[完]【18禁】不器用な王子の愛情表現に、伯爵令嬢は戸惑いしかない

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お茶の準備をしてくれる2人を見なら、やっと人心地つけたと気分だったのに、今度はブライアン様が扉を叩かず荒々って入ってきた。
明らかに不機嫌な顔で、ずかずかと1歩の歩く幅が大きく、直ぐに私の近くに来た。
「やはり大丈夫ではなかった！ベンジャに聞いたが、かなり酷く痣になっていると聞いた。何故、その時に王宮に使いを出さなかったんだ！？」
声を抑えながらも怒っているのがひしひしと伝わってきた。
「いや、ですから、皆様大袈裟過ぎるのです。それに、私よりもハーバルの方が酷く叩かれていましたし、些細な事でブライアン様のお手を煩わせることでは無いと思います」
慌てて立ち上がり、否定したが私の言う事は既に信用がない上に、どうも些細な事、というのが気に入らなかったようで、逆に怒りに雫を垂らしたようだった。
より、目が吊り上がったのだ。
「いいえ、フラン様！あの傷は大変酷いものです！ねえ、イルシーバ」
「その通りでございます、ブライアン様！あそこまで腫れるとなるとかなりの力を加えなければそうはなりません」
アイシー、イルシーバは私を庇護しているつもりなのだろうが、私にしたら余計な一言だ。
その後、冷や汗が出る程2人は私の傷の酷さと、カレンのこれまでの非常識さを訴え出しこのままだと、私に対してより辛辣な被害を与える、と訴えだした。
聞いていて、カレンが王宮でどれだけ横柄で自己中的で、嫌われているのかわかった。それはアービン公爵様も同様のようで、王宮ででの仕事にも悪影響を及ぼし、また、従者に対する扱いも酷いようだった。
「よく分かった。アービン公爵家にはそれ相応の処遇を課すことにする。子の責任は親に全てある。また、ハーバルの言うように慰謝料請求も当然含む」
冷静で射抜くような声に、ふつふつと怒り浸透の感情が見え、恐ろしかった。
それもハーバルったら、慰謝料請求をブライアン様に頼むとは何処までずる賢いのか。これはかなりの額を要求されるな。
「良かったですね、フラン様」
「大事なフラン様これ以上傷がつきましたら、ブライアン様が暴れそうですものね」
「大事？」
また気になる一言につい、口を突いて出てしまった。
「そうでございます。私達はフラン様のお付きの者になるのにどれだけ努力したことか、ねえ」
「本当に。ブライアン様の」
「余計な事を言うな」
ブライアン様が少し慌てて2人の口を塞いだが、それを2人は面白がるように楽しそうに微笑んだ。
気のせいかブライアン様の頬が赤くなっていたような気がした。
「と、ともかく、君は婚約者なのだ。その君に何かあれば私が対処するのが義務だ」
義務。いつもの感情の少ない言い方に胸が詰まった。
「ブライアン様、義務、というのは少し硬すぎです。公務ではありませんのでもう少し、素直な言葉の方が女性には宜しいかと思います」
「フラン様のお顔が曇りましたよ」
気持ちが顔に出ていたようで、2人に図星を突かれ気まずくなり、少し驚いた表情のブライアン様から目を背けた。
重たい沈黙が流れた。
何か甘い言葉を求めたい訳では無い。だが、 今のように義務、と言われるのは寂しすぎる。頭で、この婚約に愛はないと分かっていても、まだ心は準備出来ていない。
ブライアン様の一言一句に右往左往してしまう自分が、みっともなかった。
「・・・お茶でも飲まないか？」
ブライアン様が小さい声で聞いてきた。
「そう、ですね」
その方がまだ時間が潰せるかもしれない。だが、本心を言えば、ブライアン様には部屋から出て言ってもらい、アイシーとイルシーバと3人でお茶を飲みたかった。
心配して貰って嬉しかったのに、義務だと言わてしまい、落ち込む気持ちを感じたくなかった。
それは、私が微かでもブライアンに期待した重さの分だけのしかかる。
返事はしたもの体が動かなかった。
「フラン様、お疲れでしょう？お座りください」
「ブライアン様も、こちらへどうぞ」
見兼ねて2人が空気を変えるように穏やかに声を掛けてくれた。頷き、ブライアン様の顔を見ること無くアイシーに促され座った。
ブライアン様も言葉なく、私の前に座った。
「直ぐにお茶をいれますので、お待ち下さい」
イルシーバが暖炉で温めているポットを取りに行き、アイシーがワゴンに乗っている菓子を机に並べだした。
ふと、賑やかな声が聞こえた。
ブライアンも気づいたようで、急に立ち上がると扉に向かって歩き出した。