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第三難 否、悠々自適なエンドライフ。
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とりあえず海岸から内陸部を目指し、杖代わりの木の枝で身体を支えつつ、えっちらほっちらと亀の歩みの如くトボトボと歩く。
甲羅を背負う美幼女然とした天使さま姿の亀(自称)にしても、見た目通りにとっとことっとことついてくる。
(さてと……どうしたものか)
勿論、行く宛など決まってる筈がない。
ただ、あのまま海岸沿いに居たとしても、一向に状況が動かない気がしたから、見切り発進でもあえて行動に移した。
なにせ俺は、枯れ専の腐女子ならば、悦び勇んで飛んでくること間違いなしのヨボヨボな爺いの姿。
更に転生前に身につけていた海パン一丁で、他にこれといった所持品もない。
まぁ、現地で拾った、この良い感じの木の枝が手元にあるが、身を守る武器になるかと言えば、当然、ならない。
更に言えば、歩くだけでヒィヒィ言ってる爺いたる俺が、勇猛果敢に木の枝を振り回し戦える筈もなく。
付き従う介護係たる亀(自称)にしても、今は甲羅を背負った美幼女の姿。
いざと言う時に戦えるかと問われれば、きっとなんとかなる。と自信なく答える程度であてにはならない。
万一にも何かに襲われた際は、鬼畜極まる所業で甲羅ごと盾代わりにはできると言うか、率先してしてやるんだが。
つまり現時点で、既に色々と詰んでいる。
「食い物の他にも色々と要るよな? 先ず居るかどうかも怪しい獲物を狩るってのは、体力や技術的にも正直言って無理だな」
「確かに。探すだけでも一苦労です。まして捕らえるとするなら尚ですね」
「と、すればだ。あるかどうかすら怪しい果物とか山菜系の採取が主となるか。なんぞな食虫植物的モンスターでもない限り、それが安全だろう。とにかく食える物がすんなりと見つかれば良いけども」
「この際、食生活には贅沢は言いません」
「そうか。ならあとは当面の住居が必要……か」
一抹の不安を抱えながらも、自由に動かない枯れた脚に鞭を打ち、心底、愚痴るように相談を投げ掛け歩を進める。
草木が生い茂る獣道すらできていない森の中、素手で必死に掻き分けたり、素足で痛いゆーに踏み躙ったりと、道なき道を作りつつな?
ただ、誰かさんはそんな俺が必死に作る道をだ、一切、手伝いすらもせず、とっとことっとこ甲羅を揺らしついてくるだけ。
理不尽にもほどがある。
「って、そこな……今の姿だとなんと呼ぼうか迷うな。ま、本人……人違うけど。亀と言い張るんだから亀(自称)でいいか。とりあえず亀の使徒たる謎パワーかなんかで解決、早よ」
「無理ですが、何か?」
「無理って……何しについてきたん?」
「私は神の御使たる天使の身分以前に、ただの甲羅を背負った美しい幼女姿の単なる陸亀ですので」
「意味不明な言い回しすなっ! 断じて亀とも違くね? 毒電波垂れ流しの何かと違くね?」
「シャラーップ! 勿論、飼って頂く……は、美幼女姿になっている今現在、前世の社会的にも世間体にも良くない言い回しですよね? 厳しいご指摘、或いは非難を受けると思いますので……養ってもらう為としておきましょう。そうですね……孫ポジションと言うのが回答と言うことで」
「スゲー無茶振りでグイグイくるのな? 前世は既に関係なくね? さっき俺の介護係とか吐かしてたん違くね?」
「まぁ……寝たきりで動けなくなったら、他界するその時までは、身の回りのお世話くらいはちゃんとして差し上げますよ」
「まぢか」「至ってまぢですが、何か?」
そんな風に不毛な言い合いを続けつつも、草木が鬱蒼と生い茂る森の中を、ひたすら歩き続けるのだった――。
◇◇◇
樹々の隙間から覗く空が、夕焼けの如く赤茶けてきた頃だった。
鬱蒼とした森然と生い茂る草木に変化が現れた。
進むにつれて次第に草木の量が減ってきたのだった。
そしてほどなく、疑問に答えを見つけるまでもなく、まるで自然公園ような芝生が生い茂った、少し開けた場所に出会した。
「なぁ、亀(自称)。あれって何だと思う?」
「小屋のようですが、何か?」
その少し先。明らかに人工物と呼べる建物が一軒、不自然なほどにポツンっと建っているのが窺えた。
それも俺の前世の記憶通りな小屋の形。アウトドア的に言うと、至極普通な丸太小屋。
更に小さな倉庫らしき物置も窺えるうえ、どうやら井戸や薪割り場なんかも併設されている模様。
「なぁ、あの小屋に住めって言われてる気がするのは……俺だけだろうか?」
生い茂る草木を素足で踏み躙ったりしてる所為で、足の裏がとんでもなく痛い。
そろそろ限界で休みたいと思っていたところに渡りに船ときた。
怪しいと疑いはすれど、拒否ってスルーの選択肢はない。
「私の知るところでは全くありませんが、主神さまがご用意なさって下さった……のではないでしょうか?」
首を傾げつつ、さも自信なさ気にそう答える亀(自称)だった。
「知らんのか?」「知りませんが、何か?」
見たところ、人が住んでいるようには見えない。寧ろ、建てたばかりのように真新しい。
「一応、様子を見てみようと思う。住んで問題がないようなら、ここを拠点に生活しようと思うが……異存に異論は?」
「安息の地と言うことですね。特にありませんが、何か?」
例の如く、腰に手を当て、ない胸を張って、何処からそんな自信が出てくるのよ的キメ顔で、思いっきりドヤる亀(自称)。
「安息の地って言うの禁句なっ! そ・れ・と・だっ! いちいち疑問符つきのキメ顔でドヤるのを、えー加減にやめんかいっ!」
「私が私である為のアイデンティティに、何か?」
「それも自我同一性に含むんかよっ⁉︎」
「当たり前ですが、何か?」
創作物なんかで良く使われる、所謂、キャラ立てってヤツなんか?
気にしててもしゃーないと割り切って、とりあえずは謎の丸太小屋を調べてみることにした――。
――――――――――
その小屋、不自然につき(怯)
甲羅を背負う美幼女然とした天使さま姿の亀(自称)にしても、見た目通りにとっとことっとことついてくる。
(さてと……どうしたものか)
勿論、行く宛など決まってる筈がない。
ただ、あのまま海岸沿いに居たとしても、一向に状況が動かない気がしたから、見切り発進でもあえて行動に移した。
なにせ俺は、枯れ専の腐女子ならば、悦び勇んで飛んでくること間違いなしのヨボヨボな爺いの姿。
更に転生前に身につけていた海パン一丁で、他にこれといった所持品もない。
まぁ、現地で拾った、この良い感じの木の枝が手元にあるが、身を守る武器になるかと言えば、当然、ならない。
更に言えば、歩くだけでヒィヒィ言ってる爺いたる俺が、勇猛果敢に木の枝を振り回し戦える筈もなく。
付き従う介護係たる亀(自称)にしても、今は甲羅を背負った美幼女の姿。
いざと言う時に戦えるかと問われれば、きっとなんとかなる。と自信なく答える程度であてにはならない。
万一にも何かに襲われた際は、鬼畜極まる所業で甲羅ごと盾代わりにはできると言うか、率先してしてやるんだが。
つまり現時点で、既に色々と詰んでいる。
「食い物の他にも色々と要るよな? 先ず居るかどうかも怪しい獲物を狩るってのは、体力や技術的にも正直言って無理だな」
「確かに。探すだけでも一苦労です。まして捕らえるとするなら尚ですね」
「と、すればだ。あるかどうかすら怪しい果物とか山菜系の採取が主となるか。なんぞな食虫植物的モンスターでもない限り、それが安全だろう。とにかく食える物がすんなりと見つかれば良いけども」
「この際、食生活には贅沢は言いません」
「そうか。ならあとは当面の住居が必要……か」
一抹の不安を抱えながらも、自由に動かない枯れた脚に鞭を打ち、心底、愚痴るように相談を投げ掛け歩を進める。
草木が生い茂る獣道すらできていない森の中、素手で必死に掻き分けたり、素足で痛いゆーに踏み躙ったりと、道なき道を作りつつな?
ただ、誰かさんはそんな俺が必死に作る道をだ、一切、手伝いすらもせず、とっとことっとこ甲羅を揺らしついてくるだけ。
理不尽にもほどがある。
「って、そこな……今の姿だとなんと呼ぼうか迷うな。ま、本人……人違うけど。亀と言い張るんだから亀(自称)でいいか。とりあえず亀の使徒たる謎パワーかなんかで解決、早よ」
「無理ですが、何か?」
「無理って……何しについてきたん?」
「私は神の御使たる天使の身分以前に、ただの甲羅を背負った美しい幼女姿の単なる陸亀ですので」
「意味不明な言い回しすなっ! 断じて亀とも違くね? 毒電波垂れ流しの何かと違くね?」
「シャラーップ! 勿論、飼って頂く……は、美幼女姿になっている今現在、前世の社会的にも世間体にも良くない言い回しですよね? 厳しいご指摘、或いは非難を受けると思いますので……養ってもらう為としておきましょう。そうですね……孫ポジションと言うのが回答と言うことで」
「スゲー無茶振りでグイグイくるのな? 前世は既に関係なくね? さっき俺の介護係とか吐かしてたん違くね?」
「まぁ……寝たきりで動けなくなったら、他界するその時までは、身の回りのお世話くらいはちゃんとして差し上げますよ」
「まぢか」「至ってまぢですが、何か?」
そんな風に不毛な言い合いを続けつつも、草木が鬱蒼と生い茂る森の中を、ひたすら歩き続けるのだった――。
◇◇◇
樹々の隙間から覗く空が、夕焼けの如く赤茶けてきた頃だった。
鬱蒼とした森然と生い茂る草木に変化が現れた。
進むにつれて次第に草木の量が減ってきたのだった。
そしてほどなく、疑問に答えを見つけるまでもなく、まるで自然公園ような芝生が生い茂った、少し開けた場所に出会した。
「なぁ、亀(自称)。あれって何だと思う?」
「小屋のようですが、何か?」
その少し先。明らかに人工物と呼べる建物が一軒、不自然なほどにポツンっと建っているのが窺えた。
それも俺の前世の記憶通りな小屋の形。アウトドア的に言うと、至極普通な丸太小屋。
更に小さな倉庫らしき物置も窺えるうえ、どうやら井戸や薪割り場なんかも併設されている模様。
「なぁ、あの小屋に住めって言われてる気がするのは……俺だけだろうか?」
生い茂る草木を素足で踏み躙ったりしてる所為で、足の裏がとんでもなく痛い。
そろそろ限界で休みたいと思っていたところに渡りに船ときた。
怪しいと疑いはすれど、拒否ってスルーの選択肢はない。
「私の知るところでは全くありませんが、主神さまがご用意なさって下さった……のではないでしょうか?」
首を傾げつつ、さも自信なさ気にそう答える亀(自称)だった。
「知らんのか?」「知りませんが、何か?」
見たところ、人が住んでいるようには見えない。寧ろ、建てたばかりのように真新しい。
「一応、様子を見てみようと思う。住んで問題がないようなら、ここを拠点に生活しようと思うが……異存に異論は?」
「安息の地と言うことですね。特にありませんが、何か?」
例の如く、腰に手を当て、ない胸を張って、何処からそんな自信が出てくるのよ的キメ顔で、思いっきりドヤる亀(自称)。
「安息の地って言うの禁句なっ! そ・れ・と・だっ! いちいち疑問符つきのキメ顔でドヤるのを、えー加減にやめんかいっ!」
「私が私である為のアイデンティティに、何か?」
「それも自我同一性に含むんかよっ⁉︎」
「当たり前ですが、何か?」
創作物なんかで良く使われる、所謂、キャラ立てってヤツなんか?
気にしててもしゃーないと割り切って、とりあえずは謎の丸太小屋を調べてみることにした――。
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その小屋、不自然につき(怯)
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