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第一九幕。

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 どのくらい潜ったか解らないが、明らかに場違いな場所に漸く辿り着く――。
 入口から中を覗き込み、一帯の様子を隈なく見ておく事にした。

 其処は、かなり広めの空間と言うか部屋だった。
 人工の石壁と解る作りに、魔導具と思しき照明器具が幾つも取り付けられ、部屋を明るく照らし出していた。

 最奥には例の女神像が鎮座し、私との間に槍と盾を持った甲冑姿の巨大な石像が、背後の女神像を守護するが如く配置されていた。
 誰がどう見ても最終試練の間に等しい場所――。

「最終試練――この石像と戦わされる羽目になるんだろうな」

 そう呟き足を踏み入れた途端、肯定するかの如く目の前の石像が淡く輝き、ゆっくりと動き出した――。

「倒せば良さそうだが――些か大き過ぎやしないか? 紅よりは遥かに小さいけど……」

 いつ動かれても対処可能な様に、右腰に提げている宝剣に左手を添えて独り言ちりながらも、動く石像に向かってゆっくりと詰め寄っていく私。


 試練の間の最奥にて、最終試練と思しき巨大な動く石像と対峙している私だった――。


 対峙している中世の甲冑姿の石像は、サイクロプスの様な一つ眼で、身の丈もある巨大な槍と盾を携えていた。

 槍とは言ったが、中世の甲冑姿も伊達では無いらしく、騎乗した上で突進力を載せて穿つ槍――つまり、ランスを所持している。
 盾にしても、騎乗時において身体全体が覆える程の広範囲型。
 あの質量で真面に穿たれたら、私はただでは済まないし、私の間合いで盾を突破するのは容易では無いだろう。
 馬に乗っていないのが、せめてもの救いだな。

 私を見据える一つ眼が赤く光り、私の動きを追う様に忙しなく動いていたが、いきなり襲ってくる気配は無い。

 そして、一つ眼が明るく輝くと、脚を揃えて直立不動の姿勢から、礼を尽くした会釈をした。
 その後、槍を水平に構え盾を翳し、戦闘体勢に移行した石像。

「流石に試験官って感じだな。礼儀正しい」

 私も敬意を払って会釈を返した後、宝剣を真一文字に抜き放ち、盾を正面に翳して石像に応えた。

 そして――最終試練が開始された。

 巨大な石像とは思え無い滑らかな動きを見せ、唸り声に雄叫びや咆哮も無く、身の丈もある巨大な槍を大きく振り被り、私を殴り付ける様に突き下ろしてきた!

「――試してみるか!」

 私の身長の三倍以上はある石像から穿たれる槍は、二、三階上から突き落とされる様なものだ。
 だが、私には思う所があって、その槍の一撃を右手に構える盾のみで、あえて受け止めてみる。

 金属が打つかり合う独特の甲高い音を轟かせ、火花を散らす石像の槍と私の盾だった。

「――やはり、私の盾も宝剣に勝るとも劣らない性能の様だな!」

 これ程の高さから勢い良く振り落とされ穿たれれば、本来の衝撃は半端無く凄まじい筈。
 だが、難なく右手の盾のみで、潰されず、貫かれず、吹き飛ばされもせず、その場で簡単に受け止めてくれた盾。
 実際、私の予想通りで、堪えると言った必要すら無かった。

 但し、防御し支える私の足が踏んでいる床は衝撃に耐えられずに大きく沈み込んだ。
 更に足元周辺の床が捲れて吹き飛んでしまった。
 その有り様が、今の一撃がどれ程の衝撃だったかを明確に物語っていた。

「これを受け止めれる私も、大概に規格外だと思うよ――なっ!」

 受け止め切った盾でそのまま押し返し、槍諸共、石像を弾き飛ばしてやる私!

 槍が弾かれて、反り返る石像!
 だが、反り返る慣性をも活かし、身を捻って反動を付けた横回転から、後ろ手の盾殴りが私に放たれる!

「――くっ!」

 左手の宝剣をすかさず逆手持ちに切り替え、床に突き刺して威力を剣の刃に沿って逃がす様に受け流す私!
 盾殴りの攻撃角度を宝剣で調整し、力を逃して逸らしてやったのだ!
 私の目算通り、盾殴りが刃を滑り均衡を失った石像は、足が縺れてひっくり返ってしまう!

「流石だな。鍛治師が舌を巻く程の宝剣ってのは伊達では無いらしい。斬って良し、防いで良し。――素晴らしい」

 凄まじい重量が載った盾殴りだったと言うに、鍛治師の言っていた通り、刃こぼれは疎か折れる気配すら全く無いときた。

 床に両手をついてゆっくり起き上がる石像は、槍と盾を構え直して再び私へと攻撃を見舞ってくる。
 丸太程もある巨大な槍を高速かつ連続で突き出す石像!

 文字通りの石の様な物で構成されるから、石像に違いは無いので、私はそう呼んでいた。
 しかし、石像の雰囲気とは真逆な動き。
 まるで本当の人間、或いはゴム人形の様に、しなやかかつ軽やかに動いているのだ。
 携えられる槍や盾は、穿つ、或いは防ぐ技を披露する度に、私の宝剣の如く神々しい迄の輝きを放っていた。

「最終試練を務めているだけの相手だ――なっ!」

 石像から穿たれる動作の一挙手一投足を注視して、剣、或いは盾で穿たれる槍の連撃を確実に捌いて対処していく私!

 最後の一突きを見舞って、槍を持つ腕が大きく伸びきった!

「此処だな!」

 その隙を見逃さなかった私は、伸び切った巨大な腕の下に回り込み、左手に持つ宝剣で容赦無く斬り上げた!



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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