19 / 44
一章 憎しみの魔女
19話 遺された者
しおりを挟む
ゴーレムの体に付いた土がバラバラと剥がれ落ちていく。
全身が白い岩で作られたゴーレムは、立ち上がった格好のまま動きを止めていた。
「なんでこんなものが埋まってるの……?」
「コイツ、生きてるのか?」
俺の言葉に反応するように、ゴーレムの目が怪しい光を放つ。
ゆっくりと首を動かし宙に浮かぶ俺たちを見ると、口の無い顔で言葉を発した。
『マジョサマ……オカエリ』
ただ一点、その瞳は俺を見つめているように感じた。
なんだ? 俺のことを言っているのか?
「魔女って言ったよね……もしかして、タクトの魔力に反応してる?」
リオンの言葉にハッとした。これほどまでに巨大なゴーレムを作れるとしたら、その人物はとてつもない魔力を持っているはずだ。
そして、巨大な魔力を持ち魔女と呼ばれる人は、一人しか思い浮かばない。
「……“憎しみの魔女”の事か」
ゴーレムはジッとただ俺を見つめる。まるで何かを見定めているかのように。
少しの間があいて、ゴーレムは再び声を発した。
『オマエ……マジョサマジャナイ……ダレダ』
その言葉には明らかな怒りの感情が込められていた。赤かった目の光がさらに赤く輝く。
「……なんか、怒ってないですか?」
「ああ……嫌な予感がするね」
カナタとユルナの予想は当たっていた。
ゴーレムが突然右腕を持ち上げると、握り拳を作り俺たちに殴りかかってきたのだ。
「きゃあぁっ?! ちょっとタクト! どういうことですかッ!!」
「知るか!! とにかくここから逃げるぞ!」
宙を飛び回る俺たちを、虫か何かのように掴み潰そうとしてくる。どう考えても俺たちを敵だと認識しているようだ。
「タクトの中にある『魔女の力』か何かに反応してるのでは? ゴーレムを操る魔法とかないのんですかッ?!」
「そんなこと言われても、敵視と反抗しか知らなッ――」
カナタの操る杖に振り回され舌を噛んだ。とても悠長に話している余裕が無い。
「――【水の精霊よ 荒れ狂う波の如く 彼の者を押し流せ】」
詠唱の声に横を見ると、同じく杖にぶら下がったままのリオンが唱えていた。
剣の切先をゴーレムに向けてリオンが叫ぶ。
「【濁流】!!」
俺たちが浮かぶ真下。地面から茶色の水が湧き出し、波となってゴーレムに押し寄せた……が波の高さはゴーレムの膝下にしか届かず、周囲の木々を押し流す程度だった。
苦虫を噛んだような顔でリオンが項垂れる。
「だめ……結構な魔力を使っても全然届かない……」
とてもじゃないが、俺たちだけでなんとかできるモンスターでは無い。ここは一旦アークフィランに戻って救援を――。
『アークフィラン……マジョサマ……メイレイ』
腕を振るうのを止めて俺たちから視線を外したゴーレムは、数キロ先にあるアークフィランを見つめる。
ぐるりと体の向きを変えると一歩、街に向けて踏み出した。
大きな地響きと共に一歩、また一歩と進み出す。
「嘘でしょ? まさかこのまま行くと……」
「コイツ、アークフィランに行くつもりだッ!」
この巨体が街に到達すればどうなるか……建物は破壊され街は瓦礫の山と化すだろう。想像するだけで悲惨な光景が目に浮かぶ。
「カナタ! 急いでアークフィランに戻るぞ! 冒険者ギルドに伝えないとッ!」
「わ、わかりました。しっかり掴まっていてください!!」
カナタが姿勢を低くすると、驚くような速度で空を飛んでいく。一刻も早く、この事をギルドに伝えなければ。
* * *
俺たちが冒険者ギルドに着くと、ロビーは既に多くの冒険者たちでひしめき、ざわついていた。
大きな地鳴りが頻発したことで、皆ただごとでは無いと察知しているようだ。
「皆様落ち着いて! 落ち着いてください!」
「今、ギルド側で揺れの原因を調べております! 続報が入るまで冷静に! 慌てないでください!」
受付カウンターのお姉さん達が声を張り上げているが、一向に静まる気配はない。
群衆に揉まれながらなんとか受付カウンターまで辿り着いた俺は、受付のお姉さんに声をかけた。
「あの!! すみません!!」
一瞬お姉さんはこちらを見たが、俺を冒険者だと認識していないのか「今立て込んでる」と言って離れようとする。
同じく人混みを掻き分けて来たリオンが、お姉さんを呼び止めた。
「ちょっと!! 誰か話を聞いてください!! この揺れの原因を私たちは知っています!!」
お姉さんは一瞬訝しんだ顔をしたが、「上の者を呼びます」と言って離れた。
俺が男で、しかも子供だから信用されないのか……と、この時は悔しく思った。
カウンターの奥に案内された俺たち四人は、応接室へと通された。ロビーだけではなく、ギルドで働く人たちも慌ただしく走り回っていた。
待っている間も定期的に地鳴りが響いている。
音と揺れが大きくなるにつれて、焦りも募っていった。
「タクト。ゴーレムが出現した時の事は、話さない方が良いと思います」
「そう、だな」
カナタの言う事はもっともだ。仮に俺の中にある魔女の力に反応して出現した、と話しても誰も信じてはくれないだろう。
それに信じられたらそれはそれで、面倒な事になる。
ほどなくして部屋に入ってきたのは、白髭を生やした恰幅のいい初老の男だった。
ひどく慌てた様子だったが、男は一度深呼吸をして息を整える。
「私はこの冒険者ギルドでギルド長をしている、ワインズだ。早速だが冒険者さん。本題をお話し願えますかな?」
「は、はい! 俺たちはアークフィランの南側に位置する森で任務を受けていました。そうしたら突然地面が割れて……地中から巨大なゴーレムが出現したんです」
「ゴーレム……ですと?」
「この地鳴りはゴーレムが歩いて起きているものです。しかも、向かっている先は……アークフィランです」
ワインズさんは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに怪訝な顔に変わった。
「……にわかには信じられないことだ」
「そうですよね……でも本当なんです!!」
このままゴーレムが進行を続ければ、この街に到達するのにあと一時間も掛からないだろう。そうなる前になんとしても食い止めなければならない。
だけど俺には、奴を倒せるイメージが湧かなかった。
先ほどリオンの放った濁流は、彼女の使える水属性魔法でかなり高威力のものだと本人が言っていた。
しかしそれですら、ゴーレムの水浴びにもならなかったのだ。
「生半可な魔法では傷一つ付けられないと思います。高威力の魔法をありったけで打ち込んでも
倒せるかどうか……」
目を閉じ、黙って聞いていたワインズさんは俺の話を吟味しているようだった。
少しの間があった後、ゆっくりと瞼を持ち上げた。
「……事態は一刻を争う。至急、冒険者たちを総動員し迎撃を行う」
「あ……ありがとうございます!!」
よかった。なんとか信じてくれたみたいだ。
これでゴーレムを倒せはしなくても、せめて街に住む人たちが避難する時間稼ぎはできる。
「すぐに動こう。ついてきたまえ」
ワインズさんは急ぎロビーに出ると、演説用のマイクを手に取った。
胸が膨らむほど大きく息を吸い込んで、騒めく冒険者たちへ一喝する。
『聞くのだ冒険者諸君ッ!!』
太く、よく通る声は一瞬にして場を静める。
『この地鳴りの原因は、ある巨大なモンスターによるものだと判明したッ モンスターの名は、ゴーレム! ここにいる四名の冒険者の話では、あと一時間もしない内に街へ到達するッ!!』
ゴーレムが? この地鳴りを?
この地震は足音だっていうの?
街に到達って……ヤバくない?
冒険者たちは皆、不安と焦りの感情を顔に出して騒めき出す。
『是非とも諸君らの力を借りたい!! 皆の力を合わせて、この街を守ってくれないかッ! ここは、冒険者の街であり君たちの……我々の街だッ!!』
ワインズさんの声がロビーに残響する。彼の鬼気迫る演説に、この場に居た全員が固唾を飲んで聞き入っていた。
遅れて方々から声が沸き上がった。それは悲壮による騒めきではなく、自身と仲間を鼓舞しワインズの願いに呼応する冒険者の叫びだった。
そうよ! ここは私たちの街よ!
ゴーレムなんかに壊されてたまるか!
やってやる……討伐クエスト、受けてたとうじゃないか
各々が剣と杖を手に取り、頭上へ高く掲げる。全員の心が一つになった瞬間だった。
「これだけの数で叩き込めば、いくらあの巨体でも平気ってことはないだろ」
「私の最大威力の風魔法を魅せる時が来たようですね」
「今度こそ止めてやるんだから!」
三人が意気込む中、俺だけが胸に引っかかるものを感じていた。
『マジョサマ』と言ったゴーレム。本当にあの憎しみの魔女が生み出したものだとしたら、一体何のために……。
この時の俺たちは、たった一人で世界を変えた魔女の力を甘く見ていた。
* * *
「魔法を止めるなァ!! 撃て撃て撃てェエ!!」
濁流、火柱、落雷、暴風。さまざまな魔法がゴーレムに対して撃ち込まれる。
それでもなお、ゴーレムの進行は止まらなかった。
空を舞う魔術師は大きな平手を受けて吹き飛び、地上から攻撃を仕掛ける剣士は、奴がたった一歩踏み出すだけで瓦礫の山へと埋もれていく。
「こんなのって……めちゃくちゃだよ……」
「クソッ! これだけやってもまだ止まらないのかッ!?」
地上にいるユルナとリオンが絶望の表情を浮かべている時、空を飛ぶ俺とカナタも同じ気持ちだった。
ゴーレムがあと五歩も進めば、アークフィランの外壁に到達する。時間にして十分と無かった。
「そんな……このままでは、街が……」
カナタが顔を青ざめて呟いた。彼女は今、この場にいる誰よりも絶望している。
読心魔法による冒険者たちの心の内、全員の絶望を感じ取ってしまっているのだから。
全身が白い岩で作られたゴーレムは、立ち上がった格好のまま動きを止めていた。
「なんでこんなものが埋まってるの……?」
「コイツ、生きてるのか?」
俺の言葉に反応するように、ゴーレムの目が怪しい光を放つ。
ゆっくりと首を動かし宙に浮かぶ俺たちを見ると、口の無い顔で言葉を発した。
『マジョサマ……オカエリ』
ただ一点、その瞳は俺を見つめているように感じた。
なんだ? 俺のことを言っているのか?
「魔女って言ったよね……もしかして、タクトの魔力に反応してる?」
リオンの言葉にハッとした。これほどまでに巨大なゴーレムを作れるとしたら、その人物はとてつもない魔力を持っているはずだ。
そして、巨大な魔力を持ち魔女と呼ばれる人は、一人しか思い浮かばない。
「……“憎しみの魔女”の事か」
ゴーレムはジッとただ俺を見つめる。まるで何かを見定めているかのように。
少しの間があいて、ゴーレムは再び声を発した。
『オマエ……マジョサマジャナイ……ダレダ』
その言葉には明らかな怒りの感情が込められていた。赤かった目の光がさらに赤く輝く。
「……なんか、怒ってないですか?」
「ああ……嫌な予感がするね」
カナタとユルナの予想は当たっていた。
ゴーレムが突然右腕を持ち上げると、握り拳を作り俺たちに殴りかかってきたのだ。
「きゃあぁっ?! ちょっとタクト! どういうことですかッ!!」
「知るか!! とにかくここから逃げるぞ!」
宙を飛び回る俺たちを、虫か何かのように掴み潰そうとしてくる。どう考えても俺たちを敵だと認識しているようだ。
「タクトの中にある『魔女の力』か何かに反応してるのでは? ゴーレムを操る魔法とかないのんですかッ?!」
「そんなこと言われても、敵視と反抗しか知らなッ――」
カナタの操る杖に振り回され舌を噛んだ。とても悠長に話している余裕が無い。
「――【水の精霊よ 荒れ狂う波の如く 彼の者を押し流せ】」
詠唱の声に横を見ると、同じく杖にぶら下がったままのリオンが唱えていた。
剣の切先をゴーレムに向けてリオンが叫ぶ。
「【濁流】!!」
俺たちが浮かぶ真下。地面から茶色の水が湧き出し、波となってゴーレムに押し寄せた……が波の高さはゴーレムの膝下にしか届かず、周囲の木々を押し流す程度だった。
苦虫を噛んだような顔でリオンが項垂れる。
「だめ……結構な魔力を使っても全然届かない……」
とてもじゃないが、俺たちだけでなんとかできるモンスターでは無い。ここは一旦アークフィランに戻って救援を――。
『アークフィラン……マジョサマ……メイレイ』
腕を振るうのを止めて俺たちから視線を外したゴーレムは、数キロ先にあるアークフィランを見つめる。
ぐるりと体の向きを変えると一歩、街に向けて踏み出した。
大きな地響きと共に一歩、また一歩と進み出す。
「嘘でしょ? まさかこのまま行くと……」
「コイツ、アークフィランに行くつもりだッ!」
この巨体が街に到達すればどうなるか……建物は破壊され街は瓦礫の山と化すだろう。想像するだけで悲惨な光景が目に浮かぶ。
「カナタ! 急いでアークフィランに戻るぞ! 冒険者ギルドに伝えないとッ!」
「わ、わかりました。しっかり掴まっていてください!!」
カナタが姿勢を低くすると、驚くような速度で空を飛んでいく。一刻も早く、この事をギルドに伝えなければ。
* * *
俺たちが冒険者ギルドに着くと、ロビーは既に多くの冒険者たちでひしめき、ざわついていた。
大きな地鳴りが頻発したことで、皆ただごとでは無いと察知しているようだ。
「皆様落ち着いて! 落ち着いてください!」
「今、ギルド側で揺れの原因を調べております! 続報が入るまで冷静に! 慌てないでください!」
受付カウンターのお姉さん達が声を張り上げているが、一向に静まる気配はない。
群衆に揉まれながらなんとか受付カウンターまで辿り着いた俺は、受付のお姉さんに声をかけた。
「あの!! すみません!!」
一瞬お姉さんはこちらを見たが、俺を冒険者だと認識していないのか「今立て込んでる」と言って離れようとする。
同じく人混みを掻き分けて来たリオンが、お姉さんを呼び止めた。
「ちょっと!! 誰か話を聞いてください!! この揺れの原因を私たちは知っています!!」
お姉さんは一瞬訝しんだ顔をしたが、「上の者を呼びます」と言って離れた。
俺が男で、しかも子供だから信用されないのか……と、この時は悔しく思った。
カウンターの奥に案内された俺たち四人は、応接室へと通された。ロビーだけではなく、ギルドで働く人たちも慌ただしく走り回っていた。
待っている間も定期的に地鳴りが響いている。
音と揺れが大きくなるにつれて、焦りも募っていった。
「タクト。ゴーレムが出現した時の事は、話さない方が良いと思います」
「そう、だな」
カナタの言う事はもっともだ。仮に俺の中にある魔女の力に反応して出現した、と話しても誰も信じてはくれないだろう。
それに信じられたらそれはそれで、面倒な事になる。
ほどなくして部屋に入ってきたのは、白髭を生やした恰幅のいい初老の男だった。
ひどく慌てた様子だったが、男は一度深呼吸をして息を整える。
「私はこの冒険者ギルドでギルド長をしている、ワインズだ。早速だが冒険者さん。本題をお話し願えますかな?」
「は、はい! 俺たちはアークフィランの南側に位置する森で任務を受けていました。そうしたら突然地面が割れて……地中から巨大なゴーレムが出現したんです」
「ゴーレム……ですと?」
「この地鳴りはゴーレムが歩いて起きているものです。しかも、向かっている先は……アークフィランです」
ワインズさんは一瞬驚いた表情をしたが、すぐに怪訝な顔に変わった。
「……にわかには信じられないことだ」
「そうですよね……でも本当なんです!!」
このままゴーレムが進行を続ければ、この街に到達するのにあと一時間も掛からないだろう。そうなる前になんとしても食い止めなければならない。
だけど俺には、奴を倒せるイメージが湧かなかった。
先ほどリオンの放った濁流は、彼女の使える水属性魔法でかなり高威力のものだと本人が言っていた。
しかしそれですら、ゴーレムの水浴びにもならなかったのだ。
「生半可な魔法では傷一つ付けられないと思います。高威力の魔法をありったけで打ち込んでも
倒せるかどうか……」
目を閉じ、黙って聞いていたワインズさんは俺の話を吟味しているようだった。
少しの間があった後、ゆっくりと瞼を持ち上げた。
「……事態は一刻を争う。至急、冒険者たちを総動員し迎撃を行う」
「あ……ありがとうございます!!」
よかった。なんとか信じてくれたみたいだ。
これでゴーレムを倒せはしなくても、せめて街に住む人たちが避難する時間稼ぎはできる。
「すぐに動こう。ついてきたまえ」
ワインズさんは急ぎロビーに出ると、演説用のマイクを手に取った。
胸が膨らむほど大きく息を吸い込んで、騒めく冒険者たちへ一喝する。
『聞くのだ冒険者諸君ッ!!』
太く、よく通る声は一瞬にして場を静める。
『この地鳴りの原因は、ある巨大なモンスターによるものだと判明したッ モンスターの名は、ゴーレム! ここにいる四名の冒険者の話では、あと一時間もしない内に街へ到達するッ!!』
ゴーレムが? この地鳴りを?
この地震は足音だっていうの?
街に到達って……ヤバくない?
冒険者たちは皆、不安と焦りの感情を顔に出して騒めき出す。
『是非とも諸君らの力を借りたい!! 皆の力を合わせて、この街を守ってくれないかッ! ここは、冒険者の街であり君たちの……我々の街だッ!!』
ワインズさんの声がロビーに残響する。彼の鬼気迫る演説に、この場に居た全員が固唾を飲んで聞き入っていた。
遅れて方々から声が沸き上がった。それは悲壮による騒めきではなく、自身と仲間を鼓舞しワインズの願いに呼応する冒険者の叫びだった。
そうよ! ここは私たちの街よ!
ゴーレムなんかに壊されてたまるか!
やってやる……討伐クエスト、受けてたとうじゃないか
各々が剣と杖を手に取り、頭上へ高く掲げる。全員の心が一つになった瞬間だった。
「これだけの数で叩き込めば、いくらあの巨体でも平気ってことはないだろ」
「私の最大威力の風魔法を魅せる時が来たようですね」
「今度こそ止めてやるんだから!」
三人が意気込む中、俺だけが胸に引っかかるものを感じていた。
『マジョサマ』と言ったゴーレム。本当にあの憎しみの魔女が生み出したものだとしたら、一体何のために……。
この時の俺たちは、たった一人で世界を変えた魔女の力を甘く見ていた。
* * *
「魔法を止めるなァ!! 撃て撃て撃てェエ!!」
濁流、火柱、落雷、暴風。さまざまな魔法がゴーレムに対して撃ち込まれる。
それでもなお、ゴーレムの進行は止まらなかった。
空を舞う魔術師は大きな平手を受けて吹き飛び、地上から攻撃を仕掛ける剣士は、奴がたった一歩踏み出すだけで瓦礫の山へと埋もれていく。
「こんなのって……めちゃくちゃだよ……」
「クソッ! これだけやってもまだ止まらないのかッ!?」
地上にいるユルナとリオンが絶望の表情を浮かべている時、空を飛ぶ俺とカナタも同じ気持ちだった。
ゴーレムがあと五歩も進めば、アークフィランの外壁に到達する。時間にして十分と無かった。
「そんな……このままでは、街が……」
カナタが顔を青ざめて呟いた。彼女は今、この場にいる誰よりも絶望している。
読心魔法による冒険者たちの心の内、全員の絶望を感じ取ってしまっているのだから。
0
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。
絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。
辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。
一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」
これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる