Tactical name: Living dead. “ Fairies never die――. ”

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Chapter One. 軍役時代。

Report.06 戦場に舞う妖精達――フェアリーズ。【前編】

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 エンゲージポイントへ急行する最中、 フォーマンセル・ワンユニット四人一組構成の少数精鋭部隊が百小隊規模で出撃の中でも、特に仲の良い小隊へとホットライン直通回線を繋いでみる。
 最初はノイズに掻き消され、途切れ途切れになっていたが、近付くにつれて次第にクリアとなっていく。

 戦況が目視できる頃には、戦場が広範囲に広がってしまっていた。
 応戦する各部隊にしても、バラけて孤立しかかっている。
 両軍の現行兵器に混じる見たこともない型式のアーマノイド、こちらの隊の面子、マスプロ量産型・フェアリーズ達が入り乱れ、既に結構な乱戦状態と化していた。
 そんな状況でも、数の不利があろうとも、これ以上の進軍を許さず、なんとか抑え込んでいる模様。

 そしてホットラインからチラホラと聞こえてくる向こうの会話。

 まぁ、そこはかとなくいつもの調子。
 三万のエネミーに対し、相手取るこちらは五百に満たない戦力だゆーに、聞こえてくる会話に悲壮感は全くの皆無。
 寧ろ余裕っぽさが窺えるってんだから流石だよ……全く。


 ◇◇◇


『こちら第三小隊、“ テュルフィング勝利をもたらす剣 ”。現在、左翼エネミーとエンゲージ。数の暴力もだが、どうやら既存のアーマノイドとは少し違うようだ。至急ではないが、できれば増援を乞う』

 イケメンボイスって言うのか。
 実際、本人も男前なんだけど。主人公的勇者とか騎士っぽいあれな青年。
 想像すると何故かモヤっとするのは妬みから。

『第五小隊、“ シリアルキラー連続殺人鬼 ”。こっちはこっちで、いつもと違う殺し甲斐のあるけったいな奴らに手一杯なんだよ! 何が“ 至急ではないが ”だぁ? オレらよか上位の小隊のクセに、ナマ言ってっとぶっ殺すぞっ! テメェらでなんとかしろや!』

 最年少のコマンダー部隊長たる彼は、柄の悪い不良君と言えば解り易い。
 本人の見た目もそのまんま。根は実に優しい良い子だけども。

 各小隊番号は、そのまま小隊の序列を表している。
 潜ってきた修羅場で挙げてきた個々の戦果などを元に、優秀な部隊から順に割り当てられる。
 要は数字の若い小隊ほど強い、或いは凄腕ってこと。
 中でもこの二人は、歴戦の猛者かつ精鋭中の精鋭となるストライカー叩く者だ。
 必然的にセンターフォワード前陣部隊セカンドトップ中陣部隊の役目を担うこととなる。

『第三二小隊、“ ヴァルチャー禿鷹 ”。テュルフィング、数で不利な戦場でも、冗談をかます余裕はあるようだの。ならば我が隊が応援に行かずとも、存外、大丈夫そうよの』

 禿鷹ハゲタカのTAC通り、禿げた爺さん。
 物腰は実に柔らかいが、スキンヘッドにゴツい筋肉。
 実力もある、歴戦の軍人らしい軍人。

『第六九小隊、 “ マーメイド人魚 ”。確かにいつもの玩具っぽさのない、特殊なアーマノイドだけどさ、見掛け倒しって感じじゃん。一体一体は大したことないじゃんね? テュルフィングのTACは、見掛け倒しだったのかしら?』

 簡単に言えば“ お嬢 ”。その一言に尽きる。
 なんで軍人なんかに? と、以前、尋ねてみたことがあるが、テュルフィングにゾッコンだからとしれっと惚気で返された。
 
 この二組は、フォワード部隊の後詰めを主に担う。
 エンゲージの外側から戦況に応じ、臨機応変にバックアップやフォローに立ち回るウイング後陣部隊となる。


 ◇◇◇


、 “ リビング・デッド ”。済まん、少し出遅れた。テュルフィングを虐めてやるな。流石にこの数ではな?」

 戦場でのやり取りとは思えない、巫山戯きったホットラインへと割り込む。

『やっとジョーカー切り札のお出ましか』

『遅せーぞ、死体野郎!』

「こっちにも事情があんだよ! ――バルチャーにマーメイド、テュルフィングのフォロー頼めるか? 悪いがスコードロン遊撃部隊な俺らは、このまま中央突破しつつ後方部隊を殲滅に回るってことで」

『了解よ。悪名高いノーライフキング、しかもジョーカーであるリビング・デッドがカーニバルただの戦場に参加って……こりゃフェスティバル酷い戦場になるわ。もう楽勝ね』

 やけに持ち上げてくるな?
 上機嫌になる要素が何処に……ああ、テュルフィングと一緒の出撃だからか。
 恋する乙女、意中の相手の役にも立ててハッピーってところだな。

「阿呆か。いくらなんでも俺らだけで、三万を相手に踊んのは――ま、割に余裕だな」

 実際はそれほどでもんだが、上機嫌に持ち上げてくれるので、俺にしても冗談っぽく答えておく。

『ほっほっほ、死地において豪快にほざきよるか。頼もしいことよの。実際、少尉殿リビング・デッドは如何なる戦況でも必ず帰投しよったでの。嬢ちゃんマーメイドが向かうなら、ワシの隊はもう不要だの。帰っても良いかの?』

『『『あかんに決まってるだろう!』』』

「皆から総ツッコミかよ。だが俺も微妙に同意。バルチャー、老い先短いのに済まんな」

『オレら若い者にばっか働かせてないで、爺さんヴァルチャーも偶には前陣で働けや!』

『ティルフィングの方に向かうからさ、私の代わりに右翼を抑えててよ』

『ワシはこの歳まで、もう随分と有無を言わさず働かされてきたんだがのう……全く人使いの荒い嬢ちゃん、目上に口の利き方を知らん若僧シリアルキラー、それに相変わらずの少尉殿だの』

『まぁ、そう言わずに。済まないがマーメイド。なるべく急いでくれ』

『了解。テュルフィング、帰ったら、一杯、奢りなさいよね。年代物のワインと――』

『ザマァ。蟒蛇ウワバミに呑み尽くされろ。そのまま喰われて、とっとと男になっちまえ』

『間違いなく破産覚悟だの。嬢ちゃん相手に男になる代償としては……ややぼったくり感が否めんがの』

『ちょっと⁉︎ 過酷な言われようなんだけど!』

「確かに。まぁ、ご愁傷様だ。祝儀くらいは弾んでやんわ、俺」

『くっ……容赦ないな。お、お手柔らかに頼む』

 少なくともこの面子に限って、フェアリーズを物扱いにする奴は居ない。
 だから俺も気を許している。
 ただシリアルキラーだけは、俺の獲物と呼んで普段から追いかけ回してるが……愛にも色々あるからな。


 過酷な戦場で作戦行動中にも関わらず、いつもと変わらないノリで、互いに巫山戯あうのだった――。


 ◇◇◇


(ユージ達、相変わらずだね)

 ボク……私達はフェアリーズ。人と同じ感情を持つ造り物。
 命令一つで動かされ、命令一つで人をも殺す。
 誰が為に戦うのか。何故にそうするのか。
 そう言う疑問に蓋をする。
 いつ戦場で壊れるか解らない、或いはいつか廃棄される運命の私達に、本当の意味での自由はない。

 蓄積したデータを元にコピーされ続けるだけの、ただの道具としての在り方は嫌。
 命令一つで動くだけの、ただの人形に成り下がるのは――もっと嫌。

 ユージ達の明日を守る為、戦い抜く。
 今現在、自分達が確かにここに在り、生きている実感を得る為、皆と共に戦う――それが私の望む在り方。


 そして、“ 運命 ”フェイトのTACを冠する私の意志――。



 ――――――――――

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