流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

文字の大きさ
18 / 53

第一ハ幕。

しおりを挟む
「ふぅ。此処が――試練の間の入口って所だな。――雰囲気あるよな」

 浮いた感覚が霧散して、地に脚が着く。
 数個の蝋燭が灯って照らし出される、閉鎖空間に転送させられた様だった。

 降り立ったこの場を見渡す私。
 岩肌に近しい石を積み上げたかの様な壁に囲われていた。

 そんな足下には、超越者の所で見た図柄や文字に等しい物が、まるで魔法陣を形成するかの如く描かれている。

 正面に、ぽっかりと開く出口――そこから先は私の立つ場からは見通せない。
 完全な闇に包まれていたからだった。

「やはりランタンは必須だったか。持ってきてよかったよ」

 この場を照らし出す蝋燭から火を拝借し、ランタンを準備する私。
 現代の明るい蛍光灯よりも遥かに劣る光量なので、妙に薄暗く感じてしまった。

「目を凝らし、慎重に進んで行くしか無いか」

 来る前に買い取った剣を抜き放ち、に構える私。
 空いた腰にランタンを提げ、背中の盾を右手に携えて、暗く狭い隧道ずいどうに等しい回廊を慎重に進んで行く――。

「意外に長いな……似たような配置で方向感覚も狂う。恐らく其処も狙った設計って所だろうな」

 代わり映えのしない、ひたすら同じ様な回廊が続いていた。
 ランタンの頼りない灯に照らし出される回廊は不気味の一言。
 揺れる灯りの所為で、狭くなったり広がったりとしている様な、妙な錯覚にも囚われる。
 平坦地であるにも関わらず、吸い込まれて奥へと落ちていくその感覚が、余計に気分を悪くした――。
 そんな私を得体の知れない何かにずっと見られている様な……そんな嫌な気配もする。
 此処をたった一人で進んで行くだけでも、結構な精神力を必要とするなと痛感した。

 長い回廊をひたすら進んで暫くすると、天然洞窟らしい場所へと辿り着く私。
 全体に広いのは良いが、次に進むべき道が四方八方に別れていた。
 要するに、見渡す限り大小様々な洞穴ほらあなだらけだったって訳だ。

「さて、問題だ私。どの洞穴を進む? なんてな。流石に分岐がこれ程とは予想してなかった……困ったな……」

 自嘲気味な苦笑いで自分に問う私。
 正しい答えを知っている筈も無く、当然、正解なんてのも解る筈が無い。
 無数の洞穴を一つずつ調べていくってのも大概な労力を必要とし、何より面倒臭い。
 だが、こう言った時の勘や運頼りは論外で愚作に等しい。

「痕跡らしき物は残されていないのだろうか? レンジャーやシーフの真似事とはな……」

 手掛かりが無いかと周辺を調べようと思った、その時だった。
 其処彼処に口を開ける洞穴から、ゆっくりと姿を現わす、成人男性くらいの大きさの――無数の魔物。

「――現代で言う所の狼か? 否、サーベルタイガーの類いか? 厄介な……」

 戦闘は勿論の事、集団戦や乱戦の対処方法、回避等に到る技術を全く知らない私。
 群れで現われたのだから余計に手に余る。
 どうやって遣り過ごすかを考えている内に、少しずつ数が増えていき、あっという間に逃げ道を塞がれ囲まれてしまった。

 そして一斉に私へと群がる様に飛び掛かって来た!

「きっと、なんとかなるっ!」

 咄嗟に右手に持つ盾を正面に掲げ、左手に持つ剣を構えて攻撃に備えた!

「重――くない? ――ならば!」

 盾に重い衝撃が伸し掛かるが、軽く持ち堪える事が出来た!
 そのまま盾を押し込み薙ぎ払うと、数匹の魔物が吹っ飛んでいった!

「身体が軽い! いける!」

 その勢いに身体を載せ、慣性を利用した剣での突きを見舞う私!
 突き刺さる所か、一刀両断にして真っ二つになってしまった!

「私は馬鹿力になってる様だな――と!」

 次々と飛び掛かって詰め寄る魔物に、突き出した剣でそのまま横薙ぎに振り抜く!
 その一振りで数十体の魔物が真っ二つになってしまった。

 僅か一瞬で数十体の魔物を、物言わぬ肉塊に変える事が出来てしまったのだった。

「やはりこの力は紅の竜玉の所為か? 単純な力任せだけで、此処まで動けて立ち回れるのか、今の私は……」

 自分でやっておいて何だが、正直に言って驚いていた。
 本来、かなりの重量である甲冑を着込んでいれば、動きもそれ相応に鈍くなる筈。
 恐ろしい迄に身体が動くばかりか、軽装な服で動いているかの錯覚を起こす程に軽く感じるのだ。
 同様に、本来なら結構な重さのある剣や盾にしても、全く重量を感じずに羽根の様に軽く自由に取り回せたのだ。


 更にもう一つ――身体が勝手に反応する。


 まるで修練を積み重ね、熟知しているかの如く、考えて動くのでは無く極自然に、身体に染み付いた癖の様に、だ。

「馬鹿力は理解が及ぶとして、この身の熟し方は一体……」

 今現在も、こんな風に他人事の様に考えながらでも、未だ襲いくる魔物全てにほぼ自動的にかつ的確に対処している私なのだ。
 自分自身が信じられない。

 程なく、全ての魔物を殲滅してしまった私だった――。

「何故、私がこうも見事に立ち回れる? 装具のお陰か? 竜玉の力か? 全く意味が解らない」

 装具にしても竜玉にしても、この身の熟しとは関係無く思え、どうにも腑に落ちない私。
 試しに剣を構えてみると、やはり極自然に堂に入った型を取った。
 斬るつもりで振り抜いてみると、渾身の一撃が放てる絶妙な姿勢を取り、斬ると言った身体の動作が勝手に組み合わさった。

「これは……身体が覚えている動きと言った感じだな。この身の元の持ち主、生前は余程腕の立つ騎士だったのかも知れん」

 私は今現在、言い方に凄く抵抗があって非常に嫌なんだが、この世界の私の身体に取り憑いている状態に近い。

 腰の鞘に剣を収める動作にしても、堂に入った見事な動きだった事からも、どうやら知らず知らずの内に、生前のこの身体の持ち主が、培って身に染みた技術を遺憾無く発揮させているのかも知れないな。

 深く考えると私の方が余程、たちの悪い魔物に思えてくるから、中々に怖い話だよ、全く。――それもあって考えたくないんだ。

 魔物を全て殲滅した後は、結局、消去法で対処していく私だった。
 手当たり次第に洞穴を調べて、進んで行ける所を進んで袋小路になったら戻るを繰り返す。
 途中で魔物に出会すも、先程と同じ様に対処して凌いでいく私。

 魔物の強さにしても奥に進めば進む程、凶悪無比に強さが増し、攻撃手段も巧みになっていく。

 お陰で対処していく私にしても段々とコツを掴んでいき、倒した数に比例して立ち回り等がみるみる上達していった。
 これら一連の襲撃についても、最後の試練に向けた布石なのだろう。

「どうやら、終わりの様だな――否、始まりと言った所か」



 私の勇者としての器が試される最終試練。
 その終わりが、今、始まる――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...