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●100万分の1●

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菜々緒が逸郎と出会ったのは、菜々緒が真古登からパパ活を強要され、何人かの男と出会った後だった。
今まで選んで出会った男達と同じで、性的関係を強要してくる感じもなく菜々緒はホッとした。

「俺さ、見た目こんな感じだし、彼女って今までいた事もなくてさ」

恥ずかしそうに初めての出会いで逸郎は言った。
確かにイケメンとは言えなかったが、逸郎の事は生理的に苦手なタイプではなかった。
37歳と言うのも、見た目通りだと感じた。

「俺の名前も教えてるし、マリンちゃんの本名、そろそろ教えてほしいな」

何度かデートをして逸郎は菜々緒に尋ねた。
菜々緒も下の名前だけなら教えても良いかなと思うほど、逸郎には警戒心がなかった。

「良いですよ。菜々緒って言います」

「菜々緒ちゃんか。可愛い名前だね。顔も可愛いし、ピッタリだね」

褒められて菜々緒は照れる。

「そうだ、今度群馬県の草津に行ってみない?」

「草津?」

「俺の地元なんだ」

地元と言われて菜々緒は警戒する。
知り合いに恋人だと紹介するつもりかと固まる。

「え、と。あまり遠出は……」

菜々緒はやんわりと断る。

「……そうだよね。ごめんね、調子乗って」

逸郎がガッカリすると、菜々緒は申し訳ない気持ちになってきた。

「あの……今までみたいに、都内でデートなら大丈夫ですから」

「うん!ありがとうね」

デートと言ってもタダではない。
こうして数時間をお金で買っているわけだから。

「これからも、いっぱいデートしようね」

「……はい」

逸郎は今まで働いていたお金を菜々緒に注ぎ込んだ。
それがそのまま真古登の物になっているとも知らずに。
そうして逸郎は、菜々緒に対して紳士的に振る舞い続けて信用を得ていった。
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