を始めて数ヶ月経って、突然真古登の前から姿を消した。
勤めていた、コーヒーショップも無断欠勤のままスマホも全く繋がらない。
菜々緒が今どこにいるのか、真古登には全く見当がつかないのだ。
真古登は、菜々緒は出会い系で知り合った男と良い仲になり逃げたと思っている。
自分との生活に嫌気がさしたのは想像できた。それでも上手く飼い慣らしていたと油断していた。
金蔓にしていた菜々緒が姿を消した事で、真古登は金策に困ってしまった。
あちこちに借金をして、好き勝手に使いまくっていた金の返済を自分1人でやりくりするのはもう限界に来ていた。
このアパートは会社から借りているので、給料天引きになっていたので家賃を滞納する事はないが、家賃を含む生活費全額を菜々緒が真古登に現金で渡していたので、菜々緒が当てにならなくなった以上、菜々緒か別に貢いでくれる女が見つかるまでは、実家に頼るしかないかと頭を抱える。

「くそッ!くそッ!見つけたらただじゃおかねーぞ」

腹を立てながらも、真古登は買って来た弁当をかきこみ始めた。
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