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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-62

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保養施設内 宿泊棟 『デルフィニウムの間』

 モモは、静流が生み出した七本木ジンのレプリカに宿った自分の従兄である七本木ジンこと荻原朔也に再会した。
 かなり前に行方不明となった荻原朔也の事情徴収を執り行う際、モモは野次馬を排除し関係者のみの傍聴を希望したが、傍聴希望者の反感を買ってしまい、傍観者の関係で仕方なくインベントリにて執り行う事となった。

「静流サマ! もうすぐ会場の準備が出来るニャ♪」
「ロコ助!」

 備え付けの冷蔵庫から、インベントリのコンシェルジュであるロコ助が顔を出した。
 シズムのスキルで、冷蔵庫とインベントリを繋いだのだ。

「伯母さん、会場の方はもうすぐ用意できるってさ」
「会場って……何か事が大きくなってるわね……」

 静流がそう言うと、モモは困惑した。

「仕方ないわよ。 往年の大スターが『空白の数十年間』を語るんだから」

 そんなネネは、好奇心からか若干浮かれ気味だった。
 それを聞いていた薫は、首を傾げながらジンに話しかけた。

「朔也のアニキ、折角だから浴衣じゃなくてもっと気の利いた格好すればイイんじゃねぇの?」
「う~んそうだな……こういうのはどうかな?」パチン

 ジンがそう言って指パッチンすると、浴衣が金色に光り、瞬時に形を変えた。
 最初の衣装は、海軍の制服姿だった。 

「これはどうかな?『愛と青春の朝立ち』の主役をやった時の衣装」
「う~ん、 何かおカタい感じがするなぁ」

 ジンの軍服姿を見た薫が、首を傾げながらジンに言った。

「じゃあこれは? 『ウエスト・サイズ物語』のレオパルド!」

 次に黒シャツ赤ズボンのチンピラ風スタイルを披露した所で、ジンは首を傾げた。

「さっきよりは増しかな。 でもなぁ……」

 薫には今一つだったようだ。

「あとは……さて、 何かあったっけ、 モモ?」
「私にそれ聞く? そうね……ごにょごにょ」
 
 ジンに聞かれたモモは、少し顔を赤くしながらジンに耳打ちした。

「ああ! アレね。 わかった、 それで行こう♪」

 どうやら衣装が決まったらしい。
 そんな様子を見て、静流がジンたちに声を掛けた。

「では、 そろそろ会場に行きますか?」
「わかったわ。 行きましょう」

 その時、薫が眉をひそめて辺りを見回した。

「待て静流……何か感じないか?」
「え? 僕には何も――」

 異変は部屋の奥の方で起こっていた。

「……てい……どうてい……」
「キャ、 キャリーさん!?」

 ユラユラとベッドから起き上がって来たのはキャリーだった。
 そしてもう一人、起き上がった者がいた。 

「もっと……もっと私を……愛して下さい……」
「フジ子さんまで?」

 二人とも酩酊状態のようで、とても話が通じる状態ではなかった。

「ハハッ まるでゾンビみてぇだな?」
「そこまで執着するって、 もはや尊敬するわ……」
 
 薫が爆笑していると、モモは呆れ顔で言った。
 そんなキャリーたちを見たジンは、少し考えた後、みんなに告げた。

「静流、みんなを連れて先に行ってくれ」 
「で、 でも……」

 静流は戸惑っていたが、薫はそんな静流の肩を叩いた。

「ココはアニキに任せとけって。 ほら、 先に行くぞ!」
「は、 はい。 わかりました……」

 静流たちは次々と冷蔵庫の中に入って行った。
 
「おっとぉ! キミは残ってくれたまえ♪」 
「へ? ダ、 ダンナ……」

 ジンが引き留めたのは、同じレプリカの身体である弥七だった。

「ひと仕事してもらうよ。 イイね?」
「わかりやした……こうなりゃヤケだ」

 弥七は覚悟を決めた。



              ◆ ◆ ◆ ◆



インベントリ内 特設会場

 冷蔵庫を抜けると、体育館程の広さの空間に出た。
 ステージらしき場所の上には、『七本木ジン様 凱旋記念座談会 特設会場』と読める。

「うわぁ……こんなに集まったんですか?」
「ヒュウ。 みんな興味深々だな? 朔也のアニキの武勇伝をよ」

 静流と薫は感嘆の声を上げた。
 会場には今回の旅に同行した殆どのメンバーが集められていた。

「静流様ぁ! こちらに席をご用意しています! ささ、こちらに♪」
「えっ? あ、あぁ……」

 駆け寄って来た左京が、静流の手を引いてある場所へ連れて行く。

「おっと、 アニキはコッチだぜ!」
「お? おぉ……」

 薫を呼び止めたのは、リナと雪乃だった。

「リナ? 雪乃もか。 お前たち、 もう動けるのか?」

 薫はこの二人が普通にしている事に違和感を覚えた。

「おう。 もうバッチリだぜ」

 そんな薫を見て、リナはドヤ顔で言った。

「薫? 私はまだ充電が足りないみたい。 リナと違ってね♡」ピト

 雪乃はそう言って、薫の右腕に抱き付いた。

「おいズラ! てめぇ何してんだ? あぁ!?」
「何って? 見ての通り充電よ?」ぎゅう

 リナが顔を真っ赤にして雪乃を怒鳴るが、雪乃は涼しい顔で薫の腕を抱きかかえている。

「だったらアタイも充電しないとなっ♪」

 リナはすかさず薫の左腕を抱きかかえた。
 そして二人が珍しくシンクロした。

「「それもこれも、薫(アニキ)のせいだからねっ♡」」

 宴会の時、この二人の魔素を使って自分の魔力を補填した事を指摘され、薫は苦笑いした。

「わぁったわぁった。 俺が悪かった」
「ウム。 わかればよろしい♡」

 両腕に満足そうにしがみついている二人を見て、薫がこぼした。

「ったく、 お前らなぁ……」 



              ◆ ◆ ◆ ◆



保養施設内 宿泊棟 『デルフィニウムの間』

 静流たちがインベントリに移動した為、部屋にいるのはジンと弥七の他、トランス状態のキャリーとフジ子、静流の施術でノビたままのジョアンヌとカミラがいた。

「お待ちどう♪ さて、 何して遊ぼうか?」

 ジンはニコッと微笑みながら、ユラユラとゆっくりと左右に揺れているキャリーたちに話しかけた。

「DTじゃない……けど、 澄み切ったオスの匂い……アリだわ♡」
「静流様のもぎたての果実のような瑞々しさとは違う、 何とも言えない心地よさ……あぁ、 素敵♡」

 ジンは二人が座っているキングサイズのベッドに乗り、二人を優しく抱き寄せた。

「今まで苦しかったろう? キミたちの渇いた泉に、 ボクが潤いを与えよう♪【エストロゲン】」パァァァ

 するとジンの両手から淡い紫色のオーラが発生し、その手で二人の頭を優しく撫でた。


「「あっ……はぁぁぁん♡♡♡」」

 
 頭を優しく撫でられた二人は、そのままベッドに倒れ込んだ。
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