流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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第一幕。

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「うっ……」

 私が気がつくと、何故か身体中から悲鳴を上げていた。
 加えて、麻痺に近しい感覚が私を襲い、身体が自由に動かせない。

 視界も微睡まどろみ、輪郭程度しか解らない。
 あまり良くは見えないが、辛うじて目に入った光景から、置かれている状況が少しは理解できた。

 どうやら私は、うつ伏せに倒れて地面を見ているようだった。

 未だ自由に動かずに震える、なんとか起き上がろうとするも、何故か右側だけが持ち上がり、左側が下がる――?


 当然だった……のだから――。


 間髪入れず、私の背中に載っていた何かが、ズルリと目の前に崩れ落ちた――。


 それは目を見開き、苦悶の表情で事切れた……人だった――。


「――ヒィ⁉︎」

 大慌てて左側に横転し、仰向けになる私。

 ぼんやりと目に入った空は暗黒で染まり切り、真っ黒な雲が渦巻いているのが朧げにだが解った。
 周囲からは錆びた鉄の臭いや、火葬場独特の肉が焼け焦げる臭い。
 それら独特の嫌な臭いが、私の鼻を嫌と言うほど強烈に刺激する。

 吐きそうになるのを必死に堪え、再び起き上がろうと力を入れ左側に身体を捻るも、やはり体勢が不自然で、妙な違和感を感じた。
 体重で潰れた感覚すらも感じず、痛みすら全くない。
 本当に肩から下の左腕が欠損していることを、頭で理解する瞬間だった。


(何が起きているっ⁉︎ ――なんなんだっ⁉︎)


 やむなく右腕だけをついて身体を起こそうとして、その拍子に不意に――。


 それは……先ほど、私の背中から崩れ落ちた、事切れた人だった。
 光を失った瞳孔を見開いて、私を恨めしく見つめているのだ――。


「――ヒィ⁉︎」

 恐怖に駆られた私は、素っ頓狂な悲鳴を上げ仰向けに戻る。
 自由に動かせない脚で必死に地面を蹴り、這いずって距離を取ろうとした。
 だがしかし、直ぐに私の背に何かが当たり、それ以上は後退ることができない。
 ガクガク震えながら、恐る恐る振り返って背後を見る――。


 首から上を失って事切れた無惨な胴体が、また横たわっていた――。


「――ヒィ⁉︎ い、一体⁉︎ ななな、何がっ⁉︎ どうなってっ⁉︎」

 更に恐怖に慄き、思わず叫んでしまった私は既に発狂寸前だった。
 自由に動かない身体を無理矢理にでも動かし、数回も横転して其処からなんとか離れることができた。

 衝撃的で凄惨な光景を目にして、混濁していた意識がハッキリとし始めた。
 お陰で身体の感覚が戻ると言うか、意に沿ってなんとか動かせる程度にはなってきた。
 後ろ手に右腕をついて、上体だけをなんとか起こす。
 そして、私の目に映った私の身体――。


 中世の鎧騎士のような甲冑を身に纏った、現代では、到底、あり得ない姿だった――。


 元は真っ白だったと思しきその甲冑は、薄汚く変色してしまっていた。
 その姿で焼け焦げた土が剥き出しの地面に、無造作に脚を投げ出していたのだった。
 不可解なのはそれだけでなく――。


 胸と腹には、生きているのが嘘のような、大穴が開いていた――。


 胸は心臓を抉られたかのような大穴が無造作に口を開き、傷口の周囲には血の痕だろう……赤黒い滲みを作っていた――。

 腹の大穴からは私の内臓……腸と思しき物が飛び出てダラリと垂れ下がり、横転したことによって身体にも巻きつき垂れ広がっていた――。

「うっぷ――オェ~……ガハっ……ゲホっ」

 不覚にも自分自身の内臓を見て吐いてしまった。
 この時点で卒倒、或いは完全に狂い死にしそうだったのは言うまでもなく。
 お陰で意識も完全に覚醒し目が覚めた私は、嘔吐し汚れた口を震える右腕で拭い、恐る恐る周辺を見回し……愕然としてしまうのだった――。

 戦場跡に等しい焼け野原と、其処彼処で燻る炎に立ち昇る黒煙に――そして。


 無惨な姿と成り果てた大量の人が、事切れて横たわっていたことに――。


 言葉を失いガクガクと身体を震わせ、ただ、唖然と見ているだけだった。
 本当に、ただ、じっと見ていただけだった。


 だがしかし。
 不意に、に視線を奪われた――。


 それはこの凄惨な場所には全く不釣り合いと言っても良い、美しく燃え盛っているような、紅い山にも見える塊だった。

「――え⁉︎」

 素っ頓狂な裏声を不覚にも上げてしまう。

 何故ならば、その紅い山のような塊が……微かに上下していることに気付いたから――。

「まさか……生きて――」

 唖然としたまま口をついて出てしまった、状況からしてあり得ない言葉。
 何故に私はあの紅い山のような塊を見て、そんな馬鹿げたことを呟いたのか……自分でも解らない――。


『――貴様もな』


 唖然としている私の耳に届く言葉。
 それは……口惜しさを隠そうともしない口調で伝わってきた声。
 妙齢な女性の声のように、私に頭に、直接、響くように届いたのだった――。

(事切れて横たわっている人の中に、まだ生きている女性が混じっているのだろうか?)

 何が何だか解らないままに視線を泳がせ、近くから順に一人一人を注視し確認していると――。


『何処を見ている――貴様』


 またしても私の頭に届く妙齢な女性の声は、口惜しさがなくなり、いきなり高圧的な口調に変わった――。

「――だ、誰ですかっ⁉︎ 何処に居るっ⁉︎」

 意識だけは覚醒しているものの、身体は未だ痺れに近い感覚が残っていて自由に動かせない。
 上体だけをなんとか起こして座ると、何処に居るのか解らない女性に向けて、大声で問い掛けたるのだった。


『何処も何も――わしろうが!』


 苛立ったように荒い口調で響く、妙齢な女性の声――。

「――は?」

(目の前に居るって? ……もしかして、あの紅い塊の下敷きにでもなってるのかっ⁉︎)

 目を凝らして紅い塊の方を注視する、その時だった――。


 紅い山が動く。
 ゆっくりと持ち上がり、伸びていく長い首。
 爬虫類に似た独特の雰囲気を持つ、瞳孔が縦に細い金眼を私に向けた――。


「――ドラゴン……だと⁉︎」

 その凶悪な視線を向けられて、怯えるよりも先に驚いてしまった。
 竜なんて実在するわけがない!
 空想上の生物でしかない筈だ!
 蜥蜴のような鱗を纏っている目の前の巨大な生物が……竜だなんて――信じられるわけがない。

『貴様――その状態で何故に生きておる? 魔法か魔導具の類いか? ――不浄の者でもあるまいし、不死など聴いて呆れるぞ?』

 今度は高圧的ながらも、やや小馬鹿にしたような口調で問い掛けてきた。


 正直に言おう。
 この瞬間、最早、混乱し過ぎて思考が定まらなかった。
 私は悪い夢でも見ているのだろうかと、ただ唖然と目の前の紅き竜を見るだけで精一杯だった。

 そう。考える力も気力も殆どなかった……筈だった――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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