上 下
390 / 516
第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード52-24

しおりを挟む
ポケクリバトル会場 14:20時――

 巨大スクリーンに『START!』の文字が映し出され、決勝戦が始まった。
 それぞれのアバターが、ポケクリを召喚した。

『行け! ブルーアイズレッドドラゴン!』 ギャォォン!
『行ってこい! ガイアギアー!』グルルル! 

「ツンギレ選手、惜しげもなくブルーアイズを召喚!」
「オリジナル笑顔、略して『オリ笑』選手もドラゴン投入だ!」


「「「「うぉぉぉー!!」」」」

 
 ツンギレはのっけからブルーアイズを召喚した。
 するとオリ笑も負けじとドラゴン系をチョイスした。

『ブルーアイズ! 【メガ・ブラストファイヤー】発射!』ブワァァァ!

 ツンギレはブルーアイズに容赦なく大技を命じた。
 ガイアギアーはそれを真正面に受け、HPが半分に減少した。

「初動からフルパワーだブルーアイズ! 効果は今一つだがHPはごっそり削りました!」


「「「「わぁぁぁぁ!!」」」」

 
 オリ笑は異常なまでに冷静に次の手を打った。

『ガイアギアー! 【つるぎのまい】!』パァァァ

 オリ笑がそう命じると、ガイアギアーの周りに数本の剣が出現し、体内に吸収された。
 するとHPがいくらか回復し、技のステータスが倍に跳ね上がった。

「【つるぎのまい】の効果は、攻撃2回分の攻撃力倍化です!」
「オリ笑選手、見た目に反して手堅いゲーム進行です!」

 オリ笑からすれば、随分な言い草である。

『行くぞガイアギアー! 【ちきゅうわり】!!』ドドォン!
『な、何ィィ!?』

 ガイアギアーが放った衝撃波が地面にひび割れを作り、ブルーアイズは割れ目にはまってしまう。
 するとオリ笑のターンが継続し、次の技を繰り出した。

『ガイアギアー! 【カイザー・ナックル・ボンバー】!!』ゴォォォ
『くっ! しまった!!』

 ガイアギアーの放った渾身の一撃を受け、割れ目にはまっているブルーアイズに技が命中した。

「おっと! 【つるぎのまい】の効果で2回分攻撃力が倍のガイアギアー!」 
「何と! 拘束されたブルーアイズは技をもろに受け、力尽きました!」


「「「「わぁぁぁぁ!!」」」」


 あっさりとブルーアイズを撃破されたツンギレだったが、特に動揺している様子はなかった。

『行け! ブラッカラム!!』グワァァ

 次にツンギレが繰り出したのは、意外にもブラッカラムだった。

「おおーっと! ツンギレ選手、大方の予想を裏切り、召喚したのはブラッカラムだ!!」
「何故だツンギレ!? 大将戦に温存しないのか!?」


「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」


 興奮したクロミは、我を忘れて実況を続ける。

「ここは手堅くフェアリーのギシアンを投入するべきだろう!?」
「ちょ、ちょっとクロミ、落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか!? お前も心配だろう? シロミ」
「1ターンで引っ込める作戦かも知れないでしょう? 彼女を信じてあげて!」
「オリ笑は次にどんな絡め手を使うか、 わからないんだぞ!?」

 実況席で言い合いになっているシロミとクロミ。

「おい、放送席でなんかもめてんぞ?」ざわ…
「マイク入ってるの、わかってるのかなぁ」ざわ…

 その時、クロミのインカムに、ADから指示が入った。

「何ィ? 私がツンギレに入れ込み過ぎだとぉ?」
「そうよクロミ、頭を冷やして、 少し控えなさい」

 ADとシロミになだめられ、クロミは怒りに打ち震え、ついにキレた。


「贔屓したってイイだろ!! だってアイツは後輩! 身内なんだから!!」キーン…


 クロミの魂の叫びがハウリングを起こし、会場が一瞬凍り付いた。
 バトル中の二人の手も、不思議に止まっているように見えた。

「クロミさん……?」チョンチョン
「へ? あ……」

 シロミは自分の胸のあたりに着けているマイクを、指で指して見せた。
 状況を把握したクロミは、額からどっと冷汗が流れた。


「一旦CMでーすっ!」


 苦し紛れにそう言って右手を挙げたクロミ。 

「んなワケあるかダボが! 仕事のうなったらどないすんじゃいオンドレ!!」
「お、落ち着けシロミ! すまん、 あたしが悪かった!」

 ブチ切れたシロミがクロミの首元を掴んで激昂した。
 傍から見ると、二体の着ぐるみがもみ合っている光景が何ともシュールであった。

「何だ? 漫才かコントでも始まったのか?」ざわ…
「どうでもイイけど、試合に集中しろよな……」ざわ…

 再びしんと静まり返った会場。
 すると今度はシロミのインカムにADから指示があった。

「ひっ!?……コホン、 えー実況席からは以上です」

 シロミとクロミは、何事もなかったように無表情で席に座った。

「さぁて盛り上がってきました! フィールドに注目しましょう!」

 フィールドではブラッカラムとガイアギアーが対峙していた。
 ガイアギアーの【つるぎのまい】の効果が切れた。

『ブラッカラム! 【ルチン・ハリケーン】!』ブワァァァ

 ブラッカラムが毒の霧をまとった吐息を、ガイアギアーに浴びせた。
 するとガイアギアーの体を、紫色のオーラが覆い、ステータスに『もうどく』と表示された。

「毒には耐性のある地面系のガイアギアーだが、 猛毒を受け、ターン毎にHPを削られている!」

『ガイアギアー! 【サイコシフト】!』

 エスパーの属性でもあるガイアギアーが技を発動すると、猛毒のダメージがそのままブラッカラムに反転する、はずだった。

「毒等の状態異常によるダメージを相手に移す【サイコシフト】で毒から回復を狙った!」
「しかし相手の属性は『毒』。 結果は失敗! 技は通らない!」

『くっ!?』

「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」

『ブラッカラム! 【ブーメラン・テラワロス】!』グワァ

 ブラッカラムは大きく振りかぶり、体重を乗せた拳をガイアギアーに見舞う。

「出ました! 渾身の一撃! ガイアギアー、瀕死だ!」

 ガイアギアーはさらに毒のダメージが上乗せされ、やがて霧散した。

「ツンギレ選手! ガイアギアーを撃破!」


「「「「わぁぁぁぁ!!」」」」


 これでお互いに主要ポケクリを失った。
 オリ笑は次のポケクリを召喚した。

『暴れてこい! バキ!』ウガァァ! 

 格闘系のバキは、リザードマン系のインファイターである。

「大方の予想通り、毒にめっぽう強い格闘と鋼の属性を持つ『バキ』を召喚した!」
「残るは虫、フェアリーの『ヒロポン』ですから、当然でしょう」

『バキ! 【つるぎのまい】!』パァァァ

 オリ笑がそう命じると、バキの周りに数本の剣が出現し、体内に吸収された。
 すると技のステータスが倍に跳ね上がった。

「オリ笑選手、【つるぎのまい】を発動しました!」
「ぐぬぬ。 またもや姑息な手を……はっ、失礼しました」

『ブラッカラム! 【ルチン・ハリケーン】!』ブワァァァ

 ブラッカラムが毒の霧をまとった吐息を、バキに浴びせた。
 しかし相性が悪く、状態異常にはならず、ダメージも受けていない。

「おっーと! バキにはブラッカラムの猛毒攻撃が通らない! 効果は今一つだ!」


「「「「わぁぁぁぁ!!」」」」


 オリ笑はバキに技を指示した。 

「バキ!【千本スパーリング】!!」ババババ

 バキはブラッカラムを一方的に攻撃した。

「バキが繰り出す無数のパンチを、 正面から受けるブラッカラム!」
「このターンは受けるより仕方ありません。 耐えるんだ! ブラッカラム!」

 今の攻撃でHPを1/3ほど削られたブラッカラム。

『どおだ? 格下にボゴられる事の屈辱は? 終わりだツンギレ!』
『ぬかせ! まだ終わってない!』

 ツンギレは次の一手をブラッカラムに指示した。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,733pt お気に入り:1,162

薬の錬金術師。公爵令嬢は二度目の国外追放で最愛を見つける。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:489pt お気に入り:1,903

ホロボロイド

SF / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:0

ある工作員の些細な失敗

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:1,249pt お気に入り:0

宇宙は巨大な幽霊屋敷、修理屋ヒーロー家業も楽じゃない

SF / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:65

さよならイクサ

現代文学 / 完結 24h.ポイント:695pt お気に入り:0

処理中です...