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第9章 冬の……アナタ、どなた?
エピソード51-45
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インベントリ内 休憩所 VIP席――
そのあと静流は、魔力を著しく消耗し、三人掛けソファーに薫子の膝枕で横になっていた。
「静流……もう限界よ!? ドクターに診てもらいましょう!」
「そんな大袈裟な……もうじき終わるから、大丈夫だよ……」
「薫子! 静流の看病は私がやる! 退いて!」
「忍、そんな事言ってる場合じゃないでしょ? 全くもう……」
そんなやり取りを見ていて、達也がボソッと呟いた。
「静流の奴……本当にヤバいんじゃないスか? 先輩?」
「せやな……最後のドクポも無うなってもうたし……」
「お静! しっかりしろ!」
「静流様……すいません、無理させてしまって……」
「大丈夫だから……気にしないで」
みんなの声掛けに、静流は苦笑いで応えた。
「あたし、あの先生呼んで来る!」
目の前の光景にいたたまれなくなった真琴が、決心して立ち上がろうとしたその時、部員が駆け足で報告に来た。
「皆さん! 本日のイベント、全て終わりました!」
「「よっしゃぁー!!」」
それを聞いたカナメたちは、思わずハイタッチした。
「おい静流! 終わったみたいだぜ? よく頑張ったな!」
「なんとか持ちこたえみたいやな! ヒヤヒヤさせおってからにぃ!」
カナメと達也にねぎらいの言葉をかけられた静流。
「お……終わった、の? ふぅ。良かった……穴をあけないで終われた……」
「ちょっと、静流!? 大丈夫なの?」
薫子が呼びかけるが、安堵のためか、静流の意識が薄らいでいく。
するとそこに、睦美とレプリカたちが来た。
「どうも! お疲れ様でした皆さん。 本日は予想を遥かに上回る結果に――」
睦美の挨拶も全て聞かず、忍が睦美に食って掛かった。
「睦美!? どうしてくれるの? 静流が魔力切れ起こしてるのよ!」
「ぐぇ……そ、その件につきましては……済まなかった静流キュン」
鬼の形相の忍に胸倉を掴まれ、たじろぎながら睦美が静流に謝った。
「だ、大丈夫、です。それより、レプリカのみんなは?」
「い、今連れて来た。ココにいる」
静流は横になりながら、睦美たちの方を見た。
睦美の少し離れた横で、四人のレプリカがオリジンの静流を見ていた。
「おいおい、ボク大丈夫なのか?」
「ゴメン、さっきちょっと魔法使った。そのせい?」
「多分魔力切れ起こしてるんでしょ? 寝れば治るよ……多分?」
矢継ぎ早に三人のレプリカが話しかけた。
そして最後のレプリカがイラつきながら言った。
「先生! いい加減離れてボクの本体を診てあげて下さいよ!」
「イヤよ! だって、もう過ぐ消えちゃうんでしょ? もう少し、このままでいさせてよ!」
ジンに扮したレプリカに、先ほどから抱き付いたままになっているカチュア。
ジンがカチュアを引きはがそうとしていた時、さらなる衝撃がジンを襲った。
「ジ、ジン様ぁ~!!」
「うごぉ!? な、鳴海マネ!?」
ジンに危険タックルをかまし、胸に頬ズリしてきたのは、シズムとユズルのマネージャーである鳴海ショウコだった。
「あぁ、ジン様、やっとお会い出来た……私がミフネに入社したのは、アナタにお会いする為だった……」
「ちょっとアナタ、私のジン様に気安く触らないで頂戴!」
「アナタの? 笑止! ジン様は、みんなのものです!」
「「きぃ~!!!」」
カチュアと鳴海が、ジンを挟んでガンを飛ばし合っている。
それを見ていた静流が、青い顔でツッコミを入れた。
「ジンさん、朔也さんは確かシレーヌさんの旦那さんでしたよね?」
そのツッコミに、二人が反応した。
「代表は『内縁の妻』です。戸籍上は『男』ですから、入籍は出来ません!」チャ
「思い出した! アイツめ……タダじゃおかないから!」
カチュアが伝説の闇医者『黒孔雀』を名乗っていた頃、七本木ジンのマネージャーであった三船四郎は、カチュアに頼んで『性転換魔法』で女になり、名をシレーヌと改名した。
カチュアのシレーヌへの怒りは、成功報酬であった、『ジンに会わせる』という行為が、結果的に実現しなかったからである。
ちなみに、日本はジェンダー問題には遅れをとっており、法的に性転換が認められていない事や、同性での結婚は認めれらていない。
「っていうかボク、もう疲れたから早く本体の細胞の一つに戻りたいんだけど?」
「イヤ! 消えないで……私からジン様を奪わないで!」
「私だって! たまにはワガママ言いたい時だってあるのです!」チャ
「そう言われても……参ったなぁ……」
ジンは困り果て、周囲の者に助けを求めた。
「お二人共、本物の朔也さんは、僕が必ず見つけ出しますから……信じて下さい」
静流が息絶え絶えに言った言葉で、カチュアたちが急に大人しくなった。
「……御免なさい静流クン、どうかしてた」
「私も、取り乱してすいませんでした……」
いつもの冷静な二人に戻ったかのように見えたが……
「お願い! 写真だけ撮らせて!?」ガシッ
「私も……端末の待ち受け画面、欲しいです!」ガシッ
「ち、ちょっと、コレって残業? うわぁぁ」
そう言って二人は、ジンの腕にそれぞれがまとわりつき、ジンを引きずりながら強制的に隅っこに消えて行った。
「たくましい人たちやな……」
「放って置いてあげましょう。武士の情けよ」
「レプリカよりオリジン! 早く処置しないと……」
と言った忍も、何処から手を付けたら良いか、迷っていた。
そんな時、VIP席に入って来た者がいた。
「静流クン! 無事なの?」ハァハァ
「リリィさん!? どうしたの慌てて?」
リリィは何も知らず、レプリカの静流に話しかけた。
「なぁんだ。結構元気そうじゃない? 少佐の早トチリか……」
リリィは勝手に安堵し、胸を撫で下ろした。
「少佐……? リリィさん、アマンダさんが……ココに来てるんですか?」
静流の声が聞こえ、リリィが声のした方を見た。
三人掛けソファーで横になり、青い顔をした静流が目に入った。
「へ? 静流クン!? ちょっと、大丈夫なの?」
「多分、見たままの状態だと思います……」
今しがた会話したのがレプリカだった事がわかり、大いに慌てたリリィ。
少し離れた所で、ジンに扮したレプリカと何かしているカチュアたちに、大声で話しかけた。
「ちょっとドクター!? 早く彼を診てあげて下さいよーっ!」
「今、忙しくてそれどころじゃないの! ほっといて頂戴!」
「そうです! ジン様との貴重な時間、邪魔しないで頂きたいです!」チャ
「ダメだわ、こりゃ……」
リリィは手を広げ、『オーマイガー』のポーズをとった。
そのあと静流は、魔力を著しく消耗し、三人掛けソファーに薫子の膝枕で横になっていた。
「静流……もう限界よ!? ドクターに診てもらいましょう!」
「そんな大袈裟な……もうじき終わるから、大丈夫だよ……」
「薫子! 静流の看病は私がやる! 退いて!」
「忍、そんな事言ってる場合じゃないでしょ? 全くもう……」
そんなやり取りを見ていて、達也がボソッと呟いた。
「静流の奴……本当にヤバいんじゃないスか? 先輩?」
「せやな……最後のドクポも無うなってもうたし……」
「お静! しっかりしろ!」
「静流様……すいません、無理させてしまって……」
「大丈夫だから……気にしないで」
みんなの声掛けに、静流は苦笑いで応えた。
「あたし、あの先生呼んで来る!」
目の前の光景にいたたまれなくなった真琴が、決心して立ち上がろうとしたその時、部員が駆け足で報告に来た。
「皆さん! 本日のイベント、全て終わりました!」
「「よっしゃぁー!!」」
それを聞いたカナメたちは、思わずハイタッチした。
「おい静流! 終わったみたいだぜ? よく頑張ったな!」
「なんとか持ちこたえみたいやな! ヒヤヒヤさせおってからにぃ!」
カナメと達也にねぎらいの言葉をかけられた静流。
「お……終わった、の? ふぅ。良かった……穴をあけないで終われた……」
「ちょっと、静流!? 大丈夫なの?」
薫子が呼びかけるが、安堵のためか、静流の意識が薄らいでいく。
するとそこに、睦美とレプリカたちが来た。
「どうも! お疲れ様でした皆さん。 本日は予想を遥かに上回る結果に――」
睦美の挨拶も全て聞かず、忍が睦美に食って掛かった。
「睦美!? どうしてくれるの? 静流が魔力切れ起こしてるのよ!」
「ぐぇ……そ、その件につきましては……済まなかった静流キュン」
鬼の形相の忍に胸倉を掴まれ、たじろぎながら睦美が静流に謝った。
「だ、大丈夫、です。それより、レプリカのみんなは?」
「い、今連れて来た。ココにいる」
静流は横になりながら、睦美たちの方を見た。
睦美の少し離れた横で、四人のレプリカがオリジンの静流を見ていた。
「おいおい、ボク大丈夫なのか?」
「ゴメン、さっきちょっと魔法使った。そのせい?」
「多分魔力切れ起こしてるんでしょ? 寝れば治るよ……多分?」
矢継ぎ早に三人のレプリカが話しかけた。
そして最後のレプリカがイラつきながら言った。
「先生! いい加減離れてボクの本体を診てあげて下さいよ!」
「イヤよ! だって、もう過ぐ消えちゃうんでしょ? もう少し、このままでいさせてよ!」
ジンに扮したレプリカに、先ほどから抱き付いたままになっているカチュア。
ジンがカチュアを引きはがそうとしていた時、さらなる衝撃がジンを襲った。
「ジ、ジン様ぁ~!!」
「うごぉ!? な、鳴海マネ!?」
ジンに危険タックルをかまし、胸に頬ズリしてきたのは、シズムとユズルのマネージャーである鳴海ショウコだった。
「あぁ、ジン様、やっとお会い出来た……私がミフネに入社したのは、アナタにお会いする為だった……」
「ちょっとアナタ、私のジン様に気安く触らないで頂戴!」
「アナタの? 笑止! ジン様は、みんなのものです!」
「「きぃ~!!!」」
カチュアと鳴海が、ジンを挟んでガンを飛ばし合っている。
それを見ていた静流が、青い顔でツッコミを入れた。
「ジンさん、朔也さんは確かシレーヌさんの旦那さんでしたよね?」
そのツッコミに、二人が反応した。
「代表は『内縁の妻』です。戸籍上は『男』ですから、入籍は出来ません!」チャ
「思い出した! アイツめ……タダじゃおかないから!」
カチュアが伝説の闇医者『黒孔雀』を名乗っていた頃、七本木ジンのマネージャーであった三船四郎は、カチュアに頼んで『性転換魔法』で女になり、名をシレーヌと改名した。
カチュアのシレーヌへの怒りは、成功報酬であった、『ジンに会わせる』という行為が、結果的に実現しなかったからである。
ちなみに、日本はジェンダー問題には遅れをとっており、法的に性転換が認められていない事や、同性での結婚は認めれらていない。
「っていうかボク、もう疲れたから早く本体の細胞の一つに戻りたいんだけど?」
「イヤ! 消えないで……私からジン様を奪わないで!」
「私だって! たまにはワガママ言いたい時だってあるのです!」チャ
「そう言われても……参ったなぁ……」
ジンは困り果て、周囲の者に助けを求めた。
「お二人共、本物の朔也さんは、僕が必ず見つけ出しますから……信じて下さい」
静流が息絶え絶えに言った言葉で、カチュアたちが急に大人しくなった。
「……御免なさい静流クン、どうかしてた」
「私も、取り乱してすいませんでした……」
いつもの冷静な二人に戻ったかのように見えたが……
「お願い! 写真だけ撮らせて!?」ガシッ
「私も……端末の待ち受け画面、欲しいです!」ガシッ
「ち、ちょっと、コレって残業? うわぁぁ」
そう言って二人は、ジンの腕にそれぞれがまとわりつき、ジンを引きずりながら強制的に隅っこに消えて行った。
「たくましい人たちやな……」
「放って置いてあげましょう。武士の情けよ」
「レプリカよりオリジン! 早く処置しないと……」
と言った忍も、何処から手を付けたら良いか、迷っていた。
そんな時、VIP席に入って来た者がいた。
「静流クン! 無事なの?」ハァハァ
「リリィさん!? どうしたの慌てて?」
リリィは何も知らず、レプリカの静流に話しかけた。
「なぁんだ。結構元気そうじゃない? 少佐の早トチリか……」
リリィは勝手に安堵し、胸を撫で下ろした。
「少佐……? リリィさん、アマンダさんが……ココに来てるんですか?」
静流の声が聞こえ、リリィが声のした方を見た。
三人掛けソファーで横になり、青い顔をした静流が目に入った。
「へ? 静流クン!? ちょっと、大丈夫なの?」
「多分、見たままの状態だと思います……」
今しがた会話したのがレプリカだった事がわかり、大いに慌てたリリィ。
少し離れた所で、ジンに扮したレプリカと何かしているカチュアたちに、大声で話しかけた。
「ちょっとドクター!? 早く彼を診てあげて下さいよーっ!」
「今、忙しくてそれどころじゃないの! ほっといて頂戴!」
「そうです! ジン様との貴重な時間、邪魔しないで頂きたいです!」チャ
「ダメだわ、こりゃ……」
リリィは手を広げ、『オーマイガー』のポーズをとった。
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