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第三幕。
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『其方、今……儂に何をしでかした?』
「いや、特に何も。ただ触れただけだが? 突然、光ったのには私も驚いたが……貴女がしでかしたのでは――ない?」
怪訝そうな私と、金眼を細めて首を傾げる紅き竜。
互いの顔を見合わせて暫し考える。
『ふむ。……其方、どうやらただの阿呆の子ではないの? 儂と其方自身が思っている以上に滑稽な存在やも知れぬの? 今の輝きが意図せぬこととはいえの? ――実はな、儂の傷が完全に癒えた――今の一瞬で』
長い首を傾げて、独特の金眼を細めたまま、不思議そうな口調で伝えてきた紅き竜。
「なっ⁉︎――どう言うことだっ⁉︎」
当然、何をやらかしたかすら解っていない私は、紅き竜に質問で返した。
『儂の知るところではないわっ! だがしかし、これだけは言えるぞ? この世界に存在する貴重な万能薬を、遥かに凌駕する効き目であったのだけは間違いない』
独特の金眼をカッと見開き、目と鼻の先で大口を開け吼える紅き竜。
「……意味が解らん。私の右手――特に変わった様子は見て取れないが? もう一度、触れてみれば解るか――」
紅き竜が伝えてきた内容が信じられず、もう一度、同じように触れてみた私だったが、残念ながら何も起きやしない――。
『――なんと摩訶不思議な。だがしかし結果がどうあれ、命までも救われたのは事実。ゆえにその恩義に儂も恩義で応えねばならなくなったの。……良い、予定通り、儂の住処を提供してやるとしよう。但し、儂と棲むではなく、住むことにはなるがな?』
クイッと長い首を捻り、私の真正面で見据える紅き竜。
気の所為か……笑っているように見えた。
「私はそれで構わない。……寧ろ、ちょっと嬉しいかもだぞ?」
私も笑い返し、目の前の紅き竜の巨大な顔の鼻先に軽く触れて、肯定の意を伝えた。
相手が空想上の生き物で巨大な竜だと言うのに、この時には既に恐怖する心はなくなっていた。
絶世の美女と同居できるので有れば、普通は喜んで当たり前。
元が竜だと知っていなければ、確実に諸手を上げて素直に喜んでいたところだ。
『正直で何よりだ。――では、ぼちぼち参ろうか』
「宜しく頼む」
今度は私が乗り易いようにと、地面に頭を置いてくれた紅き竜。
それでもだ、巨大過ぎてよじ登るのには苦労するな思った矢先、翼を下げてスロープを作ってくれた存外に優しい紅き竜。
お陰で難儀することなく、すんなりと首に乗ることができた。
『では、行くぞ』「ああ」
背中の大きな翼を広げて力強く羽ばたき、暗雲立ち込める大空へと優雅に舞い上がる紅き竜。
竜に乗って飛ぶなんて、最早、夢でしかないなとか思いつつ、転落したくはないので割と必死に縋り付いた私だったり。
「やはり貴女と人が……この場所で争っていたんだな。信じられない」
上空から見た惨状に、改めて戦慄を覚えた私はそう呟いた。
『そう言ったであろう? 何を聴いておった? 其方、やはり阿呆の子であったのか?』
呟きを拾って何か小馬鹿にしてきた。
「済まない――確かにそう言っていた」
釈然としないが素直に謝っておく。
『うむ。実はの? 一部の不遜な輩――まぁ下衆ばかりではあったが、儂の住める地にて不敬を働きおった。静かに暮らす罪無き者達を乱獲し、あまつさえ女や子供を手籠にしおってな? 当然、怒る儂が諫めに出張るわけだが。其方を含む騎士団を筆頭に、傭兵や冒険者などを集め討伐隊を編成しおって、悪しき竜として本気で儂を潰しにきおった。――こんな形ではあるが、儂は人間を嫌うてはおらぬと言うに……』
しがみ付く私に長々と、若干、愚痴交じりで説明してくれる紅き竜。
「そうか――私も現在進行形で色々と大変な状態だが、貴女にしても大変だったんだな……」
しがみ付いた首をポンポンと軽く叩いて、僅かばかり気遣っておく。
『詳しくは酒でも酌み交わし食事でも摂りながら、お互いの素性を肴にゆっくり語ろうではないか』
「ああ。そうしてくれ。片腕の私はしがみ付くので精一杯なのでな。私の居た元の世界のことについても、知っている――違うか。覚えている限りを包み隠さず話すと約束しよう」
紅き竜と私に明確な言葉はない。
それでも互いが互いを認め合い、何故だか自然と意気投合してしまうのだった――。
こうして摩訶不思議な人間と、神々しいまでの紅き竜が、今、出逢い重なることとなった――。
この異界の地で巻き起こす、一人と一体の悠々自適で順風満帆な冒険譚は、のちに世界を震撼させる伝説――古くから伝えられる勇者の伝承として、歴史に記されることになる――。
数多の吟遊詩人に唄われ、語り継がれて広まっていく物語。
それは夫婦仲睦まじいことで知られ、世界の危機を救ったとされる、紅き竜を従えた隻腕の白き竜騎士なる――英雄の物語。
そんな少し変わった物語が、この刻この瞬間から、幕を開けるのだった――。
――――――――――
気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
「いや、特に何も。ただ触れただけだが? 突然、光ったのには私も驚いたが……貴女がしでかしたのでは――ない?」
怪訝そうな私と、金眼を細めて首を傾げる紅き竜。
互いの顔を見合わせて暫し考える。
『ふむ。……其方、どうやらただの阿呆の子ではないの? 儂と其方自身が思っている以上に滑稽な存在やも知れぬの? 今の輝きが意図せぬこととはいえの? ――実はな、儂の傷が完全に癒えた――今の一瞬で』
長い首を傾げて、独特の金眼を細めたまま、不思議そうな口調で伝えてきた紅き竜。
「なっ⁉︎――どう言うことだっ⁉︎」
当然、何をやらかしたかすら解っていない私は、紅き竜に質問で返した。
『儂の知るところではないわっ! だがしかし、これだけは言えるぞ? この世界に存在する貴重な万能薬を、遥かに凌駕する効き目であったのだけは間違いない』
独特の金眼をカッと見開き、目と鼻の先で大口を開け吼える紅き竜。
「……意味が解らん。私の右手――特に変わった様子は見て取れないが? もう一度、触れてみれば解るか――」
紅き竜が伝えてきた内容が信じられず、もう一度、同じように触れてみた私だったが、残念ながら何も起きやしない――。
『――なんと摩訶不思議な。だがしかし結果がどうあれ、命までも救われたのは事実。ゆえにその恩義に儂も恩義で応えねばならなくなったの。……良い、予定通り、儂の住処を提供してやるとしよう。但し、儂と棲むではなく、住むことにはなるがな?』
クイッと長い首を捻り、私の真正面で見据える紅き竜。
気の所為か……笑っているように見えた。
「私はそれで構わない。……寧ろ、ちょっと嬉しいかもだぞ?」
私も笑い返し、目の前の紅き竜の巨大な顔の鼻先に軽く触れて、肯定の意を伝えた。
相手が空想上の生き物で巨大な竜だと言うのに、この時には既に恐怖する心はなくなっていた。
絶世の美女と同居できるので有れば、普通は喜んで当たり前。
元が竜だと知っていなければ、確実に諸手を上げて素直に喜んでいたところだ。
『正直で何よりだ。――では、ぼちぼち参ろうか』
「宜しく頼む」
今度は私が乗り易いようにと、地面に頭を置いてくれた紅き竜。
それでもだ、巨大過ぎてよじ登るのには苦労するな思った矢先、翼を下げてスロープを作ってくれた存外に優しい紅き竜。
お陰で難儀することなく、すんなりと首に乗ることができた。
『では、行くぞ』「ああ」
背中の大きな翼を広げて力強く羽ばたき、暗雲立ち込める大空へと優雅に舞い上がる紅き竜。
竜に乗って飛ぶなんて、最早、夢でしかないなとか思いつつ、転落したくはないので割と必死に縋り付いた私だったり。
「やはり貴女と人が……この場所で争っていたんだな。信じられない」
上空から見た惨状に、改めて戦慄を覚えた私はそう呟いた。
『そう言ったであろう? 何を聴いておった? 其方、やはり阿呆の子であったのか?』
呟きを拾って何か小馬鹿にしてきた。
「済まない――確かにそう言っていた」
釈然としないが素直に謝っておく。
『うむ。実はの? 一部の不遜な輩――まぁ下衆ばかりではあったが、儂の住める地にて不敬を働きおった。静かに暮らす罪無き者達を乱獲し、あまつさえ女や子供を手籠にしおってな? 当然、怒る儂が諫めに出張るわけだが。其方を含む騎士団を筆頭に、傭兵や冒険者などを集め討伐隊を編成しおって、悪しき竜として本気で儂を潰しにきおった。――こんな形ではあるが、儂は人間を嫌うてはおらぬと言うに……』
しがみ付く私に長々と、若干、愚痴交じりで説明してくれる紅き竜。
「そうか――私も現在進行形で色々と大変な状態だが、貴女にしても大変だったんだな……」
しがみ付いた首をポンポンと軽く叩いて、僅かばかり気遣っておく。
『詳しくは酒でも酌み交わし食事でも摂りながら、お互いの素性を肴にゆっくり語ろうではないか』
「ああ。そうしてくれ。片腕の私はしがみ付くので精一杯なのでな。私の居た元の世界のことについても、知っている――違うか。覚えている限りを包み隠さず話すと約束しよう」
紅き竜と私に明確な言葉はない。
それでも互いが互いを認め合い、何故だか自然と意気投合してしまうのだった――。
こうして摩訶不思議な人間と、神々しいまでの紅き竜が、今、出逢い重なることとなった――。
この異界の地で巻き起こす、一人と一体の悠々自適で順風満帆な冒険譚は、のちに世界を震撼させる伝説――古くから伝えられる勇者の伝承として、歴史に記されることになる――。
数多の吟遊詩人に唄われ、語り継がれて広まっていく物語。
それは夫婦仲睦まじいことで知られ、世界の危機を救ったとされる、紅き竜を従えた隻腕の白き竜騎士なる――英雄の物語。
そんな少し変わった物語が、この刻この瞬間から、幕を開けるのだった――。
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