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第捌章 混沌の元凶――ラプラス編。

弐佰参拾弐話 世界。

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 周囲から嫌な気配が霧散した直後、俺達は妙な場所に忽然と立たされていた。
 簡単に言うと、無機質な壁に覆われたナニもない空間に居た――は正しくないな。


 幻影で隠されていたモノが姿を現した、だ。


「流石に幻影の名は伊達ぢゃねーってか」

 婆ちゃんと出逢った時のように、壁に両腕と両脚が埋まって拘束された状態の、一見すると素っ裸な少女の姿を模した無機質な白い彫像。
 腰から上の半身を露出させて、唐突にそこの壁に在ったと言うか埋まっていたと言うか……船首像にも等しいそれが現れた。

『私は島を統括する為に組み込まれたモジュール生体部品であり、便宜上からモノリス・セカンドと呼称されています。会話に用いる言語中枢を可能な限り、そちらの仕様に合わせました』

 そしてそんなことを俺達の頭に、直接、響かせるように伝えてくるのだった。

「お前……ぢゃねーな。が俺達を?」

 たぶん婆ちゃんと同種のモノなんだろうが、と言うからには、珠玉ではないのが確定っぽいけども。

『はい。お渡ししたいモノがありました。その途中で幻惑の珠玉を名乗るラプラスに干渉され、悪意の巣窟へと書き換えられました。そこに引き込まれそうになった貴方達を、なんとか保護するように繋ぎとめました』

「干渉って、ナニ? 結局、ボク達をここへ呼んだのは……君ってことになるじゃんね?」

 少々、不機嫌な顔で、モノリス・セカンドの前に出て文句を言う未来。

『はい。私を構築する内部構造を解析され、最終的に制御を奪われました。私の制御を離れた私は、私とは相反する行動を取りました。ギリギリで極一部の私を隔離、切り離して留めました。おそらくご推察の通り、耳長美形族が切り離し分離した私でした。切り離せた私は最低限の機能しか有しておらず、意思疎通も完全ではありませんでした。申し訳ありませんでした』

「だからなのよ? あの変な言葉なのよ?」

「成るほどね。アイも合点がいったよ」

「でもさ、それにしては一生懸命、ボクらをここに誘導してなかったっけ?」

 行動に矛盾を生じる部分を、容赦なく責め立てる未来。

『はい。幻惑の珠玉を名乗るラプラスに抗うも、干渉拡大を抑えるのに精一杯でした。最終的には切り離した私自身も制御を一時的に奪われ、結果、操られてしまいました。ご迷惑をお掛け致しました。本来であれば、お渡ししたいモノを譲渡後、直ぐにこの場からご帰還願う予定でした』

「俺に渡したたかったモノ? 何ぞ?」

『はい。残念ながら幻惑の珠玉を名乗るラプラスに奪われ、既に体内に取り込まれてしまいました』

「モノの内容は何ぞ?」

『上位者権限の制御中枢を幻惑の珠玉を名乗るラプラスに書き換えられた為、最早、お伝えすることもできなくなってしまいました。申し訳ありませんでした』

「けっ、話にならんわ」

「え~っ⁉︎ それって骨折り損のくたびれ儲けじゃんっ⁉︎」

『申し訳ありませんでした』

MonolithモノリスSecondセカンド? アリサ達は帰れるのよ?」

『申し訳ありませんでした』

「もしかして……ボクらは元の世界に帰れないってこと?」

『申し訳ありませんでした』

「全く話にならんわ」

 帰還については黙秘ってか。
 ラプラスによって書き換えられた部分の影響か。

「俺からも一つ聴きたいことがある。欠陥媒体の実験についてだが、恐らく新種を創造しようとしていたんじゃねーか? ――ヒトに成り代わるモノとかをな?」

 前々から疑問に思って考えていたことを、モノは試しとちょいと質問してみることに。

「――え⁉︎」「――嘘⁉︎」「まぢで⁉︎」

「Unbelievab信じられないleなのよ⁉︎」

 まぁ……驚愕の事実なんだから、当然、驚くはな?

「流石、私の彼方でしてよ」

 約一名、ヨイショしてくれてるけど。

「ワタシ ニハ ちんぷんかんぷん デス……」

「ん!」

 約二名、お馬鹿さんも交じってんだけども。

「貴方……当てずっぽうなこと、宣――」

 婆ちゃんは驚くよりも、疑問の方が強かった模様で顰めっ面。

『はい。私と、別の場所に在るもう一つの私――モノリス・サードを利用して、新たな新種を創造しようと計画していました』

 婆ちゃんが何ぞ言い掛けた時、被せ気味に俺の問いに答えてきたモノリス・セカンド。

「当たりか」

 ただその情報がすんなり引き出せた点から、意図的に制限なしにして俺達に吐露させたっぽい。
 欠陥媒体の野郎、ナニを考えてんだ?

「貴方……まぢにナニモノなのよ? まさかとは思うけど……あっち側?」

 モノリス・セカンドが肯定した内容に驚きつつ、俺に妙なことを宣ってきやがった。

「婆ちゃんさ……あっち側ってどっち側だよ⁉︎ 俺は俺、彼方で合ってるっつーの!」

 一応、力一杯、否定しておく。

「――義兄さん、どうして解るのよ?」

 尤もなご意見で御座いますな、人外の血を受け継ぐ天才似非美幼女様は。

「それは勿論、私の! わ・た・く・しの彼方ですから!」

「ママ、パパが凄いって自慢したいのは解るけども、それは解答になってないから」

「お姉ちゃんに激しく同意」

 ヨイショしてくれる最妃に対し、珍しく真面目に正す未来とそれに同意するアイ。

「ああ、それな? モノリスがセカンドと言う名称で、かつ、別のモジュールであるサードの二つが存在してるってことと、それを用いてっつー話しから導き出すとな――」

 詳細は割愛するが、現代にも『GANsガンズ』っつー敵対的生成ネットワークと言う論理的構造が存在する。
 生成する上で騙そうとするモノと、見破ろうとするモノの相対する二つの論理を競わせる。
 すると多次元で構築された偽モノが、本モノかそれ以上のモノに生成され、生み出されると言った理論だな。

 つまり目の前にある自我を持つセカンドに干渉して半ば無理矢理に従わせ、もう一つのサードと併せて、それに近い実験を強制的に行なわせていたんだろう。

 神を自称していた欠陥媒体は、実験と言う名の布石を繰り返して膨大なデータを蓄積し、そうやって発展させた論理で新種の生命――次世代のヒトに成り得るモノを生み出そうとしていたってわけってことだ。

 自我を持つセカンドは、それに抗う為に俺達をここへと誘い利用した。
 欠陥媒体の邪魔をしてたってことだ。

 次世代のヒトに成り得るモノ――途中段階か失敗かは俺の知るところでは全くないんだが、恐らくそいつらの成れの果てが、内臓剥き出しの悍しい人為らざるモノ――つまりNoUノウ、或いは意思無き肉塊だったってオチだよ。
 大方、生体組織的謎の何ぞも、その副産物なんかじゃねーの?
 まぁ俺からしてみれば、新種を創造なんて神をも恐れぬ愚行に等しいとは思うがな?

「――と言うわけで、クモヨの今の姿も、結局、それが原因で引き起こされた、哀しい結果だったってことだろうな」

 そんな小難しいお話しをだな、例によって噛み砕いて、皆に丁寧かつ解り易~く、クソ真面目に解説してあげたわけなんだが――なぁ?

「貴方……ナニ語を喋ってるのか全然解んないわよ! アタシに解るように、もっと解り易く丁寧に教えなさい!」

「パパの話しは相変わらずで、ボクも全く解んないや……」

「ワタシ ハ ハジメカラ ちんぷんかん デス!」

「アイは……も、勿論、解ったよ?」

「アイちゃん、その間はナニなのよ? 義兄さんの言うことは、未来ちゃんにアイちゃんには難しいLogica論理的l Structur構造eなのよ? 理解できたらHorro怖いrなのよ?」

「あらあら。私の――」

「「「それはもう良いから!」」」

「ん!」

「「「貴女は論外だから!」」」

 と、これだもんな。相変わらずな反応ですこと。
 ただアリサだけは、流石に理解してくれたみたいだけど……斗家の面々は全滅って……とほほ。



 ―――――――――― つづく。
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