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第4章 幸せの向こう側 ついに発見!ワタルの塔

エピソード31-8

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ワタルの塔―― 2階 食堂

 技術少佐のとんでもない発言で、一同は困惑している。

「全部失敗した、とは伝えずに、真相を隠して報告するのよ。塔は今だ発見出来ず、とかね」
「それでは、ただ先延ばしにするだけじゃないんですか? 少佐殿」

 モモが少佐に問うた。
 
「みんな、聞いて。これまでの数々の奇跡は、全て静流クンがいたから成しえた事なの。かつて私も静流クンを軍で保護し、悪く言えば利用しようと画策していたわ」

 今でも同じだと思うが。一同はそう思ったに違いない。

「ここ最近の動きは異常よ。上手く行き過ぎてる。まるで静流クンがシズルカに飲み込まれてしまうのでは? と考えてしまうの」
「つまり、『神格化』という事ですか?」

 澪が深刻な顔で聞いた。

「そうね。神は『高次元生命体』だったわね? ロディちゃん?」
「肯定です、少佐殿」
「その神は、この宇宙のどこかで私たちを観察し、あるいは干渉しているとは思わない?」
「そんな神学博士みたいな事を言われても、ピンと来ないですね」

 リリィは頬杖をつき、興味無さそうに言った。

「簡単に言うと、機を待て、という事よ」
「色々と準備がいる、とうい事ですね? 少佐殿」
「そういう事。静流クンにも残りの夏休みを有意義に使ってもらいたいしね」
「アマンダさん、ありがとう、ございます」ニパァ
「ウヘ? イイのよ。真実はココにある。逃げはしないわ」ムハァ

 静流のニパをあてられ、体をくねらせる少佐。

「でも少佐、報告の内容次第では、少佐のクビが飛ぶかもしれませんぜ?」
「このミッションにかかった金額とか、結構あるんじゃないですか?」

 リリィや澪は、最もな意見を述べた。

「その時はその時。もっとやりたい事も出来たし、ね」
「辞めてどうするんです? スポンサーがつかないと研究どころじゃないですぜ?」

 ふう。と少し沈黙があったが、意外な人物が口を開いた。

「資金なら、ありますわよ!」
「ああ? ヅラお前、何考えてんだ?」

 雪乃であった。すかさずリナが突っ込みを入れた。

「雪乃さん、資金って?」
「これですわ」バサ

 雪乃が持って来たのは、ブラムの抜け殻だった。

「いやぁん。恥ずかしい」

 ブラムはわざとらしく恥ずかしがっている。

「これは『黒竜の羽衣』と言いますの」

 雪乃がそう言った後、がたん、と席を立つリリィ。

「『黒竜の羽衣』だって? いつぞやのオークションで、50億の値が付いたとか言ってたわ」
「何ですって!? ホントなの? リリィ?」
「リリィさん、お詳しいんですね? ええ、その通り。そのままでも売れると思いますが、防具に加工すれば、その倍は下らないと思いますわ」
「ひ、100億!?……是非、売りましょう!もちろん、防具に加工した後で」

 澪はノリノリで売る事を薦める。 

「けどよう、ソレは加工して静流にくれてやるつもりだったんだけどな」
「薫さん、イイですよ、ブラムだってまた脱皮するかも知れないし」
「あ、それは随分先になると思う。ごめんねシズル様」
「先って、どの位?」
「前の脱皮が60年前だったけど、まあ50年は先、かな?」

「「「うぇぇぇ!?」」」

 一同は軽くのけ反った。

「そっか、そんなに先なんだ。ふう」
 静流は落胆した。

「金か? それならよぉ、レア度はソイツよりぐっと下になるが、もっと簡単に狩れるモンスターを一杯狩ればイイんじゃねえの?」
 リナがそんな事を言った。

「異世界モンスターハンティング、でありますか?」
「そう言う事。黒は見たことねえが、赤とか緑なら結構いるぜ?」
「確かに赤は見たでありますな。アレがまだいるとは……くわばらくわばら、であります」
「防具の加工でしたら、そこの生産ギルドに頼むのがお薦めですわね」

 みんながわいのわいのやっている横で、少佐は顎に手をやり、考え事をしている。
(異世界にPMCでも作ろうかしら? 対モンスター専門の私的軍事会社)

「アマンダさん、場合によっては売ってもらってイイですからね?」
「ありがとう。でも大丈夫よ。この件は持ち帰ってじっくり考えるわ。アナタは私たちの課題を見事クリアした。その事実は覆らない」
「そう言ってもらえると、肩の荷がおります」
「残りの夏休み、楽しみなさいな」
「ありがとうございます」



              ◆ ◆ ◆ ◆



ワタルの塔―― 1階 ロビー

 静流は、塔の近くで墜落した宇宙船の付近にあった、父親の拳銃をリリイに見せた。

「で、コレなんですけど、リリィさん」
「ふむ。14年式で間違いないわね。うは、コンデションは極上だよ」

 革製のホルスターから拳銃を抜いて、状態を確かめるリリィ。

「この銃には、どんな特徴があるんですか?」
「そうねぇ。コレは軍に正式採用されたもので、私たちの型より後の量産型よ」
「レア度的には低い、と?」
「そうだね。ただコンデションは極上だから、高い値が付くと思うわ」
「別に、売るつもりは無いんですけど……ね」
「ごめん、そうだったね」

 リリィは右手でスマンのポーズを取った。
 そのあと静流は、モモに父親の事を聞いた。

「伯母さん、父さんの事、何かわからないの?」
「静クンの事か。ウチのボンクラ亭主と同じ頃よね、いなくなったの」
「ネネ先生から聞いたんだけど、高校では優秀だったって、父さん」

「ネネか。久しぶりに会いたいかな。確かに静クンは優秀だったと思うけど、掴みどころが無くて、鉄砲玉みたいな人だった。庵は引っ込み思案で、肉弾戦より頭脳戦の方が得意だったわ」
「父さんと庵さんって、双子、なんですか?」
「似たようなものだけど、違う。あえて言うと、『二卵性の双子』かしら?」
「母さんにその辺りを聞くと、すぐはぐらかされるんだよね?」
「その辺りは私もあまり言いたくはないかな。おいおい話すわ。こうしていつでも会えるんだから」
「うん。でも父さんがこの星に来たって事は、間違い無さそうなんだけど」
「私もココにいて長いけど、全然知らなかったわ」

 少しの沈黙があり、そうだ!と手をポンとやった静流。

「あとでウチに来ます? 母さん喜びますよ? 美千留も紹介したいし」
「そうね。でも少し時間を頂戴」
「そっか。わかったよ、伯母さん」
「ありがとう、察してくれて」
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