悪夢で視る人――それは俺だけが視ることのできる、酷く残酷で凄惨な個人的ホラー映画。【第二部・リテイク版】

されど電波おやぢは妄想を騙る

文字の大きさ
3 / 12
第二部 上映中

Scene 23.

しおりを挟む
「うおぉっ! ――えっ?」

 一瞬、身体が跳ねるように仰け反り、叫び声を上げながら急激に目覚めた俺。


 気づけば、乗り合いバスの中に居た。


 乗車時に腰掛けた、一番後ろの座席に座っていたのだ。

「ど、どうされました?」

 左隣に座っているのは会社員だろうか。
 俺を気遣ってか、驚きつつも心配そうに声を掛けてくれた。

「だ、大丈夫かのぅ?」

 右隣にはお婆さんが座っていた。
 左隣の会社員同様、俺を気遣って声を掛けてくれた模様。

 状況が今ひとつ飲み込めない俺がバスの車内を見渡せば、結構な人混みと言えるぐらいには乗客が乗っていた。そして皆が皆、何事かと俺を見ているわけで。

「あ、いえ……その……。わ、悪い夢を見てたみたいで……うなされたのかな? ははは……お騒がせしました。ホント、すんません」

 とりあえず居た堪れないので、ポケットからハンカチを取り出して、額の汗を拭いながら乗客に向かって平謝りをしておく。

 そのあとで、一応と言うか、念の為と言うか。左右に座るお二人をじっとみる。

「ん、コホン……」

「なんじゃ、まだ寝惚けとるんかいの?」

 会社員からは咳払いを貰い、隣のお婆さんにはまたも心配されてしまった。

「……あ。いえ、すいません」

 これ以上大騒ぎしても迷惑になるだけなので、背凭れに深く腰掛け直して静かにしておく。

(何だよこの状況は?)

 俺がバスを乗り継いだ時には、乗客何ぞ誰一人として乗ってなかった筈だ。
 転寝うたたねでもして、その間に増えた。その線も否定は出来んけども。

(それ以前に、巻き戻ってるよな?)

 そもそも俺は霊園に着いたなり、喪服女と殺し合いをやってた筈。
 そして、相打ち。殺し殺された筈。
 俺が喪服女の首を締め折り、喪服女は俺の腹に傘を突き刺さして。
 挙句に醜く歪んだ酷い顔の美杉までをも、最後に見せられて。


(なのに……乗り継いだバスの中に居て、平然としてるだと?)


 イラつく気分を抑えるついでに、現状はなのかと、膝の上で組んでいた手を崩し、自分の太腿を思いっきりつねってみる。


 うん。今度は


 と言うことは。今のバスに乗ってる現状が現実ってことになり、霊園の方での出来事が白昼夢……否。


 悪夢の輪廻に囚われていた。


 と肯定されるわけなんだが。一体、いつ切り替わった? 切っ掛けは何で何処だ? どう言う状況でそうなった?

 全くのシームレスで 場面の繋ぎ目なく切り替わる何ぞ、何処のロールプレイング・ゲーム◯ァイナル・ファンタジ◯やっつーの。
 まるで狐に摘まれたか、狸に化かされた感覚だっつーの。

 思案を巡らして状況を把握することに努めていた俺は、俯いていた顔を上げ、徐にバスの車窓から外を眺める。


 やはり出掛けた時と全く同じ。雨が燦々さんさんと降り注いでいた。


「何か心配事かい? 良かったら、これお食べさ。気分が落ち着くでよ?」

 そう言って蜜柑みかんを差し出してくれた、右隣に座る見ず知らずの優しそうなお婆さん。
 腑に落ちず落ち着かない俺を気遣ってくれてるのだろうな――人の温もりには、毎度、絆される。

「すいません。では遠慮なく」

 お婆さんの心遣いがとても嬉しくて、遠慮なく受け取った。

(これはまた……)

 戴いた蜜柑は、お婆さんの優しい人柄が現れているかのような、それはもう見事なものだった。

 バスに揺られて転寝うたたねでもして、単に悪夢を見ていただけってのか、俺は? ちょいと神経質になり過ぎてただけ?


 だったら阿呆――つーか、相当に無様だよな。


「遠慮さ要らね。見つめとらんで食いね。頬っぺが落ちるほどに甘ぇでよ」

 つい蜜柑を見つめつつ、呆けていたようだ。

「――あ、はい。では戴きます」

 遠慮してても申し訳ない。気持ちを切り替えて、快く戴くとする。

 疲れている時にはビタミンと糖分摂取。これに尽きる。
 とても蜜柑とは思えないほどに柔らかく、しっかりと瑞々しい皮を剥きながら、癒されるほどの甘さを期待した――うん、期待して損したね。
 最早、癒されるところではなく、この僅か一瞬でSAN値正気度をごっそり持っていかれたわ。


 蜜柑のは真っ黒に濁り切り、酷い腐臭を放ち、大量のうじ虫が這い出るようにウネウネと湧き出てきた。


 おののいて手を素早く離した為に、蜜柑みかんがお婆さんの足元の方へと転がっていった。
 そして腐った蜜柑が転がった先に居るお婆さんが、当然、視界に入るわけなんだが……。


「――なっ⁉︎」

 優しそうなお婆さんの顔も、蛆虫が湧きぐちゃぐちゃになって腐りきっていた――。



 ――――――――――
 気になる続きはCM広告のあと直ぐっ!
 チャンネルはそのままっ!(笑)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル

ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。 しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。 甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。 2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。

処理中です...