3 / 5

第三難 否、悠々自適なエンドライフ。

しおりを挟む
 とりあえず海岸から内陸部を目指し、杖代わりの木の枝で身体を支えつつ、えっちらほっちらと亀の歩みの如くトボトボと歩く。
 甲羅を背負う美幼女然とした天使さま姿の亀(自称)にしても、見た目通りにとっとことっとことついてくる。

(さてと……どうしたものか)

 勿論、行く宛など決まってる筈がない。
 ただ、あのまま海岸沿いに居たとしても、一向に状況が動かない気がしたから、見切り発進でもあえて行動に移した。

 なにせ俺は、枯れ専の腐女子病的なまでに御年配ラブならば、悦び勇んで飛んでくること間違いなしのヨボヨボな爺いの姿。
 更に転生前に身につけていた海パン一丁で、他にこれといった所持品もない。

 まぁ、現地で拾った、この良い感じの木の枝が手元にあるが、身を守る武器になるかと言えば、当然、ならない。
 更に言えば、歩くだけでヒィヒィ言ってる爺いたる俺が、勇猛果敢に木の枝を振り回し戦える筈もなく。

 付き従う介護係たる亀(自称)にしても、今は甲羅を背負った美幼女の姿。
 いざと言う時に戦えるかと問われれば、きっとなんとかなる。と自信なく答える程度であてにはならない。
 万一にも何かに襲われた際は、鬼畜極まる所業で甲羅ごと盾代わり肉壁にはできると言うか、率先してしてやるんだが。


 つまり現時点で、既に色々と詰んでいる。


「食い物の他にも色々と要るよな? 先ず居るかどうかも怪しい獲物を狩るってのは、体力や技術的にも正直言って無理だな」

「確かに。探すだけでも一苦労です。まして捕らえるとするなら尚ですね」

「と、すればだ。あるかどうかすら怪しい果物とか山菜系の採取が主となるか。なんぞな食虫植物的モンスターでもない限り、それが安全だろう。とにかく食える物がすんなりと見つかれば良いけども」

「この際、食生活には贅沢は言いません」

「そうか。ならあとは当面の住居が必要……か」

 一抹の不安を抱えながらも、自由に動かない枯れた脚に鞭を打ち、心底、愚痴るように相談を投げ掛け歩を進める。
 草木が生い茂る獣道すらできていない森の中、素手で必死に掻き分けたり、素足で痛いゆーに踏み躙ったりと、道なき道を作りつつな?

 ただ、誰かさんはそんな俺が必死に作る道をだ、一切、手伝いすらもせず、とっとことっとこ甲羅を揺らしついてくるだけ。


 理不尽にもほどがある。


「って、そこな……今の姿だとなんと呼ぼうか迷うな。ま、本人……人違うけど。亀と言い張るんだから亀(自称)でいいか。とりあえずの使徒たる謎パワーかなんかで解決、早よ」

「無理ですが、何か?」

「無理って……何しについてきたん?」

「私は神の御使みつかいたる天使の身分以前に、ただの甲羅を背負った美しい幼女姿の単なる陸亀ですので」

「意味不明な言い回しすなっ! 断じて亀とも違くね? 毒電波垂れ流しの頭のおかしい何かと違くね?」

「シャラーップ! 勿論、飼って頂く……は、美幼女姿になっている今現在、前世の社会的にも世間体にも良くない言い回しですよね? 厳しいご指摘、或いは非難を受けると思いますので……養ってもらう為としておきましょう。そうですね……孫ポジションと言うのが回答と言うことで」

「スゲー無茶振りでグイグイくるのな? 前世は既に関係なくね? さっき俺の介護係とか吐かしてたん違くね?」

「まぁ……寝たきりで動けなくなったら、他界するその時までは、身の回りのお世話くらいはちゃんとして差し上げますよ」

「まぢか」「至ってまぢですが、何か?」

 そんな風に不毛な言い合いを続けつつも、草木が鬱蒼と生い茂る森の中を、ひたすら歩き続けるのだった――。


 ◇◇◇


 樹々の隙間から覗く空が、夕焼けの如く赤茶けてきた頃だった。
 鬱蒼うっそうとした森然と生い茂る草木に変化が現れた。
 進むにつれて次第に草木の量が減ってきたのだった。
 そしてほどなく、疑問に答えを見つけるまでもなく、まるで自然公園ような芝生が生い茂った、少し開けた場所に出会でくわした。
 
「なぁ、亀(自称)。あれって何だと思う?」

「小屋のようですが、何か?」

 その少し先。明らかに人工物と呼べる建物が一軒、不自然なほどにポツンっと建っているのが窺えた。
 それも俺の前世の記憶通りな小屋の形。アウトドア的に言うと、至極普通な丸太小屋。
 更に小さな倉庫らしき物置も窺えるうえ、どうやら井戸や薪割り場なんかも併設されている模様。

「なぁ、あの小屋に住めって言われてる気がするのは……俺だけだろうか?」

 生い茂る草木を素足で踏み躙ったりしてる所為で、足の裏がとんでもなく痛い。
 そろそろ限界で休みたいと思っていたところに渡りに船ときた。
 怪しいと疑いはすれど、拒否ってスルーの選択肢はない。

「私の知るところでは全くありませんが、主神さまがご用意なさって下さった……のではないでしょうか?」

 首を傾げつつ、さも自信なさ気にそう答える亀(自称)だった。

「知らんのか?」「知りませんが、何か?」

 見たところ、人が住んでいるようには見えない。寧ろ、建てたばかりのように真新しい。

「一応、様子を見てみようと思う。住んで問題がないようなら、ここを拠点に生活しようと思うが……異存に異論は?」

「安息の地と言うことですね。特にありませんが、何か?」

 例の如く、腰に手を当て、ない胸を張って、何処からそんな自信が出てくるのよ的キメ顔で、思いっきりドヤる亀(自称)。

「安息の地って言うの禁句なっ! そ・れ・と・だっ! いちいち疑問符つきのキメ顔でドヤるのを、えー加減にやめんかいっ!」

「私が私である為のアイデンティティに、何か?」

「それも自我同一性に含むんかよっ⁉︎」

「当たり前ですが、何か?」

 創作物なんかで良く使われる、所謂、キャラ立てってヤツなんか?

 気にしててもしゃーないと割り切って、とりあえずは謎の丸太小屋を調べてみることにした――。



 ――――――――――
 その小屋、不自然につき(怯)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...