流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

文字の大きさ
49 / 53

第四九幕。

しおりを挟む
 明らかに人工物と解る石畳で造られた、通路を奥へと進んでいく。

 通路の所々に魔法の照明が設置されているお陰で見通しも良く、周囲の警戒もし易かった。

 懸念していた襲撃、或いは待ち伏せ、罠に至る妨害などもなく、すんなりと奥のだだっ広い広間へと辿り着いた――。

「なんと。山脈の中に地底湖とはの。それにこの異様に濃過ぎる魔素は何ぞ? ――流石の儂も驚きだの」

 広間を目にした紅が、言葉通りに驚いていた。

「ここにも魔結晶⁉︎ しかも壁一面の全てって……」

 紅同様に広間の様子を目にした瞬間、驚きの声を上げた少年。


 辿り着いた場所は、だだっ広い巨大な空洞で、これまた巨大な地底湖が広がっていた。


 壁一面は魔結晶で覆われ、自発光だろうか……淡い紫色で周囲を照らしており、幻想的に揺れる水面を演出していた。

「紅、念の為に私の宝剣を預ける。少年を護ってやってくれ」

 腰の宝剣を取り外し、紅に手渡す私。
 幻想的に揺れる水面を注視したままに、直ぐに槍と盾を準備して備える。


 巨大な地底湖の中に、動く影が見えたからだ。


「何かおるの……少年、儂の側を離れるでないぞ」

「は、はい」

 私から宝剣を預かって少年の手を引き、入口まで後退する。


 水面が大きく揺れて迫り上がり、巨大な何かが姿を曝け出した――。


「あ、あれは……ス、スキュラ⁉︎」

「スキュラとな? 何だそれは?」

 姿を目にした少年が驚きの声で告げ、少年の前で盾となる紅が、眉根を寄せてそれを注視する――。

「まるでキメラとか言う魔物だな……」

 上半身は見目麗しい正しく女性なのだが、些か肌の色が不健康に青白く、下半身はどう見ても何かの魚の尾。

 鋭い牙を生やした判別不能な魔物の頭が六つに、鋭い爪を生やした魔物の足が十二本の、今まで聴いたことも見たこともない、不気味で奇妙な姿をしていたのだった。

「会話できるほどの知性は――持ち合わせていないって感じだ」

 警告も何もなく、問答無用で六つの頭と十二本の足が一斉に動き、襲い掛かってきた!
 話し合いは無理と判断し、私は敵と見なし対処に動いた!
 
 咄嗟に突き出すように翳した右手の盾で迫り来る頭を受け止めつつ、左手の槍で追撃の足を薙ぎ払うように払い除ける!

「圧倒的な手数……全方位の多重攻撃は流石に厳しい」

 こちらは腕二本、向こうは頭六つに足十二本――更に人型の上半身には、腕二本も残っている。

 次から次へと襲いくる触手に等しい足を懸命に払い退け、噛みつこうとする六つの頭をなんとか躱していく私!

「まずいぞ、主人! 何ぞ詠唱しておるようだ!」

 必死に躱す私の後ろから、紅の警告が飛ぶ!

「なんだと⁉︎ 知性がなさそうなのに魔法を使うのか⁉︎」

『Ahaaaaa――!』

 聴き取れない高周波な音が洞窟内に響き渡り、周囲一帯を震わせる!
 壁が揺れパラパラと崩れ出し、水面が大きく荒れた!

 盾に伸し掛かる凄まじいまでの衝撃!
 試練の間で戦った番人に匹敵するほどの、威力が伸し掛かるのだった!

 万全の体勢ではなかった為に流石に抑えきれず、身体ごと吹っ飛ばされて、壁に打ち付けられた私だったが、身に付けている鎧のお陰で怪我はない。


 だが、戦いが長引くと、ここら一帯の崩落の恐れもある――。


「一気に行くしかないようだ!」

 突進の構えに体勢を取ると、踏み抜く勢いで地面を蹴り抜いて跳躍!
 巨大な槍をスキュラ本体目掛けて突き出した!


 しかし――。


「なんだと⁉︎ ――グハァ!」

 十二本もある足に威力を殺され、本体に届く前に捕まってしまった!
 更に六つある頭が私に喰らい付いた!
 
「あ、主人⁉︎ ――今助ける! 邪魔立てするなぁ!」

「竜巫女様⁉︎」

 少年を突き飛ばし宝剣を抜き放った紅が、触手に等しい足に斬りかかり、私を助け出そうと試みる!

 だが、剣先が届く前に宝剣の柄を叩き、最も簡単に弾き返したスキュラ!

「ぬぅ、忌々しい! 儂は人の剣術など知らぬ! 児戯に等しいが、それでもこうも容易く遇らわれるとは……」

 宙返りで体勢を整えて、地面に舞い降りる紅は、唇を噛みしめ睨みつける!

「大丈夫だ! 紅、下がってろ!」

 運が良いことに、噛みつかれた部位が鎧と義手だった私。
 そう、辛うじて鋭い牙は通っていないのだ!
 
「主人、しかし……」「――騎士様⁉︎」

 噛み付いたままに間髪入れず、私を水中に引き摺り込もうとするスキュラ!

「させんよ、魔物! 番人の槍よ、奴を貫いてくれ!」

 そう叫ぶ私! それに応える番人の槍!

 神々しい輝きを放ち、番人が持っていた時と同じ大きさに戻った槍は、巨大な切っ先でスキュラを貫いた!

 お陰で拘束から解かれた私は、巨大な槍の上を走っていき、人の身と同じ女性の姿をしたスキュラに取り付いた!

「終わりだ――」

 鍛治師の所で入手した剣を抜き放った私は、逆手に持って頭から突き刺した!

『Ahaaaa――!』

 断末魔の悲鳴と共に噴き上がる体液が、私と水面を染め上げる!
 地面と壁を叩きつけて暴れ狂う、触手のような足と頭!

「――ヒィ!」

「何をしておるか! 入口から外に出るぞ!」

 少年を抱え込んで、崩れる瓦礫を巧みに躱しながら入口へと引き返す紅!

 番人の盾を頭上に翳して瓦礫を退けつつ、私も入口へと引き返す!


『Aha……A……』

 散々暴れ狂った挙句、最後は打ち上げられた魚の如く水面に逆さ向きに浮いて、巨大なスキュラは活動を停止した――。




 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...