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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-40

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宴会場『プロメテウス』の間

 薫子と忍がビンゴゲームを途中で棄権した為、残ったメンバーは以下の者だった。

   ・篠崎イチカ   ・上條 カナ子  
   ・サラ・リーマン ・ニニ・フジサワ 
   ・鳴海ショウ子  ・三船シレーヌ
   ・永井 澪    ・工藤美紀
   ・植木 瞳    ・ニナ・イシカワ
   ・小松右京    ・メルクリア

「ねぇねぇ、早く続きやろうよぉ!」   
「そうですよ! 今この瞬間も、あそこでは……」

 美紀が続きを催促すると、鳴海が奥の方を見ながら睦美に言った。
 鳴海の視線の先には、ルリとジルにそれぞれのレプリカが接客していた。

「ベタベタするな! 鬱陶しい、 離れよ!」
「嫌です! 少しでもアナタ様の傍にいさせて下さいまし♡ 私の……メスの香りをベッタリと付けて差し上げます♡ むはぁ」

 ルリは執拗に自分の身体をダッシュ7の胸にこすりつけていた。

「おお神よ……私から朔也を奪わないで下さい!」
「大丈夫! ボクは何処にも行かないよ? 子ネコちゃん?」

 必死に祈りをささげるジルに、ジンのレプリカは優しい声をかけ、ジルの肩を抱いた。

「きぃーっ! 早く続きを! アイツから朔也を取り戻すの!」

 ブチ切れたシレーヌが、悲鳴に近い声で睦美に進行の再開を命じた。

「わかりました。 それでは再開します!」ジャラッ

 そう言って睦美はビンゴマシンに手をかけた。



              ◆ ◆ ◆ ◆



エントランス ロビー

 プロメテウスの間を出て、静流を探し回っている薫子と忍。

「向こうの宴会場はもう終わってるのよね?
「そのあとロビーまで一緒だったって、 ツッチーが言ってた」

 ロビーに着き、辺りを見回す二人。
 すると、ソファーに座っている浴衣姿の艶っぽい女性を見つけた。 

「ちょっとアレ、 怪しくない?」
「確かに。 でも、 静流がいない……」

 湯屋っぽい女性は、大きなため息をついて、天井をぼんやりと眺めている。
 二人が様子を窺っていると、視線に気付いて二人を見つめた。

「ん? 私に何か?」
「アナタ……フジ子さん?」
「は、 はい。 フジ子は私ですが……」

 訝し気な表情の薫子の問いに、これまた訝し気な表情のフジ子。
 フジ子は薫子を見て、ある事に気付いた。

「ん? その桃色の髪、 まさか……」
「そう。 私は五十嵐家の者よ」
「では、静流様の?」
「姉に限りなく近い、 従姉だけど?」

 それを聞いたフジ子は、顔をほころばせて手をポンと叩いた。

「そうでしたか! 私、 峰岸フジ子と申します」ペコリ

 そう言ってフジ子はうやうやしく頭を下げた。

「これはこれはどうも。 五十嵐薫子です」ペコリ

 フジ子の綺麗なお辞儀に、薫子はかしこまってお辞儀した。
 そんな二人に、忍が割り込んで来た。

「静流はドコ? 隠すと為にならないよ?」
「静流様は……ある所にいらっしゃいます……」

 フジ子は事の経緯を二人に説明した。

「何ですって!? アナタよりもヤバい奴じゃない!?」
「それほどでも……私はヤバくないですよ? ただ本能に正直なだけで……」ポォ
「ちっとも褒めてない!」
 
 呆れ顔の忍は、首に提げていた黒い勾玉を出した。

「埒が明かない! 静流と念話する!」

 忍は静流に念話をかけた。

〈静流! 応答してっ!〉
〈忍ちゃん!? どうしたの?〉
〈静流は無事なの? 今ドコ?〉
〈今は……2階のバーにいるよ。 シズルーとしてね〉

 忍はそこまで聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。

「静流、 無事だった……」
「良かったぁ……それで? ヤバいのとはどうしたの?」
「え? 聞いてみる」
「もうイイ! 私が聞く!」
 
 忍の対応に痺れを切らした薫子が今度は静流に念話をかけた。

〈静流!? 大丈夫?〉
〈薫子お姉様? 今度は何?〉
〈今、 誰と会ってるの?〉
〈前に知り合った人が所属している部隊の隊長さん〉
〈その人って、 フィッシャーマン中尉?〉
〈そう。 よく知ってるね? 有名な人?〉
〈ええ。 とびっきりヤバい人らしいわ……〉
 
 薫子の顔が青ざめたのを見て、忍たちは察した。

〈静流! 適当な理由を付けてそこから出――〉
〈ごめん、 中尉が矢継ぎ早に質問をぶつけて来る。 取り敢えず切るね?〉ブチ

 静流が一方的に念話を切った。

「あっ! 切られた……」

 薫子が呆然としていると、待ってましたとばかりにフジ子が勾玉を取り出した。

「アンタも持ってる? 何で?」

 フジ子の勾玉を見て驚く忍に、親指を立てたフジ子。

「次は私が! もしもし? 静流様? もしもーしっ!」

 フジ子が静流に念話をかけるも、全く通じなかった。

「やられた……拒否られてる……」

 忍が薫子と顔を合わせ、うなだれた。

「拒否……ですって!? 私は静流様から拒否されているのですか?」

 二人の様子を見て、愕然となるフジ子。

「違う。 私たちがいつもうるさくするから、 静流が防衛手段に『拒否機能』を付けたの……」

 忍が寂しそうにフジ子にそう言った。
 静流が勾玉を渡した直後、忍や薫子、それにヨーコや澪などから連日連夜の念話の応酬に耐えかねた静流が講じたものだった。

「良かった、 本当に良かった……私は、 嫌われたワケでは無いのですね?」
「んなもん、 知らんがな!」

 手を組み、祈るようなポーズで涙ぐんでいるフジ子に、薫子が全力でツッコんだ。
 フジ子は我に返ると、今の状況を整理し、一つの答えを導き出した。

「はっ! 大変です! 静流様の貞操が……」



              ◆ ◆ ◆ ◆



保養施設内 バー『ジャムル・フィン』

 迂闊にもDTだと言う事を露呈してしまうシズルーに、キャリーのシズルーを見る目が変わった。

「……私はツイてる。 聖夜のプレゼントにSSS級のDTと会わせてくれた。 神様に感謝ね……フフ、 フフフフ」

 キャリーの全身に艶が現れ、今にも誘惑光線を発射しそうになっている。
 そんなキャリーの豹変ぶりに、ジョアンヌたちは動揺した。

「マ、 ママ? 冗談も程々にしてよ?」
「あぁ……今宵、 私たちは結ばれるの♡ 『神の祝福』が、私の中で∞を描くのよ♡ ぬふぅん」

 カミラを無視し、一人で勝手に盛り上がっているキャリーに、ジョアンヌは拳を強く握った。

「そんなの……許すワケ無いじゃないですか!」

 ジョアンヌは肩をプルプルと震わせ、キャリーに言い放った。

「許す? そんな事お前が決める事じゃないだろ?」

 ここまで黙って静観していたシズルーが口を開いた。

「おい、 先ほどから何を揉めているのだ?」
「シズルー様! 大丈夫です! シズルー様は私が守りますっ!」

 興奮気味のジョアンヌがそう言って親指を立てた。
 暫しの沈黙の後、シズルーが動いた。

(何かヤバい雰囲気だな……帰るか)
「よくわからんが、そろそろ引き上げる……」スッ

 立ち上がったシズルーに、キャリーが不敵に笑いながら言い放った。

「私と……勝負して!」
「何?」

 訝し気な顔のシズルーに、キャリーは続けた。 

「私が勝ったらこの後の時間、 私に頂戴?」

 部下たちが慌てだした。

「ママ!? 何を言ってるの?」
「いい加減にして下さい! 怒りますよ!?」
「あら? 私は大真面目よ?」

 シズルーはキャリーに聞いた。

「何で勝負するつもりだ?」
「シズルー様!? 聞く必要ありません!」

 驚いたジョアンヌがシズルーを制した。
 キャリーは不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと口を開いた。

「指せるのよね? 『軍人将棋』ウフ♡」
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