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「もしかし、2人とも、験済み、なの?」
まさか、と思いながらも思いっきって質問した。
「当たり前でしょ」
「当たり前です」
至極当然の顔でさらっと答えられた。
「えーーーー!聞いてないよ!!そ、そんな、そんな、いつよ!知らなかった!!」
あまりに驚いて持っていたカップからお茶が少し零れてしまい、慌てておしぼりで手を拭いた。
「あら、私は前に今は付き合いしてタサャーの時よ」
平然と、ウララが答えてくれたけど、確か半年しか付き合ってなかったし、今は違う人と付き合っている。
「私は、今付き合ってるあいつよ」
当たり前でしょう、とハーバルも答える。
今といえば私と同い年のシューマンだけど、付き合ってもう2年にはたつからまあ、そこは普通なのかもしれないが、いつの間に2人はそんな事をしていのか、全く気づかなかった。
「その歳になってまで誰とも付き合った事がないのが、化石みたいですものね」
「ブライアン様をガチで狙ってる人は後生大事に守ってるけど、 皆おかしな人ばっかりで、普通は諦めるよ」
「言えてますね。性格に難アリか、こういう言い方はよろしくありませんが、家が貧乏な方とか」
「あとは、権力欲しい人とか、ともかく常識ある人なら、あんなに女に興味なくて、楽しくなさそうな人選ばないよ」
多分、私はおかしくないとは、思う、けど、やっぱり酷い言われようだ。ブライアン様を皮肉っているというよりも、私をバカにしている。
だが、言われてみれば独特な女性が多かった。ブライアン様の声をかける女性は、容姿や肢体はともかく利己的な性格の女性が多かったような気がする。重視して見た訳では無いから一概にはいえないが、まあ、確かに、うーん、変わった人ばかりだったな。
「仕方ありませんわ。フランは本当に単細胞のようにマクロを好きだったんですもの。それが良かったんです。結果オーライですわ」
単細胞、とは酷い。せめて、素直と言って欲しいよ。
「ほんと。婚約イコールお付き合いなんて、フラン以外に聞いたことないもんね」
「けど、それがフランなんです」
なんだか2人は納得した顔で満足そうに私を見てきたが、へこむんだけど。
でもね、そんな簡単にするもんじゃないでしょ、と思う私は、やっぱり古いんだろうか?
「あんな最低男の餌食にならなくてよかったよ。何人と遊んでるやら」
「その点は、私達は相手にしませんでしたからね」
気になる一言がまたさらっと出てきた。
「当たり前でしょ。フランが自分の事好きだって知ってて、私達に声掛けてくるって、頭おかしいわ」
「ま、まって!!」
何?と2人が私を見る。
「マ、マクロは2人に声掛けたの!?聞いてないよ、そんな事。なんで教えてくれなかったの!?」
愕然とした。
マクロが人気があるのは知ってるし、色んな人女性が、声をかけていたのは知っていたけど、それに対してマクロはきちんと断っていた。
そりゃ、私の見てない所では、知らないし、婚約してないから、口出せる事じゃないけど、まさかこの2人に声をかけるなんて、有り得ない!
「フランが悲しむの知ってるから言わないよ。あれだけ、マクロ、マクロとバカの1つ覚えみたいに言ってて、本気で好きなのを私達は知ってるからさぁ」
「同感でございます。恐らくそれを知ってるから声を堂々とかけてきたのでしょうね。私達がフランを悲しませたくないと、あえて言わないと分かってるからでしょうね。ああ、なんて姑息で、女の敵なんでしょうね」
「だからフランの婚約を阻止しようと計画してたけど、無駄に終わって良かったね、ウララ」
「はい、ハーバル。本当にねぇ、最低男ですわ。この間なんて、学園の隅で、マクロと誰かが口付けしたとかしないとか、噂が出ていましたものね」
「それ、私と同じクラスのティラよ。わざわざ私に教えに来たもん。ねぇ、お姉様が婚約する人、誰だったかしら?もしかして、私と遊んでいる人じゃないわよね?もしそうなら口付けくらいは許されるわよね、とか言ってきたんだよ。なんかさぁ、マクロの遊び相手に選ばれるのが女として格が上がる、みたいな変な空気があるんだよね」
「そうそう、なまじ公爵子息ですからね。でも、夜の方がとても上手いのかもしれませんよ」
「かもね。それぐらいはないと、生きていけないでしょ。頭悪いしね」
「ふふっ、確かに」
2人の会話に、頭がつい行かなかった。
これが本当に、崩れていく、という感覚なんだと思った。
今までのマクロが・・・大好きだったマクロが・・・。
「見る目がなかったんだよ、フランはね」
落ち込む私に、バッサリとバーバルに切られた。
もう少し、優しく言ってよぉ・・・。
色んな意味でへこんでいる私に、さぁて晩御飯食べようか、とバーバルが言ってきた。
テーブルにまだ沢山の菓子が残っている事を言うと、それは、夜食ですわ、とウララに言われた。
そう言うと、召使いに晩御飯を部屋に運んでくれるように頼んでいた。
 
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