ウィッチ・ザ・ヘイト!〜俺だけ使える【敵視】魔法のせいで、両親に憎まれ村を追放されました。男で唯一の魔術師になったので最強を目指します〜

(有)八

文字の大きさ
11 / 44
序章 魔術師の誕生

11話 旅支度

しおりを挟む
「おじさん、おばさん! カナタくんを私にください!」

 ゴッという鈍い音がした。頭を抱えてうずくまるのはユルナだ。

「嫁を貰いに来た男みたいな事言わないの!」
「まあまあ……リオン嬢ちゃん、いきなり殴らんでも」

 俺からしたら平常運転の二人のやり取りを、おじさんは苦笑いでなだめている。

 カナタを含めた三人は、俺を冒険者仲間として迎え入れるために、律儀にもおじさん達へ承諾を貰いに来ていたのだ。

「……ユルナがタクトと結婚するとなれば当然夫婦としての営みを……身長差がかなりありますから、ユルナがリードする形でしょうか……」

 ゴッ(二回目)同じ音を出してうずくまるのは、カナタだ。持病の耳年増が発症しかかっていた。

 俺はこの人達と一緒で本当に大丈夫だろうか? そう考えたのは俺だけじゃない、おじさんとおばさんも似たような顔をしていた。

 おじさんたちの一抹いちまつの不安を取り払うべく、リオンが真面目な顔をした。
 目つきをキリっとして背筋を伸ばすと、深々と頭を下げる。ちょっとやりすぎなんじゃ? と思うほどの真面目アピールだ。

「おじさん、おばさん! タクトさんを私たちの仲間に迎えさせてください!」
「あー……俺もこいつも別にタクトの親ってわけじゃねえしな。連れてくっつーのは構わねえんだけどよ……」
「旅にはどうしても危険が伴うわ。あなた達がこの子を守っていくことになると思うけど、大丈夫?」

 元冒険者だったおばさんが心配するのは、それが大部分だろう。

 旅の道中モンスターに襲われて、対抗手段のない行商人の男だけが亡くなってしまった……なんて話はよく聞く。
 その点において、魔法が使える俺はまあ、なんとかなるだろうと、少し楽観視していた。二人には話せないけど。

「大丈夫です。タクトさんは勇気も気概もある人ですから。ファイアーバードの群れを討伐できたのも、本当はタクトさんの働きがあったからなんですよ」
「えっ!!」
「それは本当かッ? なんでぇ意外と漢気おとこぎあるじゃねえかボウズ!」

 嘘じゃないんだけど、なんか騙してる気がして申し訳ないな……。
 おじさんは腕を組むと、白い歯を見せて笑う。

「正直、店の人手が減るのは惜しいが……ここまで言って貰えてんだ。行ってこいよッ!」
「お嬢さんたちに迷惑かけないようにね。それに困ったらいつでも帰っておいで。アンタの家はここだと思っていいんだよ」
「おじさん……おばさん……」

 村を追放され、親も友人も失くして途方にくれていた日々を思い出した。

 この半年、気づけば家族同然に俺を扱ってくれたおじさん、おばさん。
 岩山での出会いから、親しくなったリオン、ユルナ、カナタ。

 いつの間にか、一人じゃなくなってたんだな。俺。

「タクトが泣いているのです」
「バカ! 泣いてねーよ!」
「お姉さんの胸の中で存分に泣くがいいぞ!」
「それはもういいよ……!!」

 店内に笑い声が響く。
 憎しみの魔女がくれた力は、『意外と悪いもんじゃない』そんなふうに思えた。

「そうと決まれば、旅に出る準備しなきゃね!」
「タクトも、そんなのような服では格好がつきません。お店で買い揃えましょう」
「そうだな」

 冷静に返したが実のところ、俺の心は浮き足立っていた。
 冒険者として魔術師として、格好は大事だ! 杖にしようかな? いや水晶玉というのも悪くない。服も、カッコいいローブなんか羽織ちゃったりして……考えただけでワクワクしてきた。

 俺はこれからの旅路に思いをせながら、三人の後について店を出ようとする、と。

「いってらっしゃい」
「気ぃつけてな」

 二人はいつものように声を掛けてくれる。
 その声には、少しだけ寂しそうな感情を含んでいた。けれど、それは俺も同じだ。だからなるべくいつも通りの返しをしよう。

「行ってきます!!」

* * *

 俺とカナタは大通りにある武具店に来ていた。
 ユルナとリオンは、食糧と馬車を手配すると言って別行動をとっている。俺は魔術師としては先輩になるカナタに、色々と見繕ってもらう事にしたのだ。

「武具『フラワーケニーズ』? ここお花屋さんじゃないよな?」
「ええ……おそらく、たぶん」

 店先には綺麗な花壇が並んでいて、色とりどりの花が植えられている。看板にも木彫りの彫刻で花が描かれていて……とても武器や防具を扱っているようには見えない。どうみても花屋さんだ。

「冒険者ギルドの人に聞いたらここをオススメされたのですが……なんだか雰囲気が“っぽく”ないですね」
「ま、まあ。とりあえず入ってみよう」

 扉に手を掛けゆっくりと押し開ける。店内はいくつかのランプに火が灯されていた。
 若干薄暗い室内には鎧や剣、杖やローブといった、冒険者向けの物ばかりが陳列されている。
 ただ、店内に人影は無く静まりかえっていた。

「おお……中は意外とっぽいぞ」
「店員の姿が無いですね」
「呼んだらくるんじゃないか? すいませーん!」

 ギッギッギッ ドタン ガタガタ

 なにやら、二階から大きな物音が聞こえた。それに加えて何か言い争うような声も聞こえる。

 なんだ? まさか強盗でも入ってるのか?

「様子がおかしいですね。失礼かもしれませんが、そこの階段から上ってみましょう」

 カナタが指差す通路には、裏手口の扉と二階へと続く階段があった。
 もし、本当に強盗だったりしたら大事件だ。

 俺が階段に向かおうとした直後――突然、男の顔だけがにゅっと飛び出した。

「や、やぁ!! いらっしゃい!!」
「――うわぁっ!?」
「――きゃああっ!?」

 男は色黒で、スキンヘッドの頭にはタトゥーが彫られている。かなりイカつい感じだが目はクリっとしていて優しそうな印象だ。
 そんな男が、体を隠すように頭だけを通路に覗かせている。

「いやあすまんすまん! ちょっと立て込んでてね! すぐ行くから店内で待っててくれないか?」
「あの、大きな物音がしましたが大丈夫ですか?」
「大丈夫! ぜんぜん大丈夫だよ! 気にしないで!」

 それにしてはすごい動揺してるな。まあ本人がそう言うなら……。
 店内で待たせてもらおうと、振り返った俺の前でカナタが顔を真っ赤にして固まっていた。

「どうした?」
「あっ……は、はだ……」

 もしかして思考を読み取ったのか? ならば、この店員と思われる男性の言うことが本当かどうか、カナタは気付けたのだろう。

「はだ……くぁ……」
「えっ! おいカナタ?!」
「お嬢さん?!」

 白目を剥いて倒れ込むカナタを慌てて支える。口をぱくぱくさせて、耳まで真っ赤だ。
 コイツ、一体何を読み取ったんだ?

 突然倒れたカナタを心配して、男性も近くに出てきた。……が、その姿を見て俺も固まる。

 男性は衣類をまったく。それはもう筋骨隆々とした体。加えていうならば、少し汗ばんでいる。

 は? なんで裸? え?

「――ちょっと! ケニー!!」

 急に女性の声が聞こえて階段の方を見やると、先程の男性と同じように、頭だけを出してこちらを覗く女性がいた。
 綺麗な金色の髪をした女性はわずかに頬を赤らめて、ケニーと呼んだ男性を睨みつけている。

「――のわっ! いや、これはその……」

 自分の姿に気づいたケニーはそそくさと階段に引き返し、女性と同じく顔だけを覗かせた。二人の様子と仕草から思いついた事がある。

 もしかして女性もなのでは? 二人の男女が衣類を身に付けず、汗ばんで動揺……。

 気付いた時にはとても気まずかった。何か言おうにもこんな場面に出会すことなど無いもので、何も言えなくなってしまう。
 そんな俺の気持ちを察してか、ケニーは引きつった笑顔を見せて優しく言った。

「えっと……すまないがお嬢さんを連れて、外で少し待っていてもらえるかな? ほら、服……着てくるからさ……」
「――す、すいませぇぇえん!!」

 急ぎ気絶したカナタを引きずって店の外に出た。
 カナタが気絶したのはおそらく、男女の情事を読み取ってしまったからだろう。耳年増のカナタには大ダメージだったようだ。

 数分後、店の扉が開けられ申し訳なさそうなケニーが顔を出した。今度はちゃんと服を着ていた。

「いやぁ! すまんかった! もう平気だから入ってくれ!」

 気絶したカナタを背負い、気まずい空気が残る店内へと足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

処理中です...