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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-31

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宴会場『プロメテウス』の間

 紆余曲折の末、『男体盛り』の勝者がヤングチームはルリ、アダルトチームはジル神父に決定した。
 隅っこの特別席には、それぞれの勝者たちが甘いひと時を過ごしていた。
 
「茶碗蒸し食べるかい? 口、 開けて?」
「あ、 あ~ん……」
「ボクがフーフーしてあげたから、 熱くないでしょ?」

 ニッコリと微笑んだジンは、茶碗蒸しをすくったスプーンをゆっくりとジルの口にもっていく。

「どう? 美味しい?」
「美味しい……さ、 最高です」

 ジンに茶碗蒸しを食べさせてもらっているジルは、メロメロになりながら神に祈った。 

「おお主よ! 感謝いたします!」

 そんなやりとりを見ているアダルト勢。

「あぁ……ジン様ぁ……」
「あんなにデレデレして……介護されるにはまだ早いでしょ!?」
「変態神父めぇ……きぃ~っ!」

 その隣ではルリとダッシュ7が座っている。

「どうだ? 辛くないか?」
「わ、私的には逆の方が……ブフゥ」

 ルリは今、胡坐をかいたダッシュ7の股間に座らされている。
 つまり、様式こそ違うが『人間イス』状態であると言えよう。

「意識が……飛びそうですぅ……」
「それはいかん、 拙者にもたれるがよい」
「たくましい、 熱い胸板……んほぉ」

 予想通りヤング勢も文句たらたらだった。

「ルリ殿! 胸板スリスリ……羨まし過ぎますぞ!?」
「添い寝確定なんですよね? デレデレしちゃって……」
「おのれルリ! とっとと落ちやがれ! この色ボケがぁ!」

 残った者たちは皆、口をとんがらせて不満げだった。

「くうぅ……不覚」
「つまんなぁい! もう部屋に帰って寝ようかなぁ……」

 ココナは悔しがり、薫子は駄々をこねた。

「お姉様、 まだお帰りは早いと思いますよ? ヌフフ」
「どう言う事よ睦美?」 

 睦美の意味深な言葉に、薫子は興味を示した。

「残念ながら『当たり』を引けなかった皆さん! 朗報です!」ビシッ!

 睦美はそう言ってポーズを取った。
 一同が睦美に注目した。

「これから行うビンゴゲーム、『特賞』は何だと思いますぅ?」

 睦美はそう言って、一同を見渡した。

「え? まさか……そう言う事?」ざわ…
「ま、 まだチャンスが?」ざわ…
「期待して、 イイんでしょうか?」ざわ…
  
 ざわめき始めた一同に、睦美はドヤ顔で言い放った。

「ビンゴの『特賞』……それは、 推しと過ごす、 愛と情熱の聖夜……『下剋上チャンス』です!」ビシッ!



              ◆ ◆ ◆ ◆



宴会場『ダイダロス』の間

 入り口から薫が戻って来た。

「よっ! 待たせたな!」
「お待たせぇ♡」

 薫は知らない女性と腕を組んでいた。
 その恰好は、式神コンパニオンと同じ、青いビニールレザーの超ミニスカート婦警姿だった。
 どことなく薫に似た顔立ちの、グラビアアイドル並みのプロポーションだった。
 ラチャナは招かれざる11人目のコンパニオンに驚いた。

「ち、 ちょっとアンタ誰?」
「補充人員の『カオル』でぇ~っす♡」ニコッ

 カオルと名乗ったコンパニオンは、小悪魔スマイルで甘ったるい声でそう言った。

「アニキ…… 誰です? その『G』以上確定の、 超ウルトラハイパースーパーレアのご令嬢は?」

 達也はカオルを舐めるような視線で見ながら、興奮気味に薫に聞いた。

「おう。 その辺で拾ってきた♪」
「そ、そんなバカな! こんな上タマがその辺の道端に落ちてるワケないッス!」

 薫の言い草に、達也は口をパクパクさせながら食い下がった。

「違うよ達也。 多分薫さんが生み出した【レプリカ】だよ。 ですよね?」
「バレたぁ? あったりぃ♡」

 カオルは薫から離れ、達也に抱き付いた。 

「ンフ♡ 達ちゃんカワイイ~♡」

 カオルは豊満な胸をグイグイと達也の顔に押し付けた。

「むぐっ!? はふぅ、 イイ匂い……」

 直ぐさまメロメロになる達也。
 瞬時に落ちた達也の状態を見て、静流は薫の企みに気付いた。

「薫さん!? まさか八郎司令を【魅了】を使って篭絡するつもり!?」
「そのまさかっ♡ 要は言う事聞かせればイイんでしょう? そんなのチョロいよ♪」

 カオルは悪びれもせず、ニコッと小悪魔スマイルを一同に向けた。



              ◆ ◆ ◆ ◆



保養施設内 バー『ジャムル・フィン』
 
 キャリーのヤケ酒に付き合わされているジョアンヌとカミラ。

「アンタたち? 飲みが足りないんじゃなくて?」

 異常なペースで酒をあおるキャリーに、顔を引きつらせる部下たち。

「ママ、 ペース早過ぎだよ!?」
「珍しいわね。 ママがこんなに乱れるの……」

 キャリーは今回のミッションを引き受ける報酬として、ギャラと共に提示された『十代の少年を紹介してもらう』という特典があった。
 しかし将校夫人たちの策略で、キャリーのミッションは遂行出来なかった。
 ギャラは夫人たちから受け取ったものの、肝心の特典は水泡に消えてしまったのだ。

「あきらめきれない! だって『初物』よ!? 最近じゃ新兵もスレた奴ばかりだし、 今回の純情BOYはレア中のレアだったの!」

 そう言ってキャリーはテーブルを叩き、悔しがった。
 半ば呆れ顔のジョアンヌがキャリーに聞いた。

「何ですか?『レア中のレア』って?」
「聞いて驚くわよ?……都市伝説級の逸材。 天然桃髪の『初物』なのよ!? スゴいでしょう?」
 
 ジョアンヌはあるワードに引っかかりを感じた。

「天然の……桃髪?」
「知ってるかしら? 女神を召喚出来る、 桃色の髪の少年よ!」

 キャリーの言葉に反応し、カミラはジョアンヌと顔を合わせた。

「ん? それって、 シズルー大尉の事?」ゴニョ
「幾つか当てはまるけど、 少年ではないわね。 親戚かしら?」ゴニョ

 そんな二人を見て、キャリーは怪訝そうな顔で二人に聞いた。

「何よアンタたち? もしかして、 お知り合いなのぉ?」
「い、 いえ。 その条件に幾つか該当する方を存じ上げているだけです……」
「そうそう。 大体、 大尉殿が童貞なワケないしね……」 
「……ふぅん」
 
 慌てて否定するジョアンヌたちに、キャリーが興味を示した。

「ん? 気になるわね……話してみなさい?」
「え? どうしようジョアンヌ、話しても大丈夫かなぁ?」
「ご多忙な方だから、もうココにはいないでしょう」

 ジョアンヌは自分とシズルーとの出会いから今日までの事を簡単に話した。

「何ですって? あの焼き印が消えたって?」
「本当なのママ。 嘘みたいにきれいさっぱり……」
「大尉の『施術』は、 数々の奇跡を起こしています」

 キャリーは二人の話を聞いて、不敵な笑みを浮かべた。

「面白そうね……紹介しなさい、 私に♪」


「「ええっ!?」」


 キャリーの無茶ぶりに、二人は動揺した。
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