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第二部 上映中
Scene 23.
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「うおぉっ! ――えっ?」
一瞬、身体が跳ねるように仰け反り、叫び声を上げながら急激に目覚めた俺。
気づけば、乗り合いバスの中に居た。
乗車時に腰掛けた、一番後ろの座席に座っていたのだ。
「ど、どうされました?」
左隣に座っているのは会社員だろうか。
俺を気遣ってか、驚きつつも心配そうに声を掛けてくれた。
「だ、大丈夫かのぅ?」
右隣にはお婆さんが座っていた。
左隣の会社員同様、俺を気遣って声を掛けてくれた模様。
状況が今ひとつ飲み込めない俺がバスの車内を見渡せば、結構な人混みと言えるぐらいには乗客が乗っていた。そして皆が皆、何事かと俺を見ているわけで。
「あ、いえ……その……。わ、悪い夢を見てたみたいで……魘されたのかな? ははは……お騒がせしました。ホント、すんません」
とりあえず居た堪れないので、ポケットからハンカチを取り出して、額の汗を拭いながら乗客に向かって平謝りをしておく。
そのあとで、一応と言うか、念の為と言うか。左右に座るお二人をじっと視てみる。
「ん、コホン……」
「なんじゃ、まだ寝惚けとるんかいの?」
会社員からは咳払いを貰い、隣のお婆さんにはまたも心配されてしまった。
「……あ。いえ、すいません」
これ以上大騒ぎしても迷惑になるだけなので、背凭れに深く腰掛け直して静かにしておく。
(何だよこの状況は?)
俺がバスを乗り継いだ時には、乗客何ぞ誰一人として乗ってなかった筈だ。
転寝でもして、その間に増えた。その線も否定は出来んけども。
(それ以前に、巻き戻ってるよな?)
そもそも俺は霊園に着いたなり、喪服女と殺し合いをやってた筈。
そして、相打ち。殺し殺された筈。
俺が喪服女の首を締め折り、喪服女は俺の腹に傘を突き刺さして。
挙句に醜く歪んだ酷い顔の美杉までをも、最後に見せられて。
(なのに……乗り継いだバスの中に居て、平然としてるだと?)
苛つく気分を抑えるついでに、現状はどっちに置かれている身なのかと、膝の上で組んでいた手を崩し、自分の太腿を思いっきり抓ってみる。
うん。今度はちゃんと痛い。
と言うことは。今のバスに乗ってる現状が現実ってことになり、霊園の方での出来事が白昼夢……否。
悪夢の輪廻に囚われていた。
と肯定されるわけなんだが。一体、いつ切り替わった? 切っ掛けは何で何処だ? どう言う状況でそうなった?
全くのシームレスで切り替わる何ぞ、何処のロールプレイング・ゲームやっつーの。
まるで狐に摘まれたか、狸に化かされた感覚だっつーの。
思案を巡らして状況を把握することに努めていた俺は、俯いていた顔を上げ、徐にバスの車窓から外を眺める。
やはり出掛けた時と全く同じ。雨が燦々と降り注いでいた。
「何か心配事かい? 良かったら、これお食べさ。気分が落ち着くでよ?」
そう言って蜜柑を差し出してくれた、右隣に座る見ず知らずの優しそうなお婆さん。
腑に落ちず落ち着かない俺を気遣ってくれてるのだろうな――人の温もりには、毎度、絆される。
「すいません。では遠慮なく」
お婆さんの心遣いがとても嬉しくて、遠慮なく受け取った。
(これはまた……)
戴いた蜜柑は、お婆さんの優しい人柄が現れているかのような、それはもう見事なものだった。
バスに揺られて転寝でもして、単に悪夢を見ていただけってのか、俺は? ちょいと神経質になり過ぎてただけ?
だったら阿呆――つーか、相当に無様だよな。
「遠慮さ要らね。見つめとらんで食いね。頬っぺが落ちるほどに甘ぇでよ」
つい蜜柑を見つめつつ、呆けていたようだ。
「――あ、はい。では戴きます」
遠慮してても申し訳ない。気持ちを切り替えて、快く戴くとする。
疲れている時にはビタミンと糖分摂取。これに尽きる。
とても蜜柑とは思えないほどに柔らかく、しっかりと瑞々しい皮を剥きながら、癒されるほどの甘さを期待した――うん、期待して損したね。
最早、癒されるところではなく、この僅か一瞬でSAN値をごっそり持っていかれたわ。
蜜柑の実は真っ黒に濁り切り、酷い腐臭を放ち、大量の蛆虫が這い出るようにウネウネと湧き出てきた。
慄いて手を素早く離した為に、蜜柑がお婆さんの足元の方へと転がっていった。
そして腐った蜜柑が転がった先に居るお婆さんが、当然、視界に入るわけなんだが……。
「――なっ⁉︎」
優しそうなお婆さんの顔も、蛆虫が湧きぐちゃぐちゃになって腐りきっていた――。
――――――――――
気になる続きはCM広告のあと直ぐっ!
チャンネルはそのままっ!(笑)
一瞬、身体が跳ねるように仰け反り、叫び声を上げながら急激に目覚めた俺。
気づけば、乗り合いバスの中に居た。
乗車時に腰掛けた、一番後ろの座席に座っていたのだ。
「ど、どうされました?」
左隣に座っているのは会社員だろうか。
俺を気遣ってか、驚きつつも心配そうに声を掛けてくれた。
「だ、大丈夫かのぅ?」
右隣にはお婆さんが座っていた。
左隣の会社員同様、俺を気遣って声を掛けてくれた模様。
状況が今ひとつ飲み込めない俺がバスの車内を見渡せば、結構な人混みと言えるぐらいには乗客が乗っていた。そして皆が皆、何事かと俺を見ているわけで。
「あ、いえ……その……。わ、悪い夢を見てたみたいで……魘されたのかな? ははは……お騒がせしました。ホント、すんません」
とりあえず居た堪れないので、ポケットからハンカチを取り出して、額の汗を拭いながら乗客に向かって平謝りをしておく。
そのあとで、一応と言うか、念の為と言うか。左右に座るお二人をじっと視てみる。
「ん、コホン……」
「なんじゃ、まだ寝惚けとるんかいの?」
会社員からは咳払いを貰い、隣のお婆さんにはまたも心配されてしまった。
「……あ。いえ、すいません」
これ以上大騒ぎしても迷惑になるだけなので、背凭れに深く腰掛け直して静かにしておく。
(何だよこの状況は?)
俺がバスを乗り継いだ時には、乗客何ぞ誰一人として乗ってなかった筈だ。
転寝でもして、その間に増えた。その線も否定は出来んけども。
(それ以前に、巻き戻ってるよな?)
そもそも俺は霊園に着いたなり、喪服女と殺し合いをやってた筈。
そして、相打ち。殺し殺された筈。
俺が喪服女の首を締め折り、喪服女は俺の腹に傘を突き刺さして。
挙句に醜く歪んだ酷い顔の美杉までをも、最後に見せられて。
(なのに……乗り継いだバスの中に居て、平然としてるだと?)
苛つく気分を抑えるついでに、現状はどっちに置かれている身なのかと、膝の上で組んでいた手を崩し、自分の太腿を思いっきり抓ってみる。
うん。今度はちゃんと痛い。
と言うことは。今のバスに乗ってる現状が現実ってことになり、霊園の方での出来事が白昼夢……否。
悪夢の輪廻に囚われていた。
と肯定されるわけなんだが。一体、いつ切り替わった? 切っ掛けは何で何処だ? どう言う状況でそうなった?
全くのシームレスで切り替わる何ぞ、何処のロールプレイング・ゲームやっつーの。
まるで狐に摘まれたか、狸に化かされた感覚だっつーの。
思案を巡らして状況を把握することに努めていた俺は、俯いていた顔を上げ、徐にバスの車窓から外を眺める。
やはり出掛けた時と全く同じ。雨が燦々と降り注いでいた。
「何か心配事かい? 良かったら、これお食べさ。気分が落ち着くでよ?」
そう言って蜜柑を差し出してくれた、右隣に座る見ず知らずの優しそうなお婆さん。
腑に落ちず落ち着かない俺を気遣ってくれてるのだろうな――人の温もりには、毎度、絆される。
「すいません。では遠慮なく」
お婆さんの心遣いがとても嬉しくて、遠慮なく受け取った。
(これはまた……)
戴いた蜜柑は、お婆さんの優しい人柄が現れているかのような、それはもう見事なものだった。
バスに揺られて転寝でもして、単に悪夢を見ていただけってのか、俺は? ちょいと神経質になり過ぎてただけ?
だったら阿呆――つーか、相当に無様だよな。
「遠慮さ要らね。見つめとらんで食いね。頬っぺが落ちるほどに甘ぇでよ」
つい蜜柑を見つめつつ、呆けていたようだ。
「――あ、はい。では戴きます」
遠慮してても申し訳ない。気持ちを切り替えて、快く戴くとする。
疲れている時にはビタミンと糖分摂取。これに尽きる。
とても蜜柑とは思えないほどに柔らかく、しっかりと瑞々しい皮を剥きながら、癒されるほどの甘さを期待した――うん、期待して損したね。
最早、癒されるところではなく、この僅か一瞬でSAN値をごっそり持っていかれたわ。
蜜柑の実は真っ黒に濁り切り、酷い腐臭を放ち、大量の蛆虫が這い出るようにウネウネと湧き出てきた。
慄いて手を素早く離した為に、蜜柑がお婆さんの足元の方へと転がっていった。
そして腐った蜜柑が転がった先に居るお婆さんが、当然、視界に入るわけなんだが……。
「――なっ⁉︎」
優しそうなお婆さんの顔も、蛆虫が湧きぐちゃぐちゃになって腐りきっていた――。
――――――――――
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